Aさん(87歳、男性)。3年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断された。1年前に妻が亡くなってから1人で暮らしている。日常生活は問題なく送れていたが、最近Aさんは薬を飲み忘れることが増えてきたり、電話の応対ができなかったりすることがあり、日常生活に支障が出るようになった。 普段は入浴を楽しみにしていたAさんが、1週前に浴室で誤って冷たい水をかぶってしまい、それ以来「お風呂に入ると寒いから嫌だ」と言って、入浴を拒否するようになった。この日も「お風呂は寒い」と言って入浴を拒否している。看護師が浴室と脱衣室の室温を確認すると26°C〜28°Cにあたためられていた。また、施設内の温度は一定に設定されており、浴室から部屋まで移動する間も寒さを感じることはなかった。Aさんへの対応として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Aさんの入浴拒否は、過去に冷たい水をかぶった経験からくる「寒い」という主観的な不安感によるものです。浴室や脱衣室の室温が十分に暖められていることは看護師が確認済みですが、湯の温度に対するAさんの不安は残っている可能性があります。Aさんと一緒に湯の温度を実際に確認することで、現在の状況が安全で快適であることを具体的に示し、Aさんの誤解や不安を解消し、安心感を提供することができます。これは、Aさんの感情に寄り添いながら、問題の原因に直接的にアプローチする最も適切な対応です。
選択肢ごとの解説
- 1. Aさんの拒否は過去の不快な経験による心理的なものであり、入浴の必要性を論理的に説明しても感情的な抵抗は解消されにくいと考えられます。共感を示し、不安を取り除くアプローチが優先されます。正しくは:Aさんの感情に寄り添い、不安を取り除くための具体的な行動を促す。選びやすい理由:清潔保持の観点から重要だと感じてしまうかもしれない。混同注意:認知症の高齢者に対して、必要なケアの重要性を伝えることは一般的ではあるが、今回は感情的な拒否が主因であるため不適切。
- 2. Aさんの拒否の理由は「寒い」という主観的な感覚であり、浴槽の種類を変えることではこの不安は解消されません。通常の入浴環境でも、寒さ対策が十分であることが示されています。正しくは:Aさんが抱いている「寒い」という具体的な感覚に焦点を当てて対応する。選びやすい理由:身体への負担を軽減できるという点で良いように見えるかもしれない。混同注意:介助の負担軽減や身体機能に合わせた浴槽ではあるが、寒さに対する不安とは直接関係がない。
- 3. 正解。Aさんは過去の不快な経験から「お風呂は寒い」という認識を持っており、現在の浴室の室温が適切でも、湯の温度に対する不安が払拭されていない可能性があります。看護師がAさんと一緒に湯の温度を確認することで、安全で快適な状態であることを客観的に示し、Aさん自身の不安を具体的な情報で解消しようとするアプローチは適切です。これにより、Aさんの安心感を高め、入浴への抵抗感を和らげることができます。
- 4. 一時的に入浴を回避することはできますが、根本的な問題解決にはなりません。Aさんが入浴を拒否するようになった原因である不安や恐怖を解消する機会を失ってしまいます。清潔保持の観点からも継続的な入浴は必要です。正しくは:Aさんの不安を解消し、入浴を促すための具体的な働きかけを行う。選びやすい理由:Aさんの意向を尊重する形に見えるかもしれない。混同注意:自律支援の一環として意思を尊重することも大切だが、今回はトラウマによる拒否であり、解決策を探ることが優先される。
国試ポイント
高齢者の心理的な問題(トラウマや不安)に起因する行動拒否に対する看護師の適切なアプローチを問う問題です。単に物理的な環境を整えるだけでなく、本人の主観的な感覚や過去の経験に配慮し、安心感を醸成するコミュニケーションと行動が重要となります。
混同注意
選択肢1のように、入浴の必要性を説明することは一般的ですが、今回は感情的な拒否であるため効果的ではありません。選択肢4のように拒否を容認することは、問題の先延ばしであり、適切な解決策ではありません。
次に同じ論点が出たら
もし一緒に湯温を確認しても抵抗が続く場合は、足浴や清拭から開始するなど、段階的なアプローチを検討する必要がある。
関連知識
高齢者の精神心理的ケア、行動心理学、認知症の周辺症状(BPSD)への対応、不安への介入方法、環境調整とコミュニケーションの重要性。