A君(2歳6か月、男児)。両親との3人暮らし。脳性麻痺と診断され、自力で座位の保持と歩行はできず専用の車椅子を使用している。話しかけると相手の目を見て笑顔を見せ、喃語を話す。食事はきざみ食でスプーンを使うことができるが、こぼすことが多く介助が必要である。排泄、清潔および更衣は全介助が必要である。 定期受診のため外来を受診した。バイタルサインは、体温37.5°C、呼吸数32/分、心拍数120/分、血圧108/48 mmHgであった。両上肢と手関節は屈曲、両下肢は交差伸展し、背を反らしており、全身が緊張している。母親は看護師に「Aは、便は出ない日がありますが大体毎日出ています。時々夜遅くまで眠らない日がありますが日中は機嫌良くしています」と話した。母親に指導すべき内容で優先度が高いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
患者Aさんの「両上肢と手関節は屈曲、両下肢は交差伸展し、背を反らしており、全身が緊張している」という状態は、典型的な筋緊張亢進の兆候です。このような姿勢は、脳性麻痺などの神経疾患を持つ患者によく見られ、疼痛、関節拘縮、呼吸困難、皮膚損傷、体位保持の困難など、様々な問題を引き起こす可能性があります。また、呼吸数32/分、心拍数120/分といったバイタルサインの異常も、筋緊張亢進による身体的ストレスが原因である可能性が高いです。これらの症状は患者の現在の状態において最も緊急性が高く、看護師は筋緊張の緩和方法について母親へ優先的に指導し、患者の苦痛を軽減し合併症を予防する必要があります。他の選択肢に示された問題(感染予防、排便コントロール、呼吸機能の悪化予防、睡眠パターンのコントロール)も重要ではありますが、現状の情報からは筋緊張の異常が最も患者の生命維持やQOLに直結する可能性が高いため、優先度が最も高いと考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 発熱はありますが、それ以外の感染を示唆する情報が乏しく、現在の患者の状態から緊急性は低いと考えられます。筋緊張の異常は即座の対応が求められる可能性が高いです。正しくは:感染症予防は重要ですが、現在のバイタルサインや身体所見から、より緊急性の高い問題に対処する必要があります。選びやすい理由:発熱があるため、感染予防も必要だと感じるかもしれませんが、他の情報と比較すると優先度は低いです。混同注意:発熱=感染という短絡的な思考に陥りやすいですが、発熱の原因は多岐にわたり、他の身体所見との関連性も考慮する必要があります。
- 2. 正解。問題文にある「両上肢と手関節は屈曲、両下肢は交差伸展し、背を反らしており、全身が緊張している」という記述は、明らかな筋緊張亢進を示しており、脳性麻痺など神経学的異常のある患者によく見られます。この状態は、呼吸困難、疼痛、関節拘縮、皮膚損傷などの合併症を引き起こす可能性があり、QOLを著しく低下させます。また、呼吸数32回/分、心拍数120回/分といったバイタルサインの異常も、筋緊張亢進による身体的ストレスが原因である可能性があります。そのため、筋緊張の緩和は最も優先度の高い介入と考えられます。
- 3. 母親の「便は出ない日もありますが大体毎日出ています」という発言から、便秘の傾向はあるものの、緊急性は低いと考えられます。筋緊張の異常の方が、呼吸循環系の異常に直結する可能性があり、優先度が高いです。正しくは:排便管理も重要ですが、現状のバイタルサインや筋緊張の異常に比べると優先度は低いです。選びやすい理由:便が出ない日があるという情報から、排便の問題があると感じるかもしれませんが、「大体毎日出ている」ことから、直ちに指導が必要なほどの緊急性はないと判断できます。混同注意:慢性的な排便の問題と、急性の筋緊張亢進による身体的ストレスの区別がつきにくいかもしれません。
- 4. 呼吸数32回/分は異常値ですが、これは筋緊張亢進が原因である可能性が高いです。筋緊張が緩和されれば、呼吸も落ち着くことが期待されるため、直接的な呼吸機能悪化予防よりも、根本原因である筋緊張の緩和が優先されます。正しくは:呼吸機能低下の防止は重要ですが、現在の患者の状態における呼吸数の増加は、筋緊張亢進に起因する可能性が高いため、筋緊張の緩和が優先されます。選びやすい理由:呼吸数が多いことに着目し、呼吸機能の悪化予防が必要だと感じるかもしれませんが、その原因を特定することがより重要です。混同注意:呼吸数の増加が、筋緊張亢進によるものなのか、それとも原疾患の進行によるものなのかを判断するのが難しいかもしれません。
- 5. 母親の「時々夜遅くまで眠らない日がありますが日中は機嫌良くしています」という発言から、睡眠リズムに問題はあるものの、日中の機嫌が良いことから、現在の患者の状態の中で最も緊急性が低いと考えられます。正しくは:睡眠パターンの調整は生活の質向上のために大切ですが、現在の身体的徴候(筋緊張亢進、バイタルサイン異常)への対応が最優先されます。選びやすい理由:夜遅くまで眠らない日があるという情報から、睡眠の問題に意識が向くかもしれませんが、日中の機嫌が良いという点も考慮する必要があります。混同注意:睡眠の質と、直接的な身体的苦痛やバイタルサインの異常の緊急性の比較が難しいかもしれません。
国試ポイント
脳性麻痺などの神経学的障害を持つ患者の身体所見の理解と、それに基づく看護介入の優先順位付けが問われています。特に、筋緊張亢進が引き起こす全身への影響と、バイタルサイン異常との関連性を理解しているかが重要です。
混同注意
各選択肢が示す問題はどれも患者の健康管理において重要であり、学生はどこから手をつけるべきか迷いがちです。特に、発熱や呼吸数の増加といったバイタルサインの異常に直接反応しようとするかもしれませんが、その根本原因を探り、最も影響の大きい問題から対処する視点が求められます。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症状を呈する患者に遭遇した場合、まずは患者の全身状態を評価し、バイタルサインの異常の原因を多角的にアセスメントします。特に、神経学的異常が疑われる場合は、筋緊張の状態、反射、姿勢、意識レベルなどを詳細に観察し、緊急性の高い合併症(呼吸困難、痙攣など)の有無を確認します。同時に、家族の訴えにも耳を傾け、日頃のケア状況や困っていることを把握し、適切な指導や支援に繋げます。
関連知識
脳性麻痺の病態生理、合併症(関節拘縮、脊柱側弯、誤嚥、便秘など)、筋緊張亢進に対する看護介入(体位変換、ポジショニング、ストレッチ、温罨法、薬物療法との連携)、発達段階に応じた看護、家族支援。