Aさん(89歳、女性)は災害によって自宅が損壊し、避難所で生活を始めた。看護師が面談を行うと「食欲がない。横になっても眠れず、すぐに目が覚めてしまう」と話し、元気がない様子である。避難所ではトイレと食事以外はほとんど動かずに過ごしている。Aさんには被災前の通院歴はなく、日常生活動作〈ADL〉は自立している。看護師の対応で優先度が高いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
AさんはADLが自立しており、被災前は通院歴もない健康な状態でした。避難所生活という環境の変化とストレスにより、活動量が著しく低下しています。このような状況下での食欲不振や不眠、活気のなさは、身体活動量の減少による生活リズムの乱れや、廃用症候群の初期症状である可能性があります。看護師は、薬物療法や入院などの医療介入をすぐに考えるのではなく、まずAさんの残存機能(ADL自立)を活かし、安全な範囲で軽い運動を促す環境を整えることで、生活リズムの回復、心身の活性化、食欲や睡眠の改善を図ることが最も優先度の高い、自律的な看護介入となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者の気持ちに寄り添わない精神論は、精神的負担をさらに増大させる可能性があり、適切な対応とは言えません。特に災害時は、精神的な支えが重要ですが、無責任な励まし方は逆効果になりかねません。正しくは:まずはAさんの訴えを傾聴し、共感を示すことで安心感を提供します。その上で、具体的な支援策を一緒に検討する姿勢が重要です。選びやすい理由:患者を励ますことは良いことだと短絡的に考えてしまうため。混同注意:精神的なサポートや傾聴と混同しやすいが、具体性のない精神論は患者に負担をかける。
- 2. Aさんの症状は食欲不振、不眠、活動量の低下であり、現時点では直ちに入院が必要な重篤な身体的症状や精神疾患の兆候は見られません。まずは避難所内でできる介入を優先すべきです。正しくは:入院は最後の手段であり、まずは避難所内で看護師ができる介入(生活環境の調整、活動促進、傾聴など)を行います。症状が悪化したり、身体的・精神的な緊急性が高まった場合に検討します。選びやすい理由:高齢者の不調は重篤化しやすいという懸念から、大事を取って医療介入を急ぎたいと考えるため。混同注意:精神科的な緊急入院が必要な場合や、重度の身体疾患による緊急入院と混同しやすいが、現時点ではそのレベルではない。
- 3. 正解。避難所生活における食欲不振や不眠、活気のなさ、活動量の低下は、環境の変化によるストレス、活動不足による生活リズムの乱れ、廃用症候群のリスク上昇などが考えられます。ADLが自立している高齢者にとって、軽度な運動は身体機能の維持だけでなく、気分転換、睡眠の質の改善、食欲増進にも繋がり、生活リズムを整える上で非常に有効な介入であり、QOL向上に寄与します。これは看護師が自律的に提供できる、非侵襲的で優先度の高い支援です。
- 4. 睡眠薬の処方は対症療法であり、高齢者の場合、副作用(ふらつき、転倒、せん妄など)のリスクが高いです。まずは非薬物療法(運動、生活リズムの調整、環境調整など)を優先し、原因へのアプローチを行うべきです。正しくは:まずは非薬物療法である生活リズムの調整、適度な運動、安眠できる環境づくりなどを試み、それでも改善が見られない場合に薬物療法を検討します。選びやすい理由:「眠れない」という訴えに対して、直接的な解決策だと考えてしまうため。混同注意:不眠症の治療法の一つであることは事実だが、高齢者や災害時の状況を考慮すると、第一選択ではない。
国試ポイント
災害時の高齢者の健康問題と、看護師が優先すべき自律的介入について問う問題です。高齢者は環境変化によるストレスや活動量低下から、心身の機能が低下しやすいため、ADL維持・向上に向けた早期介入の重要性がポイントとなります。安易な薬物療法や過剰な医療介入ではなく、患者の残存能力を活かし、生活の質を維持・向上させるための非薬物療法や環境調整が優先されることを理解しているかが問われています。
混同注意
「不眠」の訴えに対して安易に薬物療法を検討したり、「元気がない」状況に対して精神論的な励ましを行うことと、適切な身体的・精神的サポートを混同しやすい。また、高齢者の不調に対してすぐに高度な医療介入が必要だと誤解し、入院を優先してしまう可能性もあります。
次に同じ論点が出たら
今回の介入で改善が見られない場合、精神的な側面(うつ状態、適応障害など)や身体的な側面(脱水、栄養失調、隠れた疾患など)についてさらに詳しくアセスメントし、必要に応じて医師への相談や専門機関への紹介を検討します。また、避難所の環境そのものが活動を阻害していないか、集団生活によるストレスはないかなども再評価します。
関連知識
災害看護の原則、高齢者の心身機能の変化(フレイル、廃用症候群、せん妄など)、非薬物療法による症状緩和、健康的な生活習慣の維持の重要性、ADL維持・向上のための看護介入、避難所での生活支援。