Aさん(85歳、女性)は、両側の感音難聴で「音は聞こえるけれど、話の内容が聞き取れないので困っています」と話した。Aさんに対する看護師の対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
感音難聴は蝸牛や聴神経の障害により音を電気信号に変換する機能や神経伝達に異常をきたし、音の認知や弁別が困難となる。高齢者の難聴では、音量だけでなく言葉の聞き分け能力(語音弁別能力)も低下していることが多く、音は聞こえても話の内容が理解できない「聞き取り困難」を訴える。このような場合、視覚情報(口の動き、表情、身振り手振り)を補完することで、聴覚情報だけでは得られない情報を補い、コミュニケーションの理解度が向上する。看護師が口元を見えるように話しかけることは、Aさんの残存聴力と視覚を最大限に活用し、情報の理解を助ける効果的な方法であるため、最も適切である。
選択肢ごとの解説
- 1. 感音難聴では、単に音量を上げても言葉の聞き取りが改善しないことが多い。大声はかえって音の歪みを増強させ、不快感を与える可能性もある。85歳のAさんが「音は聞こえても、話の内容が理解できない」と訴えていることから、大声で話しかけても理解は得られにくい。正しくは:ゆっくりと、はっきりと、低い声で話すことを意識し、大声は避ける。必要に応じて筆談や口元の動きを明確にする。選びやすい理由:難聴者に対しては反射的に声を大きくしようと考えがちであるため。特に伝音難聴の場合は音量を上げることで聞き取りが改善するため、その知識と混同しやすい。混同注意:伝音難聴に対する対応と感音難聴に対する対応の区別。伝音難聴は音量不足が主因だが、感音難聴は音量だけでなく語音弁別能力の低下が主因であるという点の混同。
- 2. 話す内容を詳細に説明することは、情報量が増え、かえってAさんの情報処理の負担を増やす可能性がある。情報が多すぎると、どの部分に注目すればよいか分かりにくくなり、理解を妨げるおそれがある。高齢者の難聴患者には、むしろ簡潔にまとめて伝える方が理解しやすい。正しくは:話す内容を簡潔にまとめて伝え、重要なポイントを絞って伝える。必要に応じてゆっくりと繰り返し、理解度を確認しながら進める。選びやすい理由:相手が理解できないと感じた場合に、情報を増やすことで理解を促そうとする一般的なコミュニケーション戦略と混同しやすいため。特に知識不足が原因で理解できない場合とは異なるため。混同注意:一般的な認知機能の低下や理解不足に対するアプローチと、感音難聴による語音弁別能力の低下に対するアプローチの混同。
- 3. 文字盤の使用は、発語が困難な場合や、重度の難聴で聴覚情報や口話によるコミュニケーションが極めて難しい場合に有効な手段である。しかし、Aさんは「音は聞こえても、話の内容が理解できなくて困っている」と訴えており、全く会話ができない状況ではない。文字盤の使用は、時間と労力がかかり、Aさんの状況からみて第一選択肢として適切とは言えない。正しくは:まず聴覚と視覚を活用したコミュニケーションを試し、それでも困難な場合に補助的な手段として筆談や文字盤を検討する。選びやすい理由:コミュニケーションが困難な状況において、補助具の使用は有効な手段であるという一般的な認識があるため。特に重度の難聴や発語障害を伴う患者への対応と混同しやすい。混同注意:重度の聴覚障害や発語障害のある患者に対するコミュニケーション方法と、軽度から中等度の感音難聴患者に対するコミュニケーション方法の区別。
- 4. 正解。感音難聴では音を聞き分ける能力が低下しているため、聴覚情報だけでなく視覚情報を補完することが非常に有効である。口元が見えるように話しかけることで、Aさんは話し手の口の動き(口形、唇の形)や表情を読み取ることができ、話の内容を推測しやすくなる。これは「音は聞こえても、話の内容が理解できない」というAさんの訴えに最も直接的に対応し、コミュニケーションの理解度を高めるために非常に効果的な方法である。選びやすい理由:視覚情報がコミュニケーションに重要であるという一般的な認識があるため、自然な選択肢として理解しやすい。また、感音難聴のメカニズムを理解していれば、この対応が最も効果的だと判断できる。
国試ポイント
高齢者の感音難聴者とのコミュニケーション方法において、視覚情報活用(口元の動き、表情)の重要性を理解する。
混同注意
単に音が聞こえない「難聴」と、音は聞こえるが話の内容が理解できない「語音弁別能力の低下」は区別して考える必要がある。特に高齢者の難聴では後者が多く、音量を上げるだけでは不十分な場合が多い。
次に同じ論点が出たら
難聴患者とのコミュニケーションでは、まずは難聴の種類や程度を把握し、残存機能を最大限に活用できるような支援策を検討する。特に「音は聞こえても話の内容が理解できない」という訴えがある場合は、視覚情報の補完が有効な選択肢となることを判断の軸とする。
関連知識
加齢による難聴は高音域から進行しやすく、聞き間違いや聞き返しが増える。補聴器の調整、筆談、要約しながら話す、静かな環境で話す、ゆっくりと明瞭に話すなどの方法も有効である。また、補聴器を使用している場合はその装用状況も確認する。