Aさん(33歳、初妊婦、会社員)は夫と2人で暮らしている。身長160 cm、非妊時体重60 kg。妊娠17週1日の妊婦健康診査にて、児の発育に異常はなかった。体重は66 kgで4週前から4 kg増加している。血圧120/78 mmHg。尿蛋白(-)、浮腫(-)。排便は妊娠前と変わらず2日に1回出ている。Aさんは「同じ週数の友達は胎動を感じると言っていたのに、自分は感じられず心配です」と話す。 Aさんは妊娠39週5日、男児を経腟分娩で出産した。産褥1日、体温37.1°C、脈拍85/分、血圧110/75 mmHgである。子宮底の位置は臍下1横指、中等量の血性悪露を認めるが、量は減少してきている。乳頭は乳管が左右共に2本開口しており、にじむ程度の乳汁分泌を認める。Aさんは「生理痛のような下腹部の痛みがありましたが、徐々に改善しています。お産のあとは尿意がなくて尿も出ている実感がなかったのですが、今は尿意があり排尿もしっかりあります」と話す。Aさんに対するアセスメントで正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
産褥早期には、分娩時の外陰部や会陰部の損傷、浮腫、膀胱の弛緩、子宮の圧迫解除による膀胱位置の変化などにより、一時的に尿意を感じにくくなったり、排尿困難になったりすることがよくあります。Aさんの「お産のあとは尿意がなくて尿も出ている実感がなかった」という訴えは、この一過性の排尿障害の典型的な症状です。しかし、その後「今は尿意があり排尿もしっかりあります」と回復していることから、これは一過性の生理的変化と捉えることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 産褥1日目の「生理痛のような下腹部痛」は、子宮が収縮する際に生じる後陣痛であり、特に初産婦では比較的強く感じることもありますが、Aさんが「徐々に改善しています」と述べていることから、正常な生理的変化と判断されます。正しくは:後陣痛であり、正常な生理的変化です。選びやすい理由:「痛み」という言葉から異常を連想しやすく、後陣痛を知らない場合やその痛みの程度が判断できない場合に選びやすいです。混同注意:子宮内膜炎や子宮復古不全による持続的な痛みなど、病的な腹痛と混同しやすいですが、後陣痛は時間とともに軽減していくのが特徴です。
- 2. 産褥1日目の子宮底が臍下1横指という位置は、子宮が正常に復古している過程の範囲内です。分娩直後は臍部、産褥1日には臍下1横指程度に下降するのが一般的です。悪露も中等量で減少傾向であり、復古遅延を示唆する所見はありません。正しくは:子宮復古は正常範囲内です。選びやすい理由:産後の子宮の状態に不安を感じやすい学生は、安易に異常と判断しがちです。悪露がまだ出ていることや、子宮底の下降を異常と捉えてしまう可能性があります。混同注意:子宮底が臍上にある場合や、悪露の量が異常に多い・鮮血が続く場合、大きな血塊を排出する場合など、明らかな異常所見と混同しやすいです。
- 3. 産褥1日目では、乳汁がにじむ程度に分泌されるのは正常な開始時期の所見です。本格的な乳汁分泌(乳房の張りや多量の分泌)は産褥2~3日目以降に起こることが多いため、この時点での「にじむ程度」は分泌不良とは判断されません。正しくは:乳汁分泌は正常な開始時期の所見です。選びやすい理由:「にじむ程度」という表現から、分泌量が少ないと感じてしまい、不良と判断しがちです。乳汁分泌はすぐに多量に出るものだと思い込んでいる学生は選びやすいでしょう。混同注意:乳腺炎などで分泌が阻害されている場合や、そもそも乳管開口がない場合など、明らかな異常と混同しやすいです。
- 4. 正解。産後の排尿機能は、分娩時の会陰部損傷や浮腫、膀胱の弛緩などにより一時的に低下することがよくあります。Aさんが「お産のあとは尿意がなくて尿も出ている実感がなかった」と訴えているのは、典型的な一過性の排尿障害(膀胱麻痺や尿意低下)の症状です。しかし、「今は尿意があり排尿もしっかりあります」と改善しているため、「一過性」という表現が適切であり、回復に向かっている正常な生理的変化と捉えられます。選びやすい理由:「尿意がなくて尿も出ている実感がなかった」という過去の訴えに注目し、「障害」という言葉から、これが正しいアセスメントだと判断しやすいです。その後回復していることに気づくかがポイントです。混同注意:カテーテル挿入が必要なほどの持続的な尿閉や、尿路感染症による排尿困難など、より重篤な排尿障害と混同しやすいですが、本ケースでは自力排尿が回復しており、あくまで「一過性」であることが特徴です。
国試ポイント
この問題は、産褥早期(特に産褥1日目)の母体の生理的変化と、その正常範囲を理解しているかを問うものです。子宮復古、悪露、後陣痛、乳汁分泌、排尿機能といった主要な項目について、正常な経過と異常な経過を区別できる知識が求められます。特に、産後に一時的に見られるマイナートラブルが、回復に向かっている場合は正常な範囲内の生理的変化として捉えられるかどうかが重要です。
混同注意
産褥早期の生理的な変化を、病的な異常と混同しやすい点に注意が必要です。例えば、後陣痛を異常な腹痛と捉えたり、産褥1日目の乳汁分泌の少なさを分泌不良と判断したり、一過性の排尿機能低下を重篤な排尿障害と混同したりすることが挙げられます。正常な生理的変化の範囲と、医療介入が必要な異常との境界線を理解することが重要です。
次に同じ論点が出たら
もし次に同様の問題が出題された場合、産褥早期の各身体所見や主訴が、正常な生理的変化の範囲内であるか、それとも医療的な介入が必要な異常であるかを判断する視点が重要になります。特に、「徐々に改善している」「今は~している」といった変化の方向性を示す記述があれば、それが一過性の正常な変化であることを示唆している可能性が高いです。具体的な数値(子宮底の位置、悪露の量など)が正常範囲内であることも確認します。
関連知識
産褥期の全身変化:バイタルサイン(体温、脈拍、血圧)の正常範囲。子宮復古:子宮底の位置、硬度。悪露:量、性状、色。後陣痛:時期、性状、対処。乳房・乳汁分泌:分泌開始時期、正常な発達。排泄:排尿機能(膀胱充満、尿意)、排便。精神状態:マタニティブルーズ、産褥うつ。これらの正常な変化を把握し、逸脱した場合に異常と判断できることが看護師として求められます。