Aさん(92歳、女性)は重度の障害のため体を動かすことができないが、表情などで意思表示はできる。Aさんは食べることが好きで「最期まで口から食べたい」と言っていた。最近は誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しており、現在は入院中で終末期である。同居している家族は積極的な治療をしないことを希望し、自宅でAさんを看取ることを決めた。家族への退院時の指導で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Aさんは「最期まで口から食べたい」という強い希望を持っています。終末期ケアにおいては、患者の尊厳とQOLを最優先し、苦痛の緩和とともに、本人の希望を最大限に尊重することが重要です。誤嚥性肺炎のリスクがあっても、患者が食べたいと望むのであれば、安全に配慮しながら少量でも経口摂取を続けることは、精神的な満足感につながります。これは積極的な治療を望まない家族の意向とも一致します。
選択肢ごとの解説
- 1. 家族による24時間付き添いは、身体的にも精神的にも大きな負担となり、現実的ではありません。終末期の在宅ケアでは、家族の負担軽減とサポートが重要です。正しくは:「ご家族の負担が過度にならないよう、訪問看護や介護サービスなどの社会資源を積極的に利用しましょう。」選びやすい理由:愛情深い家族であれば「最後まで寄り添いたい」と考えるため、親身なケアを連想させ選びやすいかもしれません。混同注意:「寄り添う」という精神的な支援の概念と、具体的な「24時間付き添う」という行動の実行可能性の区別。
- 2. 終末期の在宅ケアにおいて、厳密な尿量測定は患者の快適さやQOL向上に直接寄与する優先度の高い項目ではありません。むしろ家族に不必要な負担をかける可能性があります。正しくは:「終末期の在宅ケアでは、患者さんの快適さを優先し、排泄の回数や状態を確認する程度で十分です。」選びやすい理由:医療従事者としては「バイタルサインの管理」が重要だと学習するため、具体的な数値管理を促すこの選択肢が正しく見えてしまう可能性があります。混同注意:急性期や回復期の病態把握のための尿量測定と、終末期のQOL重視のケアの目的の混同。
- 3. 家族は「積極的な治療をしない」ことを希望し、自宅で看取ることを決めています。終末期の呼吸困難に対して救急車を呼ぶことは、再入院や延命治療につながる可能性があり、家族の意向と相反します。通常は、訪問医や訪問看護師への連絡、あるいは事前に計画された症状緩和のための薬剤使用が適切です。正しくは:「Aさんの呼吸が苦しそうになったら、事前に話し合った訪問看護ステーションまたはかかりつけ医に連絡し、症状緩和のための指示を仰ぎましょう。」選びやすい理由:患者の苦痛を取り除きたいという自然な感情から、緊急時の行動として救急車を呼ぶのが適切だと考えてしまうかもしれません。混同注意:急性期の状態悪化に対する緊急対応と、終末期における症状緩和ケアの判断基準の混同。
- 4. 正解。患者の「最期まで口から食べたい」という強い希望と、QOL(生活の質)を尊重する終末期ケアの原則に合致します。誤嚥性肺炎のリスクはありますが、終末期においては、患者の尊厳と希望を最大限に尊重し、食べたいものを少量でも口から摂取させることで、精神的な満足感や生きがいを提供することが重要視されます。これは、積極的な延命治療を望まない家族の意向とも整合性があります。
国試ポイント
終末期ケアにおける患者のQOLと意思の尊重に関する知識、および家族への適切な指導が問われています。特に、誤嚥リスクと患者の希望のバランスをどのように考えるべきか、という点が重要です。終末期には医療的介入よりも患者の希望や尊厳が優先される場面があることを理解しているかを確認する問題です。
混同注意
誤嚥性肺炎のリスク管理と、終末期におけるQOL維持の優先順位について混同しやすいです。通常の医療では誤嚥リスクを避けることが優先されますが、終末期では患者の希望や尊厳がより重視される場合があります。
次に同じ論点が出たら
同様の終末期ケアの問題が出た場合、まず患者本人の意思や希望、次に家族の意向を確認し、それらを尊重した上で、身体的・精神的苦痛の緩和とQOLの維持に焦点を当てた選択肢を選ぶように判断します。安易な延命治療や家族への過度な負担を強いる選択肢は避けるべきです。
関連知識
終末期ケアの原則(アドバンス・ケア・プランニング、患者の自己決定権、QOLの尊重、症状緩和)、在宅医療・訪問看護の役割、誤嚥性肺炎のリスク管理とケア、家族ケア。