Aさん(70歳、男性)は、妻(68歳)と2人暮らし。3年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉と診断され、在宅で療養生活を続けていた。その後、Aさんは症状が悪化し、入院して気管切開下の人工呼吸療法、胃瘻による経管栄養法を受けることになった。妻は、退院後に必要なケアの技術指導、人工呼吸器や胃瘻の管理方法、緊急・災害時の対応について病棟看護師から指導を受けた。退院前カンファレンスにおいて、訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討することになった。妻は慢性腎不全のため、週に3回の血液透析を受けており、1回に約6時間の外出が必要である。 退院から1週後に妻から訪問看護ステーションに連絡があり「人工呼吸器のアラームが鳴り続けていて、どうしたらいいのかわかりません。低圧アラームが点灯しています。気管カニューレも抜けていないし、呼吸もいつも通りにしているように見えます」と尋ねた。この時の訪問看護師の妻への回答で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
人工呼吸器の低圧アラームは、呼吸回路内の圧力が設定値よりも低い場合に発生します。これは、回路の接続不良、リーク、カニューレの自己抜去などが主な原因となります。設問では「気管カニューレも抜けていないし、呼吸もいつも通りにしている」とあるため、回路の緩みやリークが最も疑われます。そのため、回路の接続状態を確認するよう指示するのが適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 気管内吸引は、気道が閉塞している場合に有効ですが、低圧アラームの原因として優先的に確認すべき項目ではありません。吸引が必ずしもアラームを止めるとは限りません。正しくは:「吸引後もアラームが続くようでしたら、再度ご連絡ください」選びやすい理由:分泌物による閉塞が呼吸器アラームの原因となることがあるため、関連があるように思える。混同注意:高圧アラームと混同することがある。低圧アラームは回路のリークを示唆する。
- 2. 正解。低圧アラームは、人工呼吸器の回路内に設定された圧力が維持されていないことを示します。最も一般的な原因は、回路の接続部の緩みや外れ、気管カニューレのリークなどによる空気の漏れです。まずは回路の接続確認が重要です。
- 3. 電源コードが抜けている場合、人工呼吸器は作動せず、低圧アラームとは異なる「電源オフ」や「バッテリー低下」などのアラームが表示される可能性が高いです。また、呼吸が「いつも通り」とあることから、完全に停止している状態ではないと考えられます。正しくは:「もし呼吸器の表示が完全に消えているようでしたら、電源を確認してください」選びやすい理由:アラームが鳴っている状況で、基本的なトラブルシューティングとして電源確認を思いつくかもしれない。混同注意:アラームが鳴っていること全般に対する対応と捉えがちだが、低圧アラームに特化した原因ではない。
- 4. ウォータートラップに水が溜まりすぎると、回路抵抗が増加し、高圧アラームの原因となることがあります。低圧アラームの直接的な原因とはなりにくいです。正しくは:「もし高圧アラームが鳴っているようでしたら、ウォータートラップをご確認ください」選びやすい理由:回路の一部であるため、アラームの原因として関連があるように思える。混同注意:高圧アラームの原因と混同しやすい。低圧アラームはリーク、高圧アラームは閉塞を疑う。
国試ポイント
人工呼吸器の各種アラームとその原因、およびそれに対する初期対応の知識が問われています。特に低圧アラームと高圧アラームの原因の違いを理解しておくことが重要です。
混同注意
低圧アラームと高圧アラームの原因(低圧アラームは回路のリーク・外れ、高圧アラームは気道抵抗の増加・閉塞・噛み込み・分泌物など)を混同しやすい。また、患者の様子(呼吸がいつも通り)をヒントとして活かせるかどうかもポイントです。
次に同じ論点が出たら
回路の接続を確認してもアラームが止まらない場合、患者の状態(チアノーゼの有無、呼吸状態の変化など)を再評価し、訪問看護ステーションへ再度連絡するか、緊急性の高い場合は救急要請を検討する必要があります。
関連知識
人工呼吸器のアラームの種類(高圧、低圧、無呼吸、換気量異常など)とその具体的な原因、および緊急時の対応手順。人工呼吸器の各部品の役割と正しい取り扱い。