Aさん(82歳、男性)。妻との2人暮らし。障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準はランクJ。Aさんは搔痒感のために皮膚科を受診し、老人性皮膚搔痒症と診断され、抗ヒスタミン内服薬が処方された。身長165 cm、体重55 kg。Aさんの趣味は散歩で、毎日1km程度を歩いている。 Aさんは「食べにくくてあまり食事が摂れていない。階段の昇り降りをしたり、10分以上歩いたりすると疲れてしまい、あまり外に出なくなった」と言う。体重は1か月間で2kg減少していた。他に自覚症状はなく、血液検査の結果は、血清蛋白の低下の他に異常はなかった。このときのAさんに出現している現象として最も考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
Aさんの「食べにくくて食事が摂れていない」「体重が1か月間で2kg減少」「階段の昇り降りをしたり、10分以上歩いたりすると疲れてしまう」「血清蛋白の低下」という状況は、栄養状態の悪化、特にタンパク質摂取不足による筋肉量の減少(サルコペニア)を強く示唆しています。筋肉量が減少すると、身体活動能力が低下し、疲労感が増し、さらなる活動量の低下につながる悪循環に陥りやすいため、これらの症状が最も矛盾なく説明できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 脱水は体液量の減少を指しますが、Aさんの症状(疲労、体重減少、血清蛋白低下)から直接的に脱水を強く示唆する情報はありません。特に、他に自覚症状がないとされており、脱水症状(口渇、尿量減少など)は明示されていません。正しくは:脱水の兆候(皮膚の乾燥、尿量減少、口渇など)が具体的に示されている場合。選びやすい理由:食事摂取量の減少は脱水にもつながる可能性があるため、選択肢として魅力的。混同注意:栄養不良と脱水は関連することがあるため、混同しやすい。
- 2. 正解。食事摂取量の減少による体重減少と、疲労感、活動量の低下(階段の昇降や10分歩行で疲れる)は、筋肉量の減少(サルコペニア)と強く関連します。血清蛋白の低下も、全体的な栄養状態の悪化、特にタンパク質摂取不足を示唆し、筋肉減少の要因となります。
- 3. 胃酸の分泌増加は、消化器症状(胸やけ、胃痛など)を伴うことが一般的ですが、Aさんには「他に自覚症状はない」と記載されています。また、疲労感や体重減少、血清蛋白低下とは直接的な関連が薄いです。正しくは:胃酸過多による症状(例:胸やけ、胃部不快感)が具体的に示されている場合。選びやすい理由:食事が摂れないという訴えから、消化器系の問題を連想させる可能性がある。混同注意:消化器系の他の問題(例:食欲不振、消化不良)と胃酸分泌増加を混同する可能性。
- 4. 関節可動域の制限は、関節疾患や長期間の不動によって生じますが、Aさんの症状(食事摂取量減少、体重減少、疲労、活動量低下)からは直接示唆されません。もし関節に問題があるなら、具体的な痛みや動きの制限が自覚症状として現れるはずですが、「他に自覚症状はない」とされています。正しくは:関節の痛みや変形、特定の動作での可動域制限が具体的に示されている場合。選びやすい理由:活動量の低下から、身体機能の低下として連想される可能性がある。混同注意:全身的な身体機能の低下と、特定の関節の可動域制限を混同する可能性。
国試ポイント
高齢者や栄養状態が不良な患者における、サルコペニア(筋肉減少症)の兆候を理解しているかが問われています。特に、体重減少、疲労感、身体活動能力の低下、血清蛋白の低下といった複合的な症状から、最も適切な病態を判断する能力が重要です。
混同注意
脱水や他の身体機能低下と混同しやすいが、体重減少と身体活動の低下、血清蛋白低下の組み合わせがサルコペニアを最も強く示唆する。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合は、体重減少の程度、食事内容の変化、身体活動レベル、および他の検査データ(例:アルブミン、CRP)を総合的に見て、低栄養状態やフレイル、サルコペニアを疑う判断ができるかを確認する。
関連知識
サルコペニア、低栄養状態、フレイル、QOL低下、活動能力の評価、血清アルブミン値など。高齢者の栄養状態評価指標や、運動機能評価の基本も関連知識となる。