意思決定が困難な成人患者の代理意思決定で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
意思決定能力がない患者の代理意思決定においては、患者が意思決定能力を持っていたらどのような選択をしたであろうか、という「推定的判断」が倫理的な原則として最も重視されます。これは患者の過去の言動、価値観、信念、人間関係などを総合的に考慮し、患者の自己決定権を最大限に尊重しようとするものです。
選択肢ごとの解説
- 1. 代理意思決定者を医療者が一方的に指名することは適切ではありません。患者の意思が不明確な場合でも、家族や信頼できる関係者との協議を通じて、患者の最善の利益を考慮し、可能な限り患者の意思を尊重する形で決定されるべきです。正しくは:代理意思決定者は、患者が事前に指名していた人(例:任意後見人、医療代理人)がいればその人、いなければ家族など患者との関係性が深く、患者の意思を最もよく理解していると推定される人が担うべきです。医療者はそのプロセスを支援しますが、指名権を持つわけではありません。選びやすい理由:緊急時など迅速な判断が求められる状況では、医療者が主導的な役割を果たす必要があると誤解されがちです。混同注意:患者の法的代理人と、倫理的な代理意思決定者の役割が混同されやすいです。医療者が法的に指名することは基本的にありません。
- 2. 正解。代理意思決定の最も重要な原則は、「推定的判断(Substituted Judgment)」です。これは、患者がもし意思決定能力を持っていたらどのように判断したかを、患者のこれまでの言動、価値観、信念、人間関係などから推測し、それを基に判断を行うという考え方です。患者の自己決定権を最大限に尊重するアプローチです。
- 3. 患者の状態や医学的状況、または患者の意思に関する新たな情報が得られた場合など、状況に応じて代理意思決定の内容は再評価・変更される可能性があります。特に、患者の最善の利益を継続的に追求するためには、柔軟な対応が求められます。正しくは:代理意思決定の内容は、患者の状況変化や新たな情報に基づいて、再検討し変更することが可能です。特に、患者の最善の利益を追求する観点から、柔軟な対応が重要です。選びやすい理由:医療の現場では、一度方針が決定されるとそれを変更することが難しいというイメージから、変更不可であると誤解されることがあります。混同注意:医療計画や治療方針は変更が難しいという認識と混同されやすいですが、倫理的な意思決定は常に柔軟性を持つべきです。
- 4. 患者の意思決定能力が失われた際、法的拘束力のある書類(例:事前指示書、任意後見契約)で指定された人が最優先されます。しかし、そのような指定がない場合、家族以外であっても、患者と長期にわたり密接な関係にあり、患者の価値観や意思を最もよく理解している親しい友人が代理意思決定者となり得る場合があります。重要なのは、患者の意思を最も適切に代弁できるか、という点です。正しくは:患者の家族だけでなく、患者と非常に親しい関係にあり、患者の意思や価値観をよく理解している友人も、状況によっては代理意思決定者となり得ます。重要なのは、患者の意向を最も適切に推定し、代弁できる人物であることです。選びやすい理由:日本の法律では、通常、家族が代理人としての役割を担うことが多いという慣習から、友人は対象外だと誤解されやすいです。混同注意:法的な続柄のみを重視する考え方と、患者の真の意思を尊重するという倫理的な視点が混同されやすいです。
国試ポイント
成人患者の代理意思決定における倫理的原則、特に「推定的判断」の概念と、その実践における考慮事項(誰が、どのように決定するか、決定の柔軟性)が問われています。単なる法的知識だけでなく、倫理的な思考が求められる問題です。
混同注意
「最善の利益判断(Best Interest Standard)」と混同されやすいですが、推定的判断が優先されます。最善の利益判断は、患者の意思を推定できない場合に、客観的に患者にとって何が最善かを医療者が判断するものです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、「患者の意思が不明な場合の判断基準」「代理意思決定者の選定順位」「倫理委員会や医療メディエーションの役割」などが問われる可能性があります。
関連知識
インフォームド・コンセントの原則、事前指示書(リビングウィル)の法的・倫理的意義、患者の自己決定権、医療倫理の四原則(自律尊重、無危害、善行、正義)