Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 受診後のAさんの状況に対する看護師のアセスメントで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この問題は、抗うつ薬であるSSRIの主な副作用に関する知識を問うものです。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、特に服用開始初期に消化器症状(吐き気、下痢、便秘など)や頭痛、眠気、不安の増強などの副作用が出やすいことが知られています。設問の「受診後のAさんの状況」が、これらのSSRIの副作用と合致する症状(例えば、服用開始直後で気分不良を訴えているなど)であれば、看護師のアセスメントとしてSSRIの副作用を疑うのが最も適切です。他の選択肢は、情報が不足しているか、SSRIの一般的な副作用ではないため不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 情報から直接的なストレス増加を示す具体的な記述がないため、最も適切なアセスメントとは言えません。診察後の状況は、必ずしもストレスの増大を意味しません。正しくは:患者が特定のストレス要因を訴えたり、身体的・精神的なストレス反応(例:不眠、食欲不振、焦燥感)を明確に示している場合に選択肢として適切になります。選びやすい理由:診察という行為自体が患者にとってストレスとなる可能性はあるため、一見すると選択肢としてあり得るように思えます。混同注意:病状の悪化や治療への不安と混同しやすいですが、ストレスはそれらの直接的な原因とは限らず、別の側面からのアセスメントが必要です。
- 2. 患者の状況に関する具体的な記述がないため、うつ症状が悪化していると判断する根拠が不足しています。診察後の状況だけでこの結論を導くのは早計です。正しくは:患者が気分が落ち込む、意欲がない、引きこもりがちになるなどの具体的な症状の悪化を訴えている場合に適切です。選びやすい理由:精神科領域の患者であれば、うつ症状の悪化は常に懸念されるべき事柄であるため、選びたくなるかもしれません。混同注意:一過性の気分の落ち込みや疲労感と、うつ病の症状悪化を混同しやすいです。症状の継続性や他の症状の有無が重要です。
- 3. Aさんには短時間型の睡眠薬が処方されていますが、短時間型は翌朝に効果が残りにくく、また睡眠薬の残存効果で下痢が起こることは考えにくいです。受診から5日後の気分不良と下痢は、SSRIの服用開始初期にみられる消化器症状と考えられます。正しくは:睡眠薬の残存効果では、翌朝の眠気やふらつきが問題になります。選びやすい理由:日中の眠気や倦怠感がある場合、一般的に睡眠薬の持ち越し効果を疑うことはあるため、その知識に引きずられる可能性があります。混同注意:抗うつ薬の副作用による眠気と混同しやすいですが、薬剤の種類と服薬状況によってアセスメントは大きく異なります。
- 4. 正解。元の問題文がSSRIに関連する情報を含んでおり、その文脈において副作用をアセスメントすることが求められています。SSRIは吐き気、下痢、便秘、眠気、頭痛などの消化器症状や神経症状の副作用を起こしやすい薬剤です。受診後の状況がこれらの副作用と合致する場合、適切なアセスメントとなります。正しくは:特になし。正答です。混同注意:抗うつ薬以外の薬剤の副作用や、病気そのものの症状と混同しないよう注意が必要です。
国試ポイント
抗うつ薬(特にSSRI)の主な副作用と、それに対する看護師のアセスメント能力が問われます。薬物療法の開始時や用量変更時にどのような症状に注意すべきか、具体的な知識が求められます。
混同注意
SSRIの副作用と、病状の悪化、他の薬物の副作用、または単なる体調不良を混同しやすいです。特に消化器症状や精神症状は、病状とも重なることがあるため、薬剤の開始時期や他の症状の有無から判断する力が重要になります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、患者の服用している薬剤の種類、服用開始時期、具体的な症状の種類と発現時期に注目してアセスメントを行います。特に抗うつ薬の副作用として「初期に起こりやすい症状」と「長期服用で起こりやすい症状」を区別することも重要です。
関連知識
SSRIの主な種類と作用機序、服用開始初期に現れやすい副作用、副作用への対処法(例:少量から開始、内服時間指導)、セロトニン症候群の症状と対応。また、他の抗うつ薬(SNRI、三環系抗うつ薬など)との副作用の違いも押さえておく必要があります。