Aさん(73歳、女性)は夫(73歳)と2人暮らし。6年前にParkinson〈パーキンソン〉病と診断され、レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージIII、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ〈L-dopa〉を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用〈有害事象〉について外来看護師に尋ねた。 1か月後の外来受診のときに、Aさんは「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった。怪我をしなくてよかった」と主治医に話した。主治医から勧められ、Aさんは訪問看護を週に1回利用することになった。今後Aさんが安全な入浴をするために訪問看護師がアセスメントする内容で最も優先するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Aさんが「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった」と具体的に転倒の状況を語っていることから、入浴する時間帯によってADL(身体機能、バランス、注意集中力など)が変動している可能性が最も高く、これをアセスメントすることが今後の安全な入浴のための具体的な支援計画を立てる上で最も優先されます。例えば、特定の時間帯に疲労が蓄積しやすかったり、薬の影響でふらつきやすくなったりするなど、日内変動を把握することで、リスクの高い時間帯を避けたり、その時間帯に必要な対策を講じたりすることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 浴室の環境要因も重要ですが、Aさんが「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった」と述べていることから、単なる環境よりも、入浴時間帯の変化とそれに伴うAさんの身体状況の変化の方が優先してアセスメントすべきです。正しくは:「入浴時間帯による身体状況の変化」を優先的にアセスメントする。選びやすい理由:転倒予防には環境整備が非常に重要であるため、真っ先に環境要因を考えがちです。混同注意:環境アセスメントと、利用者の身体状況の日内変動のアセスメント。
- 2. 居室から浴室までの距離は、移動時の転倒リスクに関連しますが、今回の転倒は「入浴時間の変化」がきっかけであるとAさんが認識しており、移動経路そのものよりも、その時間帯のAさんの状態変化がより直接的な要因と考えられます。正しくは:「入浴時間帯による身体状況の変化」を優先的にアセスメントする。選びやすい理由:移動距離も転倒リスクを高める要因であり、アセスメント項目として適切に思えます。混同注意:特定の場所での転倒リスクと、身体状況の日内変動による転倒リスク。
- 3. 「怪我をしなくてよかった」とAさんが話していることから、現時点で打撲痕や傷は確認されていない可能性が高いです。また、このアセスメントは転倒後の結果であり、今後の安全な入浴という『予防』の観点からは優先順位が低いです。正しくは:今後の転倒予防を目的として、「入浴時間帯による身体状況の変化」を優先的にアセスメントする。選びやすい理由:転倒後の状況確認は重要ですが、今回の問いは「今後安全な入浴をするため」という予防的な視点を求めています。混同注意:転倒後の状態評価と、転倒予防のためのリスクアセスメント。
- 4. 正解。Aさんが「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった」と明確に述べていることから、入浴する時間帯によってAさんの身体機能や認知機能、疲労度などのADLが変化している可能性が最も高いです。これをアセスメントすることで、安全な入浴時間帯や必要な介助、環境調整の時期などを具体的に検討できます。これが今後の転倒予防において最も優先すべき情報です。選びやすい理由:この選択肢が直接的に転倒の具体的な状況(床の素材など)を指していないため、一見すると優先度が低いように感じられるかもしれませんが、根本原因を探る上で最も重要です。混同注意:一時的な転倒の原因と、身体状況の日内変動という根本的なリスク要因。
国試ポイント
在宅看護におけるアセスメント能力、特に利用者の主訴から根本的な原因を探り、転倒予防などの安全管理に繋がる最も適切な情報を優先的に判断できるかが問われています。表面的な環境要因だけでなく、利用者の身体・精神状態の日内変動という視点が重要です。
混同注意
転倒予防の環境整備(床材、手すりなど)と、利用者の身体機能の日内変動という内的な要因の把握。両方重要だが、主訴からより直接的な要因を判断する。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、利用者の『いつ』『どのような状況で』という具体的な主訴に注目し、その状況変化と身体機能・認知機能・精神状態の日内変動との関連性を検討できるかがポイントになります。環境要因や一般的なリスク要因も重要だが、個別具体的な主訴を起点とするアセスメントの優先順位を問う問題が多い。
関連知識
高齢者の転倒リスク要因(身体的要因、環境的要因、薬学的要因など)、ADLの日内変動、訪問看護におけるアセスメントの優先順位付け、個別性のある看護計画の立案。