Aさん(66歳、男性)は、Lewy〈レビー〉小体型認知症であるが、日常生活動作〈ADL〉は自立している。介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を初めて利用することとなった。施設の看護師は、同居している家族から「以前、入院したときに、ご飯にかかっているゴマを虫だと言って騒いだことがあったが、自宅ではそのような様子はみられない」と聞いた。入所当日の夜間の対応で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
レビー小体型認知症では、壁の模様、床のシミ、衣服の柄、物の影など、曖昧な視覚刺激を具体的なもの(人、動物、虫など)として誤認する「幻視」が出現しやすい特徴があります。家族からの「ゴマを虫だと言って騒いだ」という情報も、まさにこの幻視の特性を示唆しています。入所初日の夜間という慣れない環境では特に幻視が出現しやすいため、細かい模様のある物を片付けたり、影ができにくいように照明を調整したりするなど、幻視を誘発しやすい視覚刺激を環境から除去することが重要です。これにより、患者さんの混乱や不安を軽減し、安全を確保できます。
選択肢ごとの解説
- 1. レビー小体型認知症の幻視に対して、論理的な説明は効果が薄く、かえって混乱を招く可能性があります。本人はリアルに体験しているため、否定されることで不安を増幅させることがあります。正しくは:本人の訴えを否定せず、共感的に傾聴し、安心させる声かけを行う。選びやすい理由:現実と幻覚を区別させようとすることは一見正しいように思える。混同注意:他の認知症(例:アルツハイマー型)での見当識障害に対する対応と混同しやすい。
- 2. レビー小体型認知症では、視覚的な刺激の過剰や光の加減によって幻視が悪化することがあります。完全に暗いのも良くないですが、常時明るすぎる状態も幻視を誘発する可能性があります。正しくは:部屋は穏やかな明るさに保ち、影ができにくいように調整する。夜間は間接照明や足元灯などを活用し、急激な明るさの変化を避ける。選びやすい理由:暗闇が不安を増すという一般的な考えから、照明をつけることが良いと判断しやすい。混同注意:夜間せん妄に対する対応と混同しやすいが、レビー小体型認知症の幻視は特定の視覚刺激に関連することが多い。
- 3. 正解。レビー小体型認知症の幻視は、壁の模様、衣服の柄、布団のしわなど、漠然とした視覚刺激を具体的に認識しやすい特徴があります。これらの刺激を取り除くことで、幻視の誘発を最小限に抑え、患者さんの安心感を高めることができます。家族からの「ゴマを虫だと騒いだ」という情報は、細かい模様や点状のものを誤認しやすい特性を示唆しています。正しくは:(正しい選択肢のため修正なし)選びやすい理由:具体的な幻視の内容と直接結びつかないため、優先度が低いと感じるかもしれない。混同注意:環境整備の重要性は理解できても、幻視と具体的な環境要因の関連性に気づきにくい場合がある。
- 4. 夜間にカーテンを開けておくと、窓の外の景色や動き、あるいは窓に映る自分の影などが、幻視を誘発するきっかけとなる可能性があります。特に見慣れない施設環境での初夜であるため、外部からの刺激は不安を増大させやすいです。正しくは:夜間はカーテンを閉めて、外部からの視覚刺激を遮断し、落ち着いた環境を保つ。選びやすい理由:閉鎖的な空間が不安を増すという考えから、開放が良いと判断しがち。混同注意:開放的な空間が心理的に良い影響を与えるという一般的な考えと混同しやすい。
国試ポイント
レビー小体型認知症の主な症状(幻視、パーキンソニズム、認知変動など)とその症状に応じた具体的な看護介入、特に幻視に対する環境調整の理解が問われています。患者の訴えを否定せず、安全で落ち着ける環境を整えることが基本です。
混同注意
幻視への対応と、せん妄やBPSD(周辺症状)全般への対応が混同されやすい。レビー小体型認知症の幻視は視覚的な誤認が特徴であり、その誘因となる環境刺激の除去が特に重要である。
次に同じ論点が出たら
今後、幻視が頻繁に出現する場合、日中の活動内容や服薬状況(特に抗精神病薬)の見直しが必要となるか。また、家族への幻視への具体的な対応方法の指導や、幻視以外の症状(例:転倒リスク)へのアセスメントも継続する。
関連知識
レビー小体型認知症の診断基準、主要症状(幻視、認知機能の変動、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害など)、薬剤(抗精神病薬の感受性)への理解。認知症高齢者への非薬物療法としての環境調整、コミュニケーション技術。