Aさん(72歳、男性)は、2か月前に右中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した。本日、病院を退院し、介護老人保健施設に入所した。既往歴:1年前に前立腺癌のため腹腔鏡下前立腺全摘除術。身体所見:左上下肢に軽度のしびれがある。半側空間無視がある。構音障害はない。生活機能:改訂長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉26点、Barthel〈バーセル〉インデックス65点。 入所後2日、Aさんは箸を使って食事をするが、いつも左側に置かれた食器には食べ残しがあった。Aさんへの対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Aさんが常に左側の食器に食べ残しがあるという状況は、脳血管障害などによる半側空間無視の可能性を示唆しています。半側空間無視の患者に対しては、無視側の刺激を増やす、あるいは意識的に注意を向けさせる介入が有効です。食事中に食器の位置を定期的に変更することで、無視側の食べ物にも注意が向きやすくなり、食べ残しを減らすことができます。これは、無視側の刺激を増やすための具体的な対応策として適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. スプーンの使用は食事の自立を助ける場合がありますが、左側の食べ残しの直接的な解決策にはなりません。片側を認識できないことが原因である可能性が高いため、食事形態の変更だけでは根本的な対応にはなりません。正しくは:食事摂取補助具の検討は、食べ残しの原因が食器の配置認識と直接関係ない場合に考慮されます。選びやすい理由:食事のしやすさを向上させるという点で一時的に検討されがちですが、根本的な問題解決にはなりません。混同注意:食事のしやすさと、片側無視による食べ残しをごちゃ混ぜにして判断してしまう可能性があります。
- 2. 反復唾液嚥下テストは嚥下機能の評価に用いるものであり、Aさんの左側にある食べ残しとは直接関係がありません。嚥下障害の兆候は見られていません。正しくは:嚥下機能に問題がある兆候(むせる、食べ物が口に残るなど)が見られる場合に実施を検討します。選びやすい理由:高齢者の食事介助では嚥下機能の確認が重要であるため、関連する検査として誤って選択されることがあります。混同注意:食事に関する問題全般に対して嚥下機能検査を適用してしまうと、問題の本質を見誤る可能性があります。
- 3. 正解。Aさんの「いつも左側に置かれた食器には食べ残しがあった」という状況は、脳血管障害などによる半側空間無視の症状である可能性が高いです。食事中に食器の位置を変更することで、左側の食べ物も認識しやすくなり、食べ残しを減らす効果が期待できます。正しくは:この対応は、半側空間無視の患者に対して有効な介入方法の一つです。
- 4. 滑り止めマットは、食器が動いて食べにくい場合の対策であり、Aさんの左側の食べ残しの原因(半側空間無視の可能性)とは関係ありません。Aさんは箸を使って食事ができており、食器が滑ることによる困難は示唆されていません。正しくは:食器が安定しないことによる食事困難がある場合に検討します。選びやすい理由:高齢者の食事介助で一般的に行われる工夫の一つであるため、状況を深く分析せず選択してしまうことがあります。混同注意:食事環境の整備と、半側空間無視による認知の問題を混同してしまう可能性があります。
国試ポイント
半側空間無視の症状と、それに対する具体的な看護介入について理解しているかが問われています。特に、日常生活動作(ADL)における観察と、その原因に応じた個別的な対応策を考える能力が重要です。
混同注意
半側空間無視と嚥下障害や運動機能障害による食事困難を混同しないことが重要です。それぞれの症状に応じた適切な介入を区別できるかがポイントとなります。
次に同じ論点が出たら
Aさんの現在の状態をさらに評価するために、どのような観察や検査が必要か。また、食事以外の日常生活における半側空間無視の兆候がないかを確認し、包括的な看護計画を立てる視点が求められます。
関連知識
半側空間無視とは、脳の損傷によって、身体の中心線から片側の空間を認識できない、あるいは注意を向けられない状態を指します。多くは右半球の損傷により左側の無視が生じます。看護介入としては、無視側の刺激を増やす(例:声かけ、物品配置)、無視側へ注意を向けるよう促す、食事介助時の工夫(食器の位置変更、声かけ)などがあります。