Aさん(56歳、女性、主婦)は、食後に冷汗を伴う腹痛があり外来を受診した。腹部超音波検査の結果、胆石症と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術の目的で入院した。看護師は手術オリエンテーションで、術後の入院期間は2日と説明した。Aさんは、同じ手術を受けた妹が合併症で3週間以上食事もできなかったので、自分も同じ合併症を発症するかもしれないと心配そうに話した。 Aさんは、全身麻酔下で気腹法による腹腔鏡下胆囊摘出術を受けている。手術中のAさんに最も生じやすいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
気腹法による腹腔鏡手術では、腹腔内に注入された二酸化炭素(CO2)が腹膜から血管内に吸収されます。これにより、体内のCO2量が増加し、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が上昇しやすい状態となります。これは術中の一般的な生理的変化であり、麻酔管理上、換気量の調整などで対応されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 全身麻酔と手術の環境では、体温はむしろ低下しやすいです。悪性高熱症は体温が上昇するまれな合併症ですが、「最も生じやすい」事象ではありません。正しくは:体温の低下選びやすい理由:悪性高熱症を連想すると選択肢として考慮してしまうかもしれないが、その発生頻度は低い。混同注意:悪性高熱症のような特殊な合併症と混同しやすい。一般的な手術中の体温変動と区別する。
- 2. 気腹による腹腔内圧の上昇は、下大静脈を圧迫し、静脈還流量を減少させるため、一般的に心拍出量は低下傾向にあります。正しくは:心拍出量の低下(または、血圧や心拍数の代償的変動)選びやすい理由:CO2吸収による交感神経刺激や昇圧剤の使用などを連想すると、心機能が亢進するように誤解する可能性がある。混同注意:交感神経の反応や血圧上昇と、心臓のポンプ機能そのものの変化を混同しやすい。
- 3. 気腹法は、手術視野を確保するために腹腔内にガスを注入して意図的に腹腔内圧を上昇させる処置です。正しくは:腹腔内圧の上昇選びやすい理由:術後に一時的に圧が下がることを想像したり、単に圧変化という言葉に惑わされたりする。混同注意:手術の目的である空間確保のために圧が上昇することと、何か病的な状態での圧低下を混同しやすい。
- 4. 正解。気腹法で注入された二酸化炭素は、腹腔から血液中に吸収されます。これにより、動脈血中の二酸化炭素分圧(PaCO2)が上昇しやすくなります。適切な換気調整がなければ、高炭酸ガス血症を引き起こす可能性があります。
国試ポイント
全身麻酔下での腹腔鏡手術、特に気腹法を用いた場合に生じる生理的変化とその原因を理解しているか問う問題です。二酸化炭素の吸収による高炭酸ガス血症は代表的な合併症・生理的変化として重要です。
混同注意
気腹による圧迫とCO2吸収による影響を混同しやすい。また、麻酔や手術一般に起こる変化と、気腹法特有の変化を区別する必要がある。
次に同じ論点が出たら
気腹圧、手術時間、患者の肺機能などがPaCO2上昇にどのように影響するか、またその管理方法(例えば換気量増加、気腹圧の調整)について問われる可能性があります。また、高炭酸ガス血症以外の気腹法特有の合併症(皮下気腫、空気塞栓など)についても理解しているか確認されるでしょう。
関連知識
気腹法におけるCO2ガスの使用理由(非引火性、吸収・排出が容易)。CO2吸収による生理的影響(PaCO2上昇、アシドーシス、心血管系への影響)。麻酔中の換気管理(PaCO2モニターと人工呼吸器の設定)。気腹による腹腔内圧上昇が心肺機能に与える影響(静脈還流低下、心拍出量低下、末梢血管抵抗上昇など)。悪性高熱症と鑑別。