Aさん(78歳、女性)は認知症があり、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅰである。1人で暮らしており、かかりつけの医師から処方された複数の内服薬を1日3回服用している。嚥下障害はない。Aさんは「薬がたくさんあって、余る薬もあるのよ」と訪問看護師に話した。このときの服薬管理で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Aさんは認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Iと診断されており、軽度の認知機能低下があるものの、一人暮らしで複数の内服薬を1日3回服用しています。現在の課題は、薬の量の多さと管理の複雑さによる飲み忘れです。この状況で最も適切なのは、薬局で調剤時に服薬タイミングごとに薬をまとめて包装する「一包化」です。これにより、Aさん自身がいつどの薬を飲むべきかを明確に把握でき、飲み間違いや飲み忘れのリスクを大幅に軽減し、自立した服薬継続を支援できます。嚥下障害がないため薬剤の形状変更は不要であり、訪問看護師の訪問時のみの服薬は現実的ではありません。また、単に複数の薬を一つの箱にまとめるだけでは、混乱を解消するどころか、かえって服薬ミスを招く可能性があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。Aさんは認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Iであり、比較的軽度の認知症ですが、複数の薬を1日3回服用することに困難を感じています。一包化は、服用する日時ごとに必要な薬がまとめて包装されているため、飲み間違いや飲み忘れを防ぎ、服薬の管理を非常に簡便にします。これは、自立支援を促しつつ安全な服薬を継続させるための、最も効果的な方法の一つです。
- 2. 設問に「嚥下障害はない」と明記されているため、薬剤の形状変更(例:錠剤を粉砕する、OD錠にするなど)は、Aさんの服薬困難の原因に対する直接的な解決策にはなりません。服薬困難の理由は、薬の量が多いことや管理の複雑さにあります。正しくは:嚥下障害がある場合に、形状変更は有効な選択肢となります。今回のケースでは、服薬忘れの原因が嚥下能力にないため、不適切です。選びやすい理由:高齢者で薬を飲むのが大変そう、という一般的なイメージから、飲みやすくすれば問題が解決するのではと考えてしまうかもしれませんが、Aさんの状況には当てはまりません。混同注意:嚥下機能に問題がある患者への対応と混同しやすいですが、本症例では嚥下障害はないとされています。
- 3. Aさんは1日に3回薬を服用する必要があるのに対し、訪問看護師は通常、毎日複数回訪問するわけではありません。そのため、訪問時にまとめて服用してもらう方法は、1日3回の服薬を継続する現実的な解決策ではありません。残りの服薬についてはAさんが自己管理をしなければならず、飲み忘れの問題は解決しません。正しくは:この方法ではなく、一包化や服薬カレンダーの活用など、Aさん自身が管理しやすくなる工夫を導入し、訪問看護師はそれらが適切に利用されているか確認したり、声かけを行ったりすることが適切です。選びやすい理由:看護師が見ている前であれば確実に薬を飲めるという安心感から、一時的には有効だと考えてしまうかもしれませんが、長期的な服薬管理としては不十分です。混同注意:重度の認知症患者や、服薬介助が必須な状態の患者に対する直接的な服薬支援と混同しやすいですが、Aさんは自立度Iであり、自立を促す支援が求められます。
- 4. 単にすべての薬を一つの箱にまとめるだけでは、服用すべき薬の種類やタイミングが複雑であるという根本的な問題は解決されません。むしろ、混在することでどの薬をいつ飲むべきかという混乱をさらに招く可能性があります。Aさんは飲み忘れがある状況であり、視覚的な識別やタイミングの区別が困難になっていると推測されます。正しくは:服薬カレンダーや配薬ボックスなど、服用時点ごとに薬を仕分けして保管できるようなツールを活用し、視覚的に分かりやすく管理する方法を提案する方が適切です。一包化は、薬局の段階で既に仕分けがされているため、より効果的です。選びやすい理由:散らばっているよりは整理整頓されている方が良い、と考えてしまうかもしれませんが、服薬管理の複雑さの解決にはつながりません。混同注意:服薬カレンダーや配薬ボックスのように、飲むタイミングごとに薬を分類して管理できるツールと混同しやすいですが、「一つの箱にまとめる」だけではその機能がありません。
国試ポイント
認知症高齢者の服薬管理において、患者の認知症の程度(日常生活自立度)、同居の有無、嚥下機能などの個別性を踏まえた、最も適切かつ現実的な支援方法を選択できるかが問われています。特に、軽度認知症患者に対して、自立支援を促しながら安全な服薬を継続させるための具体的な工夫を理解していることが重要です。
混同注意
一包化と服薬カレンダーや配薬ボックスの活用は、どちらも服薬管理を助ける手段ですが、一包化は薬局での調剤段階で薬をまとめ、服薬の簡便性を高める点で、より根本的かつ一貫した解決策となることが多いです。今回のケースでは嚥下障害がないため形状変更は不適切であり、訪問看護師による直接介助は、自立度IのAさんには過剰であると共に、訪問頻度の問題から非現実的です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出た場合、まず患者の認知症の程度(日常生活自立度)、同居の有無、嚥下機能、薬の種類や服用回数、そして現在の困りごとを詳細に確認することが重要です。その上で、最も有効で現実的、かつ患者の自立を尊重しつつ安全を確保できる介入策を判断する必要があります。特に、多職種連携(医師、薬剤師、ケアマネジャーなど)の視点も考慮に入れることが求められます。
関連知識
認知症高齢者の日常生活自立度判定基準(I, IIa, IIb, IIIa, IIIb, IV, M)、高齢者の服薬管理の工夫(一包化、服薬カレンダー、配薬ボックス、多職種連携)、認知症患者へのコミュニケーション方法、薬の管理における安全性確保。