Aさん(20歳、女性)は境界性人格〈パーソナリティ〉障害の診断を受け、精神科外来に通院中である。ある日、人間関係のトラブルから処方されていた睡眠薬を過量服薬して自殺企図をしたところを家族に発見され、救命救急センターに搬送された。 入院1週、Aさんは看護師ごとに言動や態度を変えることが多く、病棟ではAさんに対して共感を示す看護師と、拒否的な態度を示す看護師に分かれてしまった。そのため、病棟の看護師はチームでの対応についてカンファレンスを行った。Aさんへの看護師のチームとしての対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第112回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
患者が看護師によって態度を変えるという状況は、患者の言動が看護師と患者の関係性に影響を与えていることを示唆しています。この行動の背景や、それが関係性に与える具体的な影響をチーム全体で評価・分析することは、問題の本質を理解し、一貫性のある適切な介入方法を検討するための基盤となります。これにより、チーム内の対応のばらつきを解消し、患者中心のケアを提供できるようになります。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者の言動に振り回され、関わりを減らすことは、適切な看護関係の構築や患者のニーズ理解を放棄することにつながります。このような対応は患者の孤立を深め、問題行動を助長する可能性があります。正しくは:患者との関わりを必要最小限に抑えるのではなく、一貫性のある対応をチームで共有し、関わりの質を高めるべきです。選びやすい理由:問題行動に悩んでいるため、一時的に距離を置くことで状況が落ち着くのではないかと考える看護師もいるかもしれません。混同注意:患者のペースに合わせる対応と、関わりを減らすことを混同しやすいです。後者は責任放棄と捉えられかねません。
- 2. 特定の看護師にのみ担当を固定すると、その看護師への負担が過度になるだけでなく、チーム全体で一貫した看護を提供できなくなります。また、患者が特定の看護師に依存し、他の看護師との関係構築が困難になる可能性もあります。正しくは:特定の看護師に担当を固定するのではなく、全ての看護師が共通の認識を持ち、一貫した態度で接することが重要です。選びやすい理由:共感的な看護師であればAさんの言動に対応できると安易に考えがちですが、それはチームとして問題を解決する姿勢ではありません。混同注意:患者にとって安心できる看護師の存在は重要ですが、それがチーム医療の放棄につながる固定化とは異なります。
- 3. 看護師が患者に対して抱く感情は自然なものであり、それを完全に抑え込むことは困難です。感情を共有し、話し合う場を設けることで、感情のコントロールや客観的な視点での対応を検討できます。感情を表出させないと、不満が蓄積したり、対応のばらつきにつながったりする可能性があります。正しくは:感情を一切表出させないのではなく、カンファレンスなどの場で感情を共有し、その感情が看護にどう影響するかを分析し、客観的に対処法を検討すべきです。選びやすい理由:感情的になることで対応がブレることを懸念し、感情を抑えることが適切だと考えてしまうかもしれません。混同注意:感情をコントロールすることと、感情を表出しないことを混同しやすいです。後者は健全なチーム運営を阻害します。
- 4. 正解。患者が看護師ごとに言動を変える行動は、患者と看護師の関係性や患者の心理状態を理解する上で重要な情報です。この行動が関係性にどう影響しているかをチームで評価・分析することで、行動の背景にある患者のニーズを理解し、一貫性のある適切な看護計画を立てることができます。これは問題解決の第一歩となります。
国試ポイント
患者の行動が看護ケアに与える影響をチームで評価し、一貫性のある対応を導き出すプロセスを理解しているか問う問題です。特に、境界性パーソナリティ障害などで見られる「分裂(splitting)」に近い状況への看護師のチーム対応について問われています。
混同注意
個人的な感情を排して機械的に対応することと、感情を客観的に共有・分析して対応方針を立てること。また、患者の言動に対応できないことと、患者の言動を分析し理解しようとすること。
次に同じ論点が出たら
同様の状況で、次のステップとして具体的な介入方法を問われた場合、どのようなコミュニケーション技法や環境調整が適切かを判断できるか。
関連知識
精神科看護におけるチームアプローチ、患者-看護師関係、分裂(splitting)への対応、看護カンファレンスの目的と役割、感情労働の管理。