Aさん(91歳、男性)は市営団地の2階に1人で暮らしている。高血圧症で内服治療しているが、他に既往歴はない。日常生活動作〈ADL〉は自立している。トイレや浴室の段差でつまずくことがあり、手すりを設置した。最近は家でテレビを観て過ごすことが多くなった。Aさんの生活状況で、国際生活機能分類〈ICF〉の「活動」に該当するのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4・5番(いずれも正解)
解説
【公式の取扱い】この問題は1つを選ぶ形式ですが、公式の正答表では4・5のいずれも正解とされています。 国際生活機能分類(ICF)における「活動」とは、個人が生活の中で行う具体的な行為や課題の遂行を指します。選択肢4の「テレビ視聴に費やす時間が多い」は、余暇活動・娯楽活動として個人が行う行為そのものです。選択肢5の「日常生活動作(ADL)が自立している」は、食事、入浴、更衣などの基本的な生活行為が問題なく行える状態を示しており、これらの個々のADLは「活動」に分類されます。その他の選択肢は、環境因子(1、2)や心身機能・構造の障害・活動制限(3)に該当します。
選択肢ごとの解説
- 1. 「単身での居住」は、Aさんの生活環境や個人因子の側面を示すものです。ICFにおいては、環境因子(住居の状況、社会的サポートの有無など)や個人因子(ライフスタイル)として捉えられ、「活動」そのもの(個人が何かを行う行為)ではありません。正しくは:「単身での居住」は環境因子または個人因子に分類されます。活動とは、個人が生活の中で遂行する具体的な行為や課題のことです。選びやすい理由:Aさんの生活状況の一部であり、具体的な状況を表すため、活動に感じるかもしれません。しかし、これは「誰かと一緒に暮らす」「一人で暮らす」という状況であり、具体的な行為そのものではありません。混同注意:「参加」(社会的な関わり)や「個人因子」(ライフスタイル)と混同しやすいです。また、ADLが自立していることと結びつけて「自立した生活」=「活動」と誤解する可能性があります。
- 2. 「手すりの設置」は、Aさんの生活環境を構成する物理的な要素であり、ICFでは「環境因子」に分類されます。これは、Aさんの活動を支援するための物理的な設備ですが、Aさん自身が行う「活動」ではありません。正しくは:「手すりの設置」は環境因子に分類されます。活動とは、個人が生活の中で遂行する具体的な行為や課題のことです。選びやすい理由:手すりが活動(例: 浴室での移動)を助けるためのものであるため、活動と関連していると感じやすいです。しかし、手すり自体は「物」であり、それを使う行為が活動です。混同注意:「活動への参加を促すもの」という視点から、間接的に活動と結びつけてしまう可能性があります。これは「環境因子」であり、直接的な「活動」ではありません。
- 3. 「段差でのつまずき」は、Aさんの身体機能(平衡機能や運動機能)に何らかの問題がある可能性を示すものであり、ICFでは主に「心身機能・構造」の障害、あるいはそれによって生じる「活動制限」として捉えられます。これは特定の「活動」そのものではなく、活動遂行上の困難な状態を指します。正しくは:「段差でのつまずき」は、心身機能の障害、または活動制限の一部として分類されます。活動とは、個人が生活の中で遂行する具体的な行為や課題のことです。選びやすい理由:ADLに直結するような身体の動きに関する事象のため、活動の一種だと誤解しやすいです。しかし、これは「活動そのもの」ではなく、「活動を遂行する上で生じる問題」です。混同注意:「活動」と「活動制限」を混同しやすいです。また、心身機能の低下が原因であることを忘れ、具体的な動作と結びつけて活動と考えてしまうことがあります。
- 4. 正解。「テレビ視聴に費やす時間が多い」は、Aさんが日常的に行っている娯楽的な行為であり、ICFの「活動」に明確に該当します。「活動」とは、個人が行う具体的な行為や課題の遂行を指し、趣味や娯楽も含まれます。
- 5. 正解。「日常生活動作(ADL)が自立している」は、Aさんが食事、排泄、入浴、着替えといった基本的な生活上の行為を自分自身で問題なく行えている状態を指します。これらのADLは、ICFの「活動」の重要な要素であり、具体的な行為の遂行能力を示します。
国試ポイント
この問題は、国際生活機能分類(ICF)の基本的な概念、特に「活動」「心身機能・構造」「環境因子」「個人因子」「参加」の区別を正確に理解しているかを問うものです。事例を通して、具体的な状況がICFのどの要素に分類されるかを判断する能力が求められます。特に、ADLや趣味・娯楽が「活動」に含まれることを理解しておくことが重要です。
混同注意
ICFの各構成要素、特に「活動」と「参加」、「心身機能・構造」と「活動制限」、「環境因子」と「活動を促す・阻害するもの」を混同しやすいです。例えば、「家でテレビを観る」は活動ですが、「テレビを観ることで社会との繋がりが薄れる」といった文脈であれば「参加の制限」という見方もできます。しかし、本問では単に「テレビを観て過ごす」という行為そのものが問われているため「活動」です。また、「段差でのつまずき」は心身機能の問題によって生じる活動制限ですが、活動そのものではありません。
次に同じ論点が出たら
今後ICFに関する問題が出題された際は、提示された事例の各要素が『健康状態』『心身機能・構造』『活動』『参加』『環境因子』『個人因子』のどれに該当するかを正確に分類できるかに注目しましょう。特に、具体的な行動や生活習慣が「活動」に含まれることを理解し、単なる状況説明や環境整備、身体的な機能障害と混同しないよう注意が必要です。また、『参加』との違い(活動は個人レベルの行為、参加は社会レベルでの関与)もポイントになります。
関連知識
ICFはWHO(世界保健機関)によって提唱された、健康のあらゆる側面を包括的に捉えるための分類法です。健康状態を『心身機能・構造』『活動』『参加』の3つのレベルで記述し、さらに『環境因子』と『個人因子』がこれらに相互に影響を与えるというモデルを示しています。看護師は患者さんの生活状況をアセスメントする上で、ICFの視点を用いて多角的に捉えることが求められます。特にADLは活動の中核をなす概念であり、ADL自立は重要な活動能力の指標となります。