Aさん(82歳、男性)。妻との2人暮らし。障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準はランクJ。Aさんは搔痒感のために皮膚科を受診し、老人性皮膚搔痒症と診断され、抗ヒスタミン内服薬が処方された。身長165 cm、体重55 kg。Aさんの趣味は散歩で、毎日1km程度を歩いている。 初診から1か月後、皮膚科の外来でAさんは「薬を飲み始めてから、口の中が渇いて食べにくい」と話した。この状況から、Aさんに障害が起きていると考えられる摂食・嚥下の段階はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
口の渇き(口腔乾燥)は唾液の分泌量減少により引き起こされます。摂食・嚥下過程において、準備期(口腔準備期)は食物を咀嚼し、唾液と混ぜ合わせて食塊を形成する重要な段階です。唾液が十分にないと、食物を湿らせることができず、咀嚼が困難になり、まとまりにくい食塊となり、結果として「食べにくい」という症状につながります。したがって、口渇が最も直接的に影響を与えるのは準備期と考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 先行期は、食物を認識し、食べる意欲を高め、食形態を判断する段階です。口渇による食べにくさは、食べ物の取り込みや咀嚼、唾液との混合に直接影響するため、先行期の問題とは異なります。正しくは:先行期の問題であれば、「食べ物を見ても食欲がわかない」「食べたいと思わない」といった訴えになります。選びやすい理由:食事がしにくいという漠然とした訴えから、食事全体の準備段階を連想する可能性があります。混同注意:食べること全般への意欲や認識の問題と混同しやすいです。
- 2. 正解。準備期(口腔準備期)は、食物を口に取り込み、咀嚼して唾液と混ぜ合わせ、飲み込みやすい食塊を形成する段階です。口の渇き(口腔乾燥)があると、唾液の分泌が低下し、食物の湿潤化や食塊形成が困難になるため、この段階に直接的な障害が生じます。選びやすい理由:直接的な症状と摂食嚥下段階が結びつきやすいため、正答を導きやすい選択肢です。混同注意:口腔期(咀嚼・食塊形成)と混同することはありません。先行期や咽頭期との区別が重要です。
- 3. 咽頭期は、食塊が口腔から咽頭へ送られ、嚥下反射が誘発され、気道が閉鎖して食道へ送り込まれる段階です。口渇は嚥下反射自体に直接的な障害をもたらすものではありません。嚥下時にむせたり、喉に食べ物が残るような症状は咽頭期の障害を示唆します。正しくは:咽頭期の問題であれば、「食べ物が飲み込みにくい」「むせる」「喉に引っかかる感じがする」といった訴えになります。選びやすい理由:「食べにくい」という訴えから、嚥下そのものに問題があると連想されることがあります。混同注意:嚥下反射の問題や、口腔期の食塊形成不全による咽頭期への影響と混同しやすいです。
- 4. 食道期は、食塊が食道の蠕動運動によって胃へ運ばれる段階です。口渇は食道の機能に直接影響を与えません。この段階の障害は、胸焼け、逆流、食物のつかえ感などとして現れます。正しくは:食道期の問題であれば、「食べ物が胸につかえる」「胸焼けがする」といった訴えになります。選びやすい理由:食事の最後の段階であるため、全体的な不調として誤って選ばれる可能性もあります。混同注意:嚥下後の症状や消化器系の問題と混同しやすいです。
国試ポイント
摂食・嚥下の5段階(先行期、準備期/口腔期、咽頭期、食道期)の各段階の機能と、それぞれの段階で起こりうる問題や症状について理解しているかが問われています。特に口腔内の状態がどの段階に影響するかを正確に把握する能力が求められます。
混同注意
先行期や咽頭期との区別が重要です。先行期は「食べることへの認識や意欲」で、咽頭期は「嚥下反射」の段階です。口渇はこれらよりも、口の中で食べ物を処理する段階(準備期)に直接影響します。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、まず提示された症状がどの摂食・嚥下段階の機能と密接に関連しているかを検討します。特に、口腔内の状態変化がどの段階に影響するかを重点的に確認します。
関連知識
摂食・嚥下障害のアセスメント、口腔ケアの重要性、薬剤による副作用(抗コリン作用など)とその対応、脱水の兆候と症状、高齢者の摂食・嚥下機能の変化。