Aさん(56歳、女性、主婦)は、食後に冷汗を伴う腹痛があり外来を受診した。腹部超音波検査の結果、胆石症と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術の目的で入院した。看護師は手術オリエンテーションで、術後の入院期間は2日と説明した。Aさんは、同じ手術を受けた妹が合併症で3週間以上食事もできなかったので、自分も同じ合併症を発症するかもしれないと心配そうに話した。 Aさんの術後の経過は良好で、退院した。その後の外来受診で「下痢をすることが多いです」という訴えがあった。下痢を予防するために控えるもので正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
下痢の予防や症状緩和のためには、脂肪分の摂取を控えることが非常に重要です。脂肪は消化に負担がかかり、腸管を刺激して蠕動運動を亢進させたり、未消化の脂肪が腸内の浸透圧を高めて水分を引き込み、下痢を悪化させる原因となります。術後の患者は消化機能が一時的に低下していることも多いため、特に注意が必要です。その他の選択肢である塩分、糖質、タンパク質は、それぞれ異なる理由で下痢時に必要な栄養素であるか、または制限の対象とはなりにくいものです。
選択肢ごとの解説
- 1. 食塩は電解質バランスの維持に重要であり、下痢による脱水時にはむしろ補給が必要な場合もあります。一般的に下痢予防のために食塩の摂取を控えるべきではありません。正しくは:下痢による脱水時には、電解質補給の観点から適度な食塩(ナトリウム)摂取が推奨されることがあります。選びやすい理由:高血圧予防などで塩分制限の意識が高い学生が、漠然と体に良いイメージで選んでしまう可能性があります。混同注意:脱水時の水と電解質の補給と、一般的な食事制限を混同する可能性があります。
- 2. 正解。脂肪分は消化に時間がかかり、腸管への刺激が大きいため、下痢を悪化させる可能性があります。特に術後や消化機能が低下している場合、高脂肪食は避けるべきです。未消化の脂肪は腸内で水分を吸収し、浸透圧性下痢を引き起こすこともあります。
- 3. 炭水化物(糖質)は主要なエネルギー源であり、下痢時にはエネルギー補給のために必要です。ただし、特定の種類の糖質(例:乳糖、一部の単純糖質)は過剰摂取で下痢を誘発することがありますが、一般的な炭水化物全体を控えるのは適切ではありません。消化しやすい炭水化物(おかゆ、うどんなど)は下痢時の推奨食です。正しくは:消化しやすい炭水化物(米、パンなど)は下痢時でも重要なエネルギー源であり、適度な摂取が推奨されます。ただし、乳糖不耐症などの特定の状態では乳製品由来の糖質を控える必要があります。選びやすい理由:単純糖質の過剰摂取や乳糖不耐症の知識と混同し、炭水化物全般を制限すべきと考えてしまう可能性があります。混同注意:特定の糖質不耐症(例:乳糖不耐症)に対する制限と、一般的な炭水化物の制限を混同する可能性があります。
- 4. タンパク質は身体の修復や免疫機能の維持に不可欠であり、術後の回復期には特に重要な栄養素です。消化に配慮しつつ、良質なタンパク質を摂取することが望ましいです。正しくは:タンパク質は身体の構成要素であり、術後の回復には不可欠です。消化しやすい形で積極的に摂取することが推奨されます。選びやすい理由:特定の病態(例:肝不全、腎不全)でのタンパク質制限と混同してしまう可能性があります。また、動物性タンパク質の脂肪分と誤って関連付けてしまうかもしれません。混同注意:他の疾患におけるタンパク質制限と混同したり、タンパク質と脂肪分を一緒に考えてしまったりする可能性があります。
国試ポイント
下痢症状を呈する患者への食事指導、特に各栄養素が消化管に与える影響に関する知識が問われています。術後という状況も考慮し、消化器系の負担軽減に重点を置いた選択肢を選ぶ必要があります。
混同注意
どの栄養素が消化器に最も負担をかけるかという点や、特定の病態(例:糖尿病での糖質制限、腎不全でのタンパク質制限、高血圧での塩分制限)における食事療法と混同しやすいです。一般健康指導と症状特異的な食事指導の区別がポイントになります。
次に同じ論点が出たら
下痢の原因疾患や患者の消化吸収能力によって、食事指導の内容はさらに個別化されます。例えば、乳糖不耐症であれば乳製品を控える、特定の吸収不良症候群であれば特定の栄養素の消化酵素補充を検討するなど、次はその患者の具体的な病態に応じた詳細な対応を判断することになります。
関連知識
下痢時の食事療法(低脂肪、低残渣、消化の良い食品の選択)、消化吸収の生理学、ダンピング症候群などの術後合併症と食事、各栄養素の消化プロセス、浸透圧性下痢の原因。