Aさん(75歳、男性)は妻(70歳)と2人で暮らしている。日中は本を読んで過ごすことが多い。2か月前からAさんは、椅子から立ち上がる時にバランスを崩すことや「寝室に女の子がいる」と言うことがあった。また、就寝後、夜間に大きな声で「おーい」と叫んで手を振る行動が継続してみられるようになった。心配になった妻がAさんと病院を受診し、初期のLewy〈レビー〉小体型認知症と診断された。Aさんは要介護認定の申請をし、要支援1と認定された。 診断から4か月後、病院受診時にAさんは、外来看護師に「最近、歩こうとすると足が前に出ないことがありますが、地域の行事に参加して、いろいろな人と交流しながら、妻との生活を続けたいです。今できていることを維持するために、運動が効果的と聞きました。何か方法はありますか」と話した。外来看護師の助言として最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
AさんはLewy〈レビー〉小体型認知症と診断されており、椅子から立ち上がる時にバランスを崩す、歩こうとすると足が前に出ない(すくみ足)といったパーキンソニズムがみられます。Aさんは要支援1と認定されているため、介護保険の介護予防サービスを利用できます。介護予防通所リハビリテーションでは、理学療法士などによる機能訓練を安全な環境で受けることができ、通所先で他の利用者と交流する機会も得られます。「地域の行事に参加して、いろいろな人と交流しながら、妻との生活を続けたい」「今できていることを維持したい」というAさんの希望に最も合う助言です(公式正答4)。
選択肢ごとの解説
- 1. Aさんには「足が前に出ない(すくみ足)」やバランスを崩すといった、Lewy〈レビー〉小体型認知症にみられるパーキンソニズムがあり、1人で毎日散歩をすることは転倒の危険があります。また、散歩だけでは「いろいろな人と交流したい」という希望も満たしにくく、最も適切な助言とはいえません。正しくは:専門的なリハビリテーション指導のもと、安全に配慮しながら運動を行うことが大切です。選びやすい理由:運動の重要性を理解している患者に対して、手軽に始められる運動として魅力的に聞こえるため。一般的な健康維持には散歩が推奨されることが多いです。混同注意:健康な人への一般的な運動の勧めと、パーキンソニズムのある人に対する安全に配慮した専門的な機能訓練を混同しやすいです。
- 2. 具体的なサービス名や内容が不明確であり、Aさんの「地域の行事に参加して、いろいろな人と交流しながら」という社会参加への強い希望を満たすものではありません。自宅での運動に限定することは、Aさんの希望と合致しない可能性があります。正しくは:Aさんの具体的な症状や希望に合わせて、訪問リハビリテーションやオンラインでの運動プログラムなど、自宅で取り組める運動サービスも選択肢の一つとして検討できます。ただし、地域の交流を重視される場合は、通所型のリハビリテーションもおすすめです、と具体的に情報を提示すべきです。選びやすい理由:自宅でできる運動も選択肢の一つであるため、一見すると適切な情報提供に見えます。高齢者向けの運動サービスも多岐にわたるため、漠然とした表現が「間違いではない」と感じるかもしれません。混同注意:患者の個別の希望(社会交流)と症状(すくみ足)に合わせた最適な選択肢を提示することと、一般的なサービスがあることを伝えるだけの対応を混同しやすいです。
- 3. 看護師も運動に関する助言や社会資源の紹介を行う専門職であり、患者からの具体的な相談に対し、すぐに提供できる情報やサポートがあります。医師への相談も重要ですが、看護師が一切の助言をせず、全てを医師任せにするのは不適切です。患者の訴えに寄り添い、看護の視点からできる支援を提示することが求められます。正しくは:担当医にも相談し、運動療法の指示を確認することは大切です。一方で、私たち看護師もAさんの希望に沿った運動方法や利用できるサービスについて、具体的な情報を提供できますので、いくつかご紹介しましょう、と看護師としての役割を果たす姿勢を示すべきです。選びやすい理由:医療行為や治療方針に関わることは医師の専門領域であると考えるため、無難で適切な選択肢に見えるかもしれません。医師との連携の重要性を認識しているため、選びやすい傾向があります。混同注意:医師の専門性と看護師の専門性の範囲を混同しやすいです。看護師は医師の指示のもとで運動指導を行いますが、その選択肢を患者に提示し、利用へとつなぐ役割も担います。
- 4. 正解。Aさんは要支援1と認定されているため、介護予防通所リハビリテーションを利用できます。すくみ足やバランスの低下(Lewy〈レビー〉小体型認知症のパーキンソニズム)に対して専門職による機能訓練を受けられ、転倒予防や機能の維持につながります。通所先で他の利用者と交流する機会もあり、「運動が効果的と聞いた」「いろいろな人と交流しながら生活を続けたい」というAさんの希望の両方に応える最も適切な助言です。
国試ポイント
Lewy〈レビー〉小体型認知症のパーキンソニズム(すくみ足・転倒リスク)を理解し、要支援1の認定を踏まえて、本人の希望(運動・交流・生活の維持)に合う介護予防サービスを提案できるかが問われています。
混同注意
介護予防通所リハビリテーションと混同しやすいものに通所介護(デイサービス)がありますが、通所介護は日常生活上の支援や機能訓練、レクリエーションなどが中心です。すくみ足のある本人が「運動で今できていることを維持したい」と希望しているため、リハビリテーション専門職による機能訓練を受けられる通所リハビリテーションがより適切です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、まず患者の「具体的な症状」と「社会参加やQOL維持に対する意欲(希望)」を把握します。次に、それらのニーズに最も適切に応えられる「社会資源(制度・サービス)」が何かを特定し、その上で「看護師として提供できる具体的な情報や支援」を判断します。
関連知識
パーキンソン病の主な運動症状には、振戦、固縮、無動(寡動)、姿勢反射障害があり、すくみ足(Freezing of Gait)も特徴的です。リハビリテーションでは、視覚・聴覚キュー(メトロノーム、床の線)、大股歩行練習、バランス訓練などが有効です。また、介護保険制度における介護予防サービスは、要支援の認定を受けた方が利用でき、地域包括支援センターが窓口となります。通所リハビリテーションは介護医療院や診療所、病院が提供するサービスです。