Aさん(22歳、女性、会社員)は、昼食後、自室に大量のお菓子とお酒を持ち込み、食べて飲んでいたところを母親に注意をされたことに腹を立て、母親の目の前でリストカットを始めた。慌てた母親は、父親とともにAさんを連れて救急外来に来院した。医師が傷の処置をしようとすると「死んでやる。触るな」と大声で騒ぎ暴れ始めたため、精神科病棟に緊急入院となった。 入院翌日、母親が面会に来たが、Aさんに要求されるままお菓子を大量に持参した。Aさんは、面会室でお菓子をすべて食べた直後に、トイレにこもり、嘔吐していたところを看護師が発見した。Aさんは泣きながら「食べると止まらなくなる。太りたくない」と訴えた。主治医は、Aさんが右第2指を使って嘔吐していた痕跡を認めたこと、Aさんが「中学の時から過食と嘔吐を繰り返していた」と話したことから、神経性過食症と診断した。入院時の身体所見:身長155 cm、体重48 kg。入院時の検査所見:赤血球400万/μL、Hb 12.5 g/dL、白血球6,300/μL。Na135 mEq/L、K 2.7 mEq/L、Cl 98 mEq/L、AST 30 U/L、ALT 35 U/L、γ-GTP32 U/L。Aさんの状態をアセスメントするために優先度が高い検査はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
神経性過食症では、自己誘発性嘔吐により電解質異常(特に低カリウム血症)をきたしやすく、これが心臓に重篤な影響を及ぼす可能性があります。問題文でK2.7mEq/Lと著しい低カリウム血症が確認されており、これは不整脈(QT延長、T波平坦化、U波出現など)や心停止のリスクを高めるため、心電図検査で心臓の状態を評価し、適切な介入を行うことが最優先されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。問題文にあるK2.7mEq/Lという著しい低カリウム血症は、不整脈や心停止などの致死的な合併症を引き起こすリスクが高く、心電図による心臓の状態評価が最も緊急性が高いため、優先順位が高い検査として適切です。選びやすい理由:低カリウム血症の重要性が理解できていれば、選択できる。混同注意:他の身体症状と関連する検査との優先順位。
- 2. 頭部CTは、痙攣や意識障害など、中枢神経系に異常が疑われる場合に選択されます。問題文からはそのような兆候は読み取れず、現在のAさんの主要なリスクである低カリウム血症とは直接関係がないため、優先順位は低いです。正しくは:痙攣や意識障害など神経学的な異常が認められる場合に検討する。選びやすい理由:摂食障害の患者は精神疾患を合併することも多く、脳の異常を心配するかもしれませんが、現在の身体リスクとは直結しません。混同注意:精神症状の評価のための画像診断。
- 3. 腹部超音波は、腹痛や嘔吐の原因が胃腸や肝臓、胆嚢、膵臓などの腹部臓器にある場合に有用ですが、Aさんの過食と嘔吐の背景にあるのは神経性過食症であり、現時点での生命に関わる緊急性は低カリウム血症による心臓への影響が最も高いため、優先順位は心電図よりも低いです。正しくは:消化器症状が強く、腹部臓器の器質的疾患が疑われる場合に検討する。選びやすい理由:嘔吐という症状から消化器系の検査を連想しやすいため。混同注意:器質的な消化器疾患と摂食障害に伴う消化器症状。
- 4. 上部消化管内視鏡は、嘔吐による食道炎や食道裂孔ヘルニア、稀にMallory-Weiss症候群などの合併症を確認するために有用ですが、緊急性は低カリウム血症による心臓への影響には劣ります。低カリウム血症は不整脈や心停止に直結するリスクがあるため、まず心臓の状態を評価すべきです。正しくは:食道炎や食道裂孔ヘルニア、Mallory-Weiss症候群など上部消化管の具体的な器質的合併症が疑われる場合に検討する。選びやすい理由:嘔吐を繰り返していることから、食道や胃への直接的なダメージを心配するかもしれませんが、生命予後への影響は低カリウム血症が上回ります。混同注意:嘔吐による消化管の損傷と電解質異常による全身への影響。
国試ポイント
神経性過食症における電解質異常(特に低カリウム血症)が心臓に及ぼす影響の重大性と、その評価のための心電図検査の優先順位。
混同注意
身体的な症状が多岐にわたるため、他の消化器系や脳の検査と混同しやすいが、低カリウム血症による生命に直結するリスク(不整脈)が最も緊急性が高い点を理解すること。
次に同じ論点が出たら
摂食障害の患者で電解質異常、特にカリウム値に異常が見られた場合、心臓への影響を最優先に評価するために心電図を考慮する。
関連知識
神経性過食症の診断基準、低カリウム血症の症状(筋力低下、便秘、テタニーなど)、低カリウム血症の治療法(カリウム補充)、摂食障害の合併症全般(唾液腺腫脹、歯のエナメル質侵食、食道炎、胃破裂など)。