Aさん(38歳、男性、会社員)。両親と3人暮らし。25歳のころに双極性障害と診断された。3か月前から気分が落ち込み夜も眠れず、食欲もなくなり仕事を休むことが多くなってきた。無力感を感じるようになり、休職して精神科病棟に任意入院した。入院後は1日中ベッドで横になって過ごし、他の患者との交流もみられない。看護師が話しかけても簡単な返事をするだけで無表情である。食事は病室で摂取しており、摂取量は少ない。 入院後4週が経過した。昨日は、午前中ホールに1回出てきたが、すぐに病室に戻ってしまった。今朝、看護師がホールに出てきたAさんに「おはようございます」と声を掛けたところ、「おはよう」と答えただけで病室に戻ってしまった。夕方には他の患者とも会話をしたり、一緒にテレビを見たりするようになった。看護師が気分について尋ねると「まだ死にたい気持ちが残っている」と話した。このときのAさんの状態のアセスメントとして正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・4番
解説
患者Aさんは午前中に共同スペースからすぐに病室に戻る行動が見られる一方で、夕方には他の患者と会話したりテレビを見たりするなど、一日の中で活動レベルに変化が見られます。また、行動面では他者との交流が見られるようになっても、気分については「まだ死にたい気持ちが残っている」と打ち明けており、行動の改善と感情の改善に時間差が生じていることが示唆されます。これはうつ病からの回復期によく見られる特徴であり、気分の日内変動や、行動が先行し感情が後から追いつくという回復過程を示しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者Aさんは午前中に共同スペースからすぐに病室に戻る行動が見られており、一日を通して「非常に活動的」とは言えません。夕方には活動的になるものの、午前中の様子からは活動的とは評価できません。正しくは:午前中は活動的ではないが、夕方には活動的になるなど、活動性に変動が見られる。選びやすい理由:夕方には他の患者と会話したりテレビを見たりするなど、活動的な側面が見られるため、その部分だけに着目すると選びやすい可能性があります。混同注意:一時的な活動性の亢進と、継続的な高い活動レベル。
- 2. 正解。患者Aさんは午前中には共同スペースからすぐに病室に戻るが、夕方には他の患者と会話したりテレビを見たりするなど、一日の中で活動レベルや社交性に変動が見られます。これはうつ病患者によく見られる気分の日内変動を示唆しています。選びやすい理由:問題文に明記された行動の変化がこの選択肢を強く支持しているため。混同注意:気分変動そのものと、その日内変動という具体的な時間的特徴。
- 3. 患者Aさんが周囲の注目を集めたいと考えているという直接的な情報や行動の根拠は問題文からは読み取れません。むしろ、午前中に共同スペースから戻る行動や短く返事をする様子からは、他者との交流を避ける傾向も見られます。正しくは:注目を集めたいというよりは、気分が沈んでいる状態にある。選びやすい理由:気分障害の患者が他者の関心を引こうとすることがあるという一般知識から連想される可能性があります。混同注意:気分障害における行動の変化と、注目希求行動。
- 4. 正解。患者Aさんは夕方には他の患者と会話したりテレビを見たりする行動改善が見られる一方で、看護師には「まだ死にたい気持ちが残っている」と打ち明けており、感情の改善は行動の改善に追いついていないことがわかります。これはうつ病の回復期によく見られる特徴です。選びやすい理由:行動と感情の乖離はうつ病の回復過程で重要なポイントであり、問題文の記述がこの特徴を明確に示しているため。混同注意:行動の変化と感情の変化が常に並行して起こるという誤解。
- 5. 看護師の「おはようございます」という声かけに対し、Aさんは「おはよう」と短く返事をしています。この返事やその後の行動からは、看護師に怒りを感じているという直接的な兆候は読み取れません。むしろ、気分が沈んでいる状態での反応と考えるのが自然です。正しくは:看護師に怒りを感じているというよりも、気分が沈んでいるために簡潔な返事になっている。選びやすい理由:短く返事をしてすぐに戻るという行動を、不快感や怒りとして解釈してしまう可能性があります。混同注意:抑うつ状態におけるコミュニケーションの減少や簡潔化と、怒りや敵意の表現。
国試ポイント
うつ病患者の回復過程における気分の日内変動と、行動改善と感情改善の乖離を理解すること。
混同注意
単なる気分の落ち込みと、うつ病の日内変動や回復期における感情と行動の乖離。一過性の感情表現と、病状としての気分変動。
次に同じ論点が出たら
患者の行動の変化と、本人が語る感情の変化に乖離があるか。また、一日のうちで活動性や気分に波があるかを確認する。
関連知識
うつ病の症状(抑うつ気分、興味・喜びの喪失、意欲低下、不眠・過眠、食欲不振・過食、倦怠感、精神運動制止または焦燥、集中力低下、死に関する思考など)、うつ病の回復期における特徴(行動改善が感情改善に先行しやすい、自責感が残りやすい、日内変動が認められる)。