Aさん(75歳、女性)は、脂質異常症と高血圧症で通院中で、定期受診のため、外来待合室で順番を待っていた。Aさんは、待合室の雑誌を取ろうと立ち上がり、歩こうとしたところ、右足が思うように動かず引きずって歩いた。外来看護師が声をかけると、Aさんは「らいじょうぶ」と返答したが、ろれつが回らなかった。 この時のAさんの症状はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
構音障害は、発声器官(舌、口唇、軟口蓋、喉頭など)の運動麻痺や協調運動障害により、音を作る能力(構音)が障害される状態です。Aさんは脳梗塞による右片麻痺があり、「舌や口唇の動きが不自由なため、言葉がはっきりしない」とあることから、発声器官の運動障害に起因する構音の不明瞭さが示唆され、構音障害の典型的な症状と一致します。
選択肢ごとの解説
- 1. 痙縮は、中枢神経系の損傷により起こる筋肉の異常な緊張亢進で、関節可動域の制限や肢位異常の原因となるが、直接的に「言葉がはっきりしない」といった構音の問題を指すものではない。正しくは:痙縮は筋肉の過緊張を指す用語であり、言語機能障害とは異なる。Aさんの右片麻痺の原因となる症状の一つである可能性はあるが、問題文の「言葉がはっきりしない」症状そのものではない。選びやすい理由:脳梗塞後の片麻痺患者に高頻度に見られる症状であり、漠然と脳梗塞後の症状として選びやすい。混同注意:痙直、筋強剛など、筋肉の異常な緊張状態を指す用語全般。
- 2. 失語は、大脳の言語中枢の損傷により、言語の理解、表出、読み書きなどが全般的に障害される状態である。Aさんは「話すことはできるものの」とあり、言語理解や語彙選択に問題があるとは記述されていないため、失語ではない可能性が高い。正しくは:失語は、言語の理解や表現そのものが障害される状態であり、発音の不明瞭さのみを指すものではない。Aさんが話せること、そして舌・口唇の不自由が原因と明記されていることから、失語ではない。選びやすい理由:脳梗塞後に言語障害がある場合、失語症をまず想起しやすいため。混同注意:構音障害(発音の問題)と失語(言語理解・表現の問題)との混同。
- 3. 正解。脳梗塞による右片麻痺が舌や口唇の動きの不自由を引き起こし、それが原因で「言葉がはっきりしない」状態は、構音に必要な器官の運動障害によるものであり、構音障害の定義に完全に合致する。選びやすい理由:問題文の記述と症状が直接的に結びつくため。混同注意:失語症。
- 4. パーキンソニズムは、パーキンソン病に見られるような安静時振戦、筋強剛、寡動、姿勢反射障害などの運動症状群を指す。脳梗塞によって二次的にパーキンソニズム様の症状が出現することもあるが、Aさんの「舌や口唇の動きが不自由なため、言葉がはっきりしない」という記述は、パーキンソニズムの主症状を直接的に表すものではない。パーキンソニズムによる構音障害(構音の単調さ、小声など)はありうるが、まず『構音障害』がより直接的な症状名となる。正しくは:パーキンソニズムは、特定の神経変性疾患や薬剤などによって引き起こされる運動症状の複合体であり、脳梗塞後に直接的に「舌や口唇の動きが不自由なため、言葉がはっきりしない」と表現されることは稀である。選びやすい理由:脳疾患による運動障害の一つとして漠然と連想されやすい。パーキンソン病でも構音障害が見られるため、混同しやすい。混同注意:脳梗塞後の他の運動障害、パーキンソン病。
国試ポイント
脳血管疾患による片麻痺とそれに伴う症状、特に言語障害の種類(構音障害と失語)を区別して理解しているかが問われる。身体的な麻痺が構音に与える影響を理解することが重要である。
混同注意
構音障害と失語は混同しやすい。構音障害は言葉の『発音』が困難になるもので、言語理解や語彙選択は保たれる。失語は言語の『理解』や『表現』全般(聴く、話す、読む、書く)が障害されるもので、発音の明瞭さとは直接関係しない。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、「舌や口唇の動きが不自由」「言葉がはっきりしない」といった発声器官の運動に関連する表現に着目し、言語理解や語彙選択の困難さに言及がなければ構音障害と判断する。
関連知識
脳梗塞による麻痺は、脳の損傷部位によって多岐にわたる症状を呈する。片麻痺の原因としては、皮質脊髄路の障害が一般的である。構音障害は、錐体路障害や小脳障害、末梢神経障害などによっても生じうる。失語症には、ブローカ失語(運動性失語)やウェルニッケ失語(感覚性失語)など多様な病型がある。