Aさん(69歳、女性)は、主治医、訪問看護師とともに、母(91歳)を自宅で看取った。死亡確認の直後、Aさんは涙ぐみながら「母のためにもっとできることがあったのではないかと申し訳なく思います」と話した。このときに訪問看護師が行うAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第110回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
看取り直後で悲嘆の初期段階にあるAさんに対し、最も重要なのは、その悲しみや後悔の感情を受け止め、共感的に傾聴することです。これにより、Aさんは感情を安全に表現でき、悲嘆のプロセスを健康的に進めるための基盤が作られます。他の選択肢は、タイミングが早すぎるか、Aさんの感情に寄り添うという点で優先度が低いです。
選択肢ごとの解説
- 1. 死亡直後の悲嘆の初期段階では、具体的な支援団体への紹介よりも、まずは個別の感情に寄り添うことが優先されます。精神的な準備ができていない状態で集団の場に参加を促しても、Aさんの負担になる可能性があります。正しくは:Aさんの悲嘆が一定程度落ち着き、社会的なサポートを求める気持ちが確認された段階で、遺族の会などの情報提供を行う。選びやすい理由:長期的な視点で見ればサポートとして有効であるため、一見すると適切に思える。混同注意:遺族の会はサポートになるという知識があるため、適切な対応だと誤解する可能性がある。
- 2. 正解。看取り直後のAさんの発言は、母親を失ったことによる悲しみや後悔の感情を示しています。この段階では、Aさんの感情を受け止め、共感的に傾聴することが最も重要です。これにより、Aさんは自分の感情を表現しやすくなり、悲嘆のプロセスを健康に進めるための第一歩となります。正しくは:Aさんが話したいことを自由に話せるよう、静かに耳を傾け、感情に寄り添う姿勢を示す。選びやすい理由:直接的な問題解決ではないため、他に何かできることがあるのではないかと感じるかもしれない。混同注意:傾聴は基本的な看護技術だが、この状況で最も優先されることを見落とす可能性がある。
- 3. 遺品整理は悲嘆のプロセスの一部ですが、死亡確認直後の感情が不安定な時期に行うことは、Aさんの精神的な負担を増大させる可能性があります。具体的な行動を促すよりも、まずは感情の表出を促すべきです。正しくは:遺品整理はAさんの気持ちが落ち着き、自らその必要性を感じた時に、Aさんのペースで行えるようサポートを検討する。選びやすい理由:遺品整理が故人を偲ぶ行為や、前向きな区切りになることもあるため、選択肢として魅力的だが、タイミングが不適切。混同注意:遺品整理が悲嘆ケアの一環であるという知識から、適切だと判断する可能性がある。
- 4. 新しい活動への移行は、悲嘆の初期段階には適していません。悲嘆は時間をかけて向き合うべき感情であり、それを避けるように新たな活動を促すことは、かえってAさんの感情の抑制や悲嘆プロセスの遅延を招く恐れがあります。正しくは:Aさんの感情に寄り添い、悲しみを十分に体験できるようサポートする。新しい活動を始めるのは、Aさんが自らその準備ができたと感じてからにする。選びやすい理由:気分転換や前向きな行動が回復に繋がると考えるかもしれないが、時期尚早である。混同注意:気分転換を促すことが良いと一般的に思われがちだが、悲嘆の初期段階では不適切である。
国試ポイント
看取り後の遺族ケア、特に悲嘆の初期段階における看護師の役割と対応の優先順位が問われています。傾聴と共感は、悲嘆ケアの基本原則です。
混同注意
悲嘆ケアにおける様々な支援(遺族の会紹介、遺品整理、新たな活動)は全て重要ですが、それぞれの支援を行うべき適切なタイミングを理解していないと混乱しやすいです。死亡直後は、まず感情の受容と傾聴が最優先されます。
次に同じ論点が出たら
Aさんの傾聴後、悲嘆の進行状況に応じて、必要であれば継続的な訪問看護、遺族の会などの社会資源の紹介、医療機関との連携などを検討する。
関連知識
悲嘆のプロセス(キューブラー・ロス、ウォーデンなど)の各段階の理解、悲嘆ケアの原則、共感的傾聴の技法、グリーフワークの支援。