合併症のない全身状態が良好な患者に対して、全身麻酔のための気管挿管を行い用手換気をしたところ、左胸郭の挙上が不良であった。原因として考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
全身麻酔導入時の気管挿管後に用手換気を行い、片側の胸郭挙上が不良である場合、気管チューブが片側の主気管支に深く挿入されてしまい、もう一方の肺に空気が入らない「片肺挿管」である可能性が最も高いです。特に右主気管支は左主気管支よりも分岐角度が緩やかで短いため、右肺への片肺挿管が多い傾向にあります。この状態では、挿管されていない側の肺が膨らまず、胸郭の挙上が不良となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 無気肺は、肺の一部または全体が虚脱し、換気が行われなくなる状態です。しかし、全身麻酔導入時の用手換気直後に観察される「片側の胸郭挙上不良」の直接的な原因としては、その発生機序と時間のずれから考えにくいです。無気肺は換気不良の結果として起こることもありますが、この場合は先に気管挿管に関連する原因を疑うのが適切です。正しくは:無気肺は換気不良の「結果」として生じることがあるため、この時点では可能性は低い。選びやすい理由:換気不良であるため、肺の病態を連想しやすい。混同注意:気管挿管直後の急性期の問題というより、術中や術後に生じやすい病態である。
- 2. 食道挿管の場合、胃に空気が送られるため、両方の胸郭挙上が見られず、上腹部の膨隆が観察されます。また、気管挿管モニター(カプノグラフィ)でCO2波形が確認できない、SpO2の低下など、左胸郭挙上不良以外の特徴的な所見が複合的に現れます。左胸郭のみの挙上不良とは一致しません。正しくは:食道挿管では両胸郭の挙上不良と上腹部の膨隆が見られる。選びやすい理由:気管挿管の問題であるため、挿管ミスを連想しやすい。混同注意:片側性の問題ではなく、全身性の換気不良として現れる。
- 3. 正解。気管チューブが主気管支のいずれか一方(特に右主気管支が多い)に深く挿入された状態を片肺挿管と呼びます。この場合、挿管された側の肺のみが換気され、反対側の肺には空気が送られません。設問では「左胸郭の挙上が不良」とあるため、左肺への換気が行われていないことを示唆しており、これは片肺挿管の典型的な所見と一致します。正しくは:気管チューブが片側の主気管支に深く入りすぎ、もう一方の肺が換気されない状態。選びやすい理由:挿管関連の最も直接的な原因として考えられる。混同注意:食道挿管と混同しやすいが、食道挿管は両側の換気不良となる点が異なる。
- 4. 換気量が不足している場合、通常は両側の胸郭挙上が全体的に不良となります。特定の片側のみが挙上不良となる現象とは一致しません。換気量不足は適切な換気が行われていない状態全般を指しますが、この場合、なぜ片側だけ不良なのかの説明にはなりません。正しくは:換気量不足は両側の胸郭挙上が全体的に不良となる。選びやすい理由:胸郭の挙上が不良であるため、換気の問題を連想しやすい。混同注意:片側性の問題ではなく、全身性の換気不良として現れる。
国試ポイント
気管挿管後の合併症とその臨床症状について理解しているかが問われています。特に片肺挿管の診断と、他の挿管ミス(食道挿管など)との鑑別が重要です。
混同注意
食道挿管と片肺挿管は、どちらも挿管に関連する重大な合併症ですが、出現する症状(両側性か片側性か)が異なります。換気量不足や無気肺も呼吸器系の問題ですが、この状況における直接的な原因としては優先順位が低いです。
次に同じ論点が出たら
片肺挿管と判断された場合、看護師は直ちに医師に報告し、チューブの抜去または深さの調整を補助する準備をします。患者のバイタルサイン(特にSpO2)の継続的なモニタリングが不可欠です。
関連知識
気管挿管後の確認事項:胸郭の両側性挙上、呼気の聴取、胃泡音の有無、カプノグラフィ(CO2波形)の確認、SpO2のモニタリング。片肺挿管が疑われる場合は、チューブを数cm引き抜き、再度両側性の胸郭挙上を確認します。