Aさん(70歳、男性)。妻(74歳)と2人で暮らしている。Aさんがトイレに入ったまま戻ってこないので妻が見に行くと、トイレで倒れていた。妻が発見直後に救急車を要請した。救急隊からの情報ではジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉II- 20で右片麻痺があり、バイタルサインは、体温36.5°C、呼吸数16/分、脈拍108/分、血圧200/120 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96 %であった。 入院から4週が経過し、病状が安定して意識が回復した。Aさんは後遺症として運動性失語が残り、言葉がうまく発せられないため涙ぐむことがあった。妻は面会後「夫が話す言葉が分からず、どう接すればよいか分からない」と言って戸惑っていた。妻に対する対応で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
運動性失語症患者とのコミュニケーションでは、患者の言葉を理解することが困難な場合が多く、家族も対応に苦慮することが少なくありません。看護師が同席し、専門的な視点から患者の発する言葉や非言語的サインを読み取り、解釈を補助することで、家族は患者の意図を理解しやすくなります。これにより、家族はコミュニケーション方法を学び、患者との関係性を再構築する手助けとなります。また、患者も家族に理解されることで、精神的な安定と自己肯定感の向上に繋がり、今後のリハビリテーションへのモチベーション維持にも貢献します。
選択肢ごとの解説
- 1. 「これまでと同じように、普段どおりに話しかけてあげてください」という助言は、運動性失語症患者とその家族にとっては適切ではありません。患者は発語が困難であり、家族も理解に苦しんでいる状況で、今まで通りのコミュニケーションでは問題解決に繋がらず、家族の負担や混乱を増大させる可能性があります。正しくは:患者の理解度に合わせて、短く、簡単な言葉を選んで話しかけること、ジェスチャーや筆談などを併用することの重要性を伝えるべきです。選びやすい理由:家族に負担をかけたくないという配慮から、日常生活の継続を促す意味で選びやすいかもしれませんが、現状の困難を解決する具体的な助言にはなりません。混同注意:患者の生活リズムを維持する一般的なアドバイスと、具体的な病状に合わせたコミュニケーション支援の必要性。
- 2. 正解。看護師が同席して患者と家族の会話を支援することは、運動性失語症の患者の意図を家族が理解する上で非常に有効です。看護師は患者の非言語的な表現や残存する言葉から意図を推測し、家族に伝えることで、コミュニケーションの橋渡し役となります。これにより、家族は患者への接し方を学び、患者も理解される喜びを感じることができます。選びやすい理由:直接的な支援策であり、専門職の介入の重要性を示しているため。混同注意:単に話を聞くことと、具体的なコミュニケーション支援としての同席支援。
- 3. 「リハビリテーションを続ければ、また以前のように話せるようになりますよ」という説明は、患者や家族にとって希望を与えるかもしれませんが、回復の程度には個人差があり、以前の状態に完全に戻ると断言することはできません。不確実な希望を与えることで、かえって予期せぬ結果に直面した際に失望を深める可能性があります。現時点での家族の具体的な困りごと(コミュニケーションの取り方)への直接的な対応ではありません。正しくは:リハビリテーションは症状の改善に繋がりますが、その経過には個人差があることを伝え、今できるコミュニケーション方法を一緒に探す姿勢を示すべきです。選びやすい理由:家族の不安を和らげたい、希望を与えたいという看護師の気持ちから選択しやすいかもしれませんが、現実的な解決策にはなりません。混同注意:病状説明と、具体的なコミュニケーション支援の区別。過度な励ましと現実的な説明のバランス。
- 4. 「短い言葉や簡単な言葉で、分かりやすく話しかけてあげてください」という助言は、運動性失語症患者への基本的なコミュニケーション方法の一つとして正しいですが、この問題文の状況では、家族が「夫が何を言っているのか理解できず、どう接したら良いのか途方に暮れている」と具体的に困っているため、この一般的な助言だけでは不十分です。家族が患者の言葉を理解するための具体的な支援がより求められています。正しくは:この助言自体は適切ですが、それに加えて、看護師が同席して具体的なコミュニケーションのモデルを示すことや、家族が患者の意図を理解するためのヒントを伝えることが必要です。選びやすい理由:失語症患者への基本的なコミュニケーション方法として正しい知識であるため、最も適切な選択肢と判断されやすいです。しかし、家族の困り事の深さに対しては間接的な助言に留まります。混同注意:失語症患者への一般的なコミュニケーション指導と、家族が患者の言葉を理解できないという具体的な困り事へのより直接的な介入の区別。
国試ポイント
失語症患者とその家族への看護師の介入方法に関する理解。特に、家族の心理的支援とコミュニケーション支援が重要であることを覚える。
混同注意
単なる励ましや一般的な対応と、専門職による具体的な介入方法の区別。失語症の種類(運動性・感覚性)によって対応の重点が異なる場合がある。
次に同じ論点が出たら
失語症患者と家族のコミュニケーション問題に対する看護師の最も効果的な介入は、具体的な支援行動を伴うものであるか否かで判断する。
関連知識
失語症の分類(運動性失語、感覚性失語)、失語症患者へのコミュニケーション支援(ゆっくり話す、短く区切って話す、非言語的コミュニケーションの活用)、家族支援(心理的サポート、コミュニケーション指導)。