Aさん(72歳、男性)は、2か月前に右中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した。本日、病院を退院し、介護老人保健施設に入所した。既往歴:1年前に前立腺癌のため腹腔鏡下前立腺全摘除術。身体所見:左上下肢に軽度のしびれがある。半側空間無視がある。構音障害はない。生活機能:改訂長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉26点、Barthel〈バーセル〉インデックス65点。 Aさんは排尿コントロールについて「脳梗塞になってから、尿意を感じるとがまんできずに大量の尿が漏れてしまう。1日に何回も漏らす」と看護師に話した。Aさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Aさんの症状は、脳梗塞後に生じた「尿意を感じるとがまんできずに大量の尿が漏れてしまう」という切迫性の尿失禁であり、これは過活動膀胱の典型的な症状です。脳梗塞によって膀胱の排尿筋を制御する神経経路に障害が生じ、排尿筋が不随意に収縮してしまう神経因性膀胱(過活動膀胱)の状態になっていると考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。脳梗塞による神経因性膀胱の症状として、突然の強い尿意切迫感とそれに伴う失禁(切迫性尿失禁)が生じることが多く、これは過活動膀胱の典型的な症状と一致します。排尿筋の不随意収縮が原因と考えられます。選びやすい理由:他の選択肢も尿失禁の種類であるため、症状から適切に判断する必要があります。混同注意:腹圧性尿失禁と混同しがちですが、誘因が異なります。
- 2. 腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、重いものを持つなど腹圧がかかった際に少量の尿が漏れる状態です。Aさんの「尿意を感じるとがまんできずに大量の尿が漏れてしまう」という訴えとは異なります。正しくは:「咳やくしゃみで少量漏れる」などの表現であれば腹圧性尿失禁が適切です。選びやすい理由:尿失禁の一種であるため、誤って選ぶ可能性があります。混同注意:切迫性尿失禁と症状が異なります。
- 3. 溢流性尿失禁は、膀胱に尿がたまりすぎた結果、少しずつ溢れ出るように漏れる状態です。Aさんの「尿意を感じるとがまんできずに大量の尿が漏れてしまう」という訴えとは異なります。残尿感が強いことも特徴です。正しくは:「少しずつチョロチョロと漏れ出す」などの表現であれば溢流性尿失禁が適切です。選びやすい理由:これも尿失禁の一種であり、鑑別が必要です。混同注意:切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁と症状が異なります。
- 4. Aさんの訴えは「脳梗塞になってから」という発症時期が明記されており、前立腺全摘除術の既往や関連性についての情報はありません。この選択肢はAさんの現在の状況の原因として不適切です。前立腺全摘除術後の合併症としては、術後早期に腹圧性尿失禁が見られることがあります。正しくは:患者が前立腺全摘除術の既往があり、その後の症状であれば考慮されます。選びやすい理由:男性の尿失禁の原因として考えられますが、問われているのは「脳梗塞になってから」の状況です。混同注意:脳梗塞との直接的な関連がなく、原因として提示された情報と一致しません。
国試ポイント
脳梗塞などの神経疾患と関連する排尿障害(特に神経因性膀胱による過活動膀胱)の症状を正確に理解し、他の尿失禁の種類と鑑別できるかが問われています。患者の訴えから主要な症状を抽出し、適切な病態をアセスメントする能力が求められます。
混同注意
腹圧性尿失禁、溢流性尿失禁といった他の尿失禁のタイプと混同しやすいですが、それぞれの特徴的な症状(誘因、尿量、尿の出方など)を把握しておくことが重要です。
次に同じ論点が出たら
このアセスメントに基づいて、排尿日誌の記録を促し、残尿測定や尿検査を行い、必要に応じて薬物療法や行動療法などの治療方針を医師と検討します。また、生活指導やリハビリテーションの導入も考慮します。
関連知識
神経因性膀胱の種類(弛緩性、痙性)、それぞれの原因疾患と症状、および治療・看護介入について。また、排尿日誌の重要性や、生活指導(水分摂取、排尿間隔)も関連知識として挙げられます。