禁酒を指導されている患者が「禁酒できたらもっと健康的な生活になるね。自分は我慢強いところがあるからやれると思う」と話し、3週間禁酒を続けている。患者の行動変容を促したのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
患者の「自分は我慢強いところがあるからやれると思う」という発言は、禁酒という特定の行動を成功させるための自分の能力に対する強い信念を示しており、これはアルバート・バンデューラが提唱した自己効力感の概念に合致します。自己効力感が高いと、困難な課題に対しても積極的に取り組み、成功体験を通じてさらに高まる傾向があります。実際に3週間禁酒を継続できたのは、この自己効力感が行動変容を促進した結果と考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 自己洞察は、自分の内面や行動の動機を深く理解することですが、患者の発言は「できると思う」という自信に焦点があり、行動変容を直接促すという点では自己効力感の方がより適切です。自己洞察は行動変容のきっかけや前提となり得ますが、直接的な「行動を促した」要因とは少し異なります。正しくは:患者が自身の性格(我慢強い)を理解している点から連想しやすいですが、直接的な行動を後押しする力としては自己効力感がより適しています。選びやすい理由:患者が「自分は我慢強い」と自身の性格を認識している点が、自己洞察と結びつけられやすいです。混同注意:自己認識、自己理解。
- 2. 正解。自己効力感とは、特定の行動を成功させるために必要な能力を自分自身が持っているという確信や信念のことです。患者さんの「自分は我慢強いところがあるからやれると思う」という発言は、禁酒という目標達成に向けて、自分にはそれが可能であるという強い自信を示しており、これが実際に3週間の禁酒継続という行動変容に繋がったと考えるのが適切です。
- 3. 自己中心性とは、他者の視点や感情を考慮せず、自分自身の視点だけで物事を捉える傾向を指します。患者さんの発言内容は、自身の健康への関心や目標達成への意欲を示すものであり、他者の視点を無視しているわけではないため、自己中心性とは関連がありません。正しくは:この概念は、禁酒を続ける患者さんの行動変容とは全く関係がありません。選びやすい理由:「自己」という言葉が含まれるため、なんとなく関連があるように感じてしまうかもしれませんが、心理学的な意味合いが異なります。混同注意:自己肯定感、利己主義。
- 4. 自己同一性(アイデンティティ)とは、「自分は何者であるか」という、連続的で統合された自己の感覚や認識のことです。主に青年期の発達課題として知られています。患者さんの発言は、禁酒という特定の行動目標に対する自信であり、自己同一性の確立という広範なテーマとは直接的な関連がありません。正しくは:患者さんの発言は、特定の行動に対する自身の能力への信念であり、自己の存在意義や連続性に関するものではありません。選びやすい理由:「自己」という言葉があり、患者が自己について語っているように見えるため、選択肢として魅力的かもしれませんが、概念の内容は大きく異なります。混同注意:自己概念、自己像。
国試ポイント
この問題は、行動変容ステージモデルや健康行動に関する心理学的な概念の理解を問うものです。看護師は患者の行動変容を支援する際に、患者がどの行動変容ステージにいるかを見極め、それぞれのステージに応じた支援を行う必要があります。特に「できる」という自信(自己効力感)を高める関わりは、行動変容を促す上で非常に重要です。自己効力感は、健康行動の維持や再発防止にも影響を与えるため、その概念と支援方法を理解しておくことが求められます。
混同注意
自己効力感と混同しやすい概念として、自己肯定感(ありのままの自分を受け入れる感情)、自尊感情(自分を価値ある存在だと感じる感情)、楽観主義(未来に対して肯定的である傾向)などがあります。自己効力感は『特定の課題に対する「できる」という自信』に特化している点が異なります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、患者が「自分ならできる」という確信や自信を示しているか、または「努力すれば報われる」といった肯定的な期待を抱いているかどうかに着目してください。具体的な行動への移行や維持に直接的に繋がる『やれると思う』という内的な信念が自己効力感と関連します。
関連知識
行動変容ステージモデル(ProchaskaとDiClemente)では、「準備期」から「実行期」へ移行する際、自己効力感の向上が重要な要素となります。また、自己効力感は、バンデューラの社会的認知理論の中心概念であり、観察学習や代理的経験、言語的説得、生理的情緒的状態が自己効力感に影響を与えると考えられています。看護師はこれらの理論を用いて、患者の自己効力感を高めるための具体的な支援方法(例:成功体験の積み重ね、ロールモデルの提示、共感的な励まし)を実践することが求められます。