A君(小学6年生)は病院に併設された院内学級に通いながら骨肉腫の治療を続けていた。現在、肺転移があり終末期にある。呼吸障害のため鼻腔カニューレで酸素(2L/分)を吸入中である。A君の食事摂取量は減っているが意識は清明である。1週後に院内で卒業式が予定されている。A君は「卒業式に出席したい」と話している。看護師のA君への対応として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
A君は小学校6年生であり、終末期ではあるものの意識がはっきりしており、卒業式への出席という強い希望を持っています。小児の終末期ケアにおいては、身体的苦痛の緩和だけでなく、心理社会的、スピリチュアルな側面に配慮し、子どもの尊厳と意思を尊重することが重要です。卒業式への参加は、A君にとって大きな意味を持つライフイベントであり、自己肯定感や達成感を高める機会となります。看護師は、可能な限りA君の希望を実現できるよう、多職種と連携し、リスク管理を行いながら準備を進めるべきです。これは、小児の権利とQOLを最大限に尊重する緩和ケアの原則に合致します。
選択肢ごとの解説
- 1. A君は意識がはっきりしており、自分の意思を明確に伝えています。小学校6年生の発達段階であれば、自分の希望を表明する能力があると判断できます。このような状況で直ちに両親に判断を委ねる提案は、A君の主体性や意思を尊重しない対応となります。正しくは:まずはA君の希望を傾聴し、その上で両親を含めた家族全体でどのように支援できるかを話し合う場を設ける。選びやすい理由:小児の場合、最終的な決定は保護者が行うという一般的な認識があるため、保護者に判断を委ねることが適切だと考えがちです。また、医療現場での責任回避の意図があるかもしれません。混同注意:小児の意思決定における保護者の役割と、子どもの意見表明権・自己決定権の尊重。
- 2. 現在の状態が終末期で肺転移があり、呼吸苦から酸素吸入が必要な状況であることは事実ですが、「出席は困難である」と一方的に伝えることは、A君の希望を頭ごなしに否定することになり、心理的な苦痛を増大させる可能性があります。小児の緩和ケアでは、希望の実現に向けて可能な限り支援を検討することが原則です。正しくは:現在の健康状態を踏まえつつ、卒業式に出席するための具体的な支援策や、予想されるリスクについてA君と家族に説明し、共に実現可能性を探る。選びやすい理由:終末期で身体状態が不安定であるため、リスクを考慮し、出席を諦めさせる方が安全だと判断しやすいです。患者の身体的な安全確保を最優先と考えるあまり、精神的な側面への配慮が不足する場合があります。混同注意:患者の身体的安全確保と、終末期におけるQOL向上・希望の尊重のバランス。
- 3. 正解。A君の「卒業式に出席したい」という希望は、終末期においても重要なライフイベントへの参加を意味し、自己肯定感や生きる意欲に繋がる可能性があります。看護師は、A君の希望を尊重し、身体的状況を考慮しつつ、医師や他の医療スタッフ、学校関係者、家族と連携して、出席を実現するための具体的な準備(酸素ボンベの携帯、車椅子使用、時間短縮、場所の調整、体調急変時の対応など)を進めるべきです。これは小児の権利を尊重し、QOLを最大限に高める緩和ケアの視点に基づいています。
- 4. A君は終末期であり、病状の進行に伴い体力は低下していく一方です。「体力をつける」という提案は、非現実的であり、A君に不必要な負担やプレッシャーを与える可能性があります。また、体力がつかなければ出席できないという条件をつけることで、A君が希望を諦めざるを得ない状況に追い込むことになりかねません。正しくは:現在の体力レベルで安全に卒業式に参加できる方法を検討し、体調変化に対応できるサポート体制を準備する。選びやすい理由:一般的に、イベント参加には体力が必要という常識から、体力をつけることが解決策だと考えがちです。しかし、終末期の病態を理解していないとこのような誤った提案をしてしまいます。混同注意:一般的な疾患の回復期における体力回復の考え方と、終末期患者の病状進行における現実的な対応の区別。
国試ポイント
小児の終末期における緩和ケアの原則と子どもの権利の尊重。特に、子どもの発達段階に応じた意思決定支援の重要性。
混同注意
終末期患者への過度な保護と、子どもの意思決定権の尊重の区別。終末期であっても、可能な限りQOLを高める支援が重要であることを理解する。
次に同じ論点が出たら
同様の状況では、子どもの発達段階、意識レベル、具体的な希望の内容をまず確認し、その上で希望の実現可能性と、それを支援することの意義(QOL向上、尊厳の保持など)を判断基準とする。身体的リスクのみに焦点を当てず、心理社会的側面も考慮する。
関連知識
小児の緩和ケアガイドライン、アドボカシーの概念、子どもの権利条約(特に意見表明権)、家族ケアの視点、多職種連携の重要性。