Aさん(27歳、男性、会社員)は1人で暮らしている。最近、事務部門から営業部門に異動になった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック症〈パニック障害〉と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と抗うつ薬が処方された。また、職場の協力を得て、苦手な仕事のサポートをしてもらうことになった。受診から2日、Aさんから「また発作が起きるのではないかと考えてしまい、家から出られません」とクリニックに電話があった。 Aさんの状況に対するクリニックの看護師のアセスメントで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Aさんの「また発作が起こるのではないか」という発言は、パニック発作が再発することへの強い不安を示しています。これはパニック症の中核症状である「予期不安」に該当します。予期不安は、パニック発作を繰り返すことで、次の発作がいつ起こるか、どのような状況で起こるかといったことに対して継続的に不安を抱く状態です。この不安により、発作が起こる可能性のある場所や状況を避けるようになるため、仕事に行きたくないという訴えにもつながります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。Aさんの「また発作が起こるのではないか」という発言は、過去の経験から将来の出来事に対して抱く不安、すなわち予期不安を示唆しています。これはパニック症の特徴的な症状の一つです。選びやすい理由:一見するとストレスやうつ症状とも関連しそうだが、直接的な発言内容は不安の先行を指している。混同注意:「予期不安」と「全般性不安」を混同しやすい。予期不安は特定の出来事(ここではパニック発作)の再発への不安であるのに対し、全般性不安は漠然とした様々なことへの持続的な不安を指す。
- 2. Aさんの発言は「また発作が起こるのではないか」という不安に焦点が当てられており、気分が落ち込んでいる、興味の喪失がある、といったうつ症状の悪化を直接的に示すものではありません。パニック症にうつ病が併発することはありますが、この発言だけでは判断できません。正しくは:うつ症状の悪化を判断するには、気分の落ち込み、食欲不振、不眠、意欲の低下などの具体的な情報を収集する必要がある。選びやすい理由:精神的な不調が続いているため、うつ症状も関連しているのではないかと思われがち。混同注意:パニック症と関連する精神疾患としてうつ病が挙げられるため、安易に選んでしまいがち。
- 3. 睡眠薬の持ち越し効果(ハングオーバー)は、翌日まで眠気や倦怠感が残ることを指します。Aさんの発言は、将来のパニック発作への不安であり、睡眠薬の残存効果とは直接関連しません。設問の記述から睡眠薬の使用は読み取れません。正しくは:睡眠薬の服用状況と、翌日の眠気や倦怠感の有無を確認する必要がある。選びやすい理由:「体調不良」という漠然とした情報から、薬の影響も考えられるのではないかと思いがち。混同注意:薬物療法に関する知識が不十分だと、様々な薬の副作用と混同する可能性がある。
- 4. Aさんの発言は仕事そのものへのストレスではなく、「また発作が起こるのではないか」という発作の再発への不安が主な内容です。仕事に行くことへの抵抗は、発作が起こる場所としての職場を避けている可能性が高く、直接的な仕事のストレス増加を示すものではありません。正しくは:仕事内容や人間関係など、職場環境に関する具体的なストレス要因について情報収集する必要がある。選びやすい理由:「仕事に行きたくない」という言葉から、仕事そのものにストレスを感じていると誤解しやすい。混同注意:仕事への意欲低下と、特定の状況(発作が起こるかもしれない場所)への回避行動を混同しやすい。
国試ポイント
パニック症の症状、特に予期不安の理解と、患者の発言からその状態をアセスメントする能力が問われています。患者の訴えの背景にある精神症状を正確に捉えることが重要です。
混同注意
パニック症と他の精神疾患(うつ病、社交不安症など)の鑑別や、予期不安と全般性不安の区別が曖昧だと誤ったアセスメントにつながりやすい。
次に同じ論点が出たら
アセスメント後、具体的な不安の内容をさらに深く傾聴し、発作が起こりやすい状況や回避行動の有無を確認します。同時に、現在の不安の程度を評価し、適切な対処法を検討するとともに、医師と連携して治療計画を見直す必要があるか判断します。
関連知識
パニック症の診断基準(DSM-5)、治療(薬物療法、認知行動療法)、日常生活への影響、看護介入(安心できる環境の提供、不安への対処法の指導、服薬指導など)。