Aさん(33歳、初産婦、会社員)は夫と2人で暮らしている。妊娠28週5日、夕方から下腹部に生理痛のような痛みを感じ、少量の性器出血があったため来院した。来院時、子宮口2cm開大、未破水、8分おきに20秒持続する子宮収縮があり、切迫早産と診断された。子宮収縮抑制薬(リトドリン塩酸塩)の点滴静脈内注射と安静による治療が開始された。 切迫早産の症状がなくなり、Aさんは妊娠35週0日で退院した。妊娠36週0日に妊婦健康診査のために来院した。ノンストレステスト〈NST〉を実施中に、「気分が悪い」とナースコールがあり看護師が訪れると、Aさんは仰臥位になっていた。Aさんへの対応で看護師が最初に行うのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第112回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
妊娠後期に妊婦が仰臥位になると、増大した子宮が下大静脈を圧迫し、静脈還流が低下して心拍出量が減少することがあります。これにより、血圧が低下し、脳血流が減少することで、悪心、嘔吐、めまいなどの症状(仰臥位低血圧症候群)が出現します。左側臥位に体位変換することで、子宮による下大静脈の圧迫が解除され、静脈還流と心拍出量が回復し、症状が改善する可能性が高いため、これが最初の対応として最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 医師への報告は重要ですが、仰臥位低血圧症候群の可能性がある場合、まずは体位変換による症状改善を図ることが優先されます。医師への報告は体位変換後、または症状が改善しない場合に行います。正しくは:左側臥位へ体位を変えた後、症状の改善がなければ医師へ報告する。選びやすい理由:気分不良は緊急性が高く、医療者として医師への報告が重要だと考えやすいから。混同注意:一般的な急変時の報告手順と、仰臥位低血圧症候群の初期対応の優先順位。
- 2. 血圧測定は病態把握のために必要な情報ですが、体位変換によって症状が改善する可能性が高い状況では、まず原因を除去する体位変換が優先されます。測定に時間を要する間に症状が悪化する可能性もあります。正しくは:左側臥位へ体位を変えた後、血圧を測定し症状の改善を確認する。選びやすい理由:気分不良の訴えがあれば、バイタルサインの確認が重要だと考えやすいから。混同注意:一般的な急変時のバイタルサイン測定の重要性と、仰臥位低血圧症候群の初期対応の優先順位。
- 3. 正解。増大した子宮が下大静脈を圧迫することによる仰臥位低血圧症候群の可能性が高く、左側臥位にすることで圧迫が解除され、静脈還流が改善し症状が改善するため、これが最初にとるべき対応として適切です。選びやすい理由:妊婦特有の病態とその対応を理解している場合に適切に選択できる。
- 4. 酸素吸入は呼吸状態の改善や組織の酸素化を目的としますが、この状況での気分不良の原因は循環動態の変化(静脈還流の低下)にある可能性が高く、直接的な原因除去にはなりません。体位変換の方が優先されます。正しくは:左側臥位へ体位を変え、症状が改善しない場合や低酸素状態が疑われる場合に酸素吸入を検討する。選びやすい理由:気分不良や意識レベル低下が疑われる場合に、呼吸循環管理として酸素吸入を考慮しがちだから。混同注意:一般的な呼吸困難やショック時の対応と、仰臥位低血圧症候群の初期対応の優先順位。
国試ポイント
妊娠後期の仰臥位低血圧症候群の病態と初期対応を理解しているか。
混同注意
仰臥位低血圧症候群と他の急変時の初期対応(例:心肺停止時の体位、出血性ショック時の体位)と混同しない。
次に同じ論点が出たら
妊婦の気分不良や意識レベル低下が仰臥位で発生した場合、まず仰臥位低血圧症候群を疑い、体位変換(左側臥位)が最初の対応として適切であると判断する。
関連知識
仰臥位低血圧症候群は、妊娠20週以降、特に妊娠後期にみられやすい。症状は軽度のめまいから意識消失まで多岐にわたる。予防のためにも、妊娠後期には仰臥位を避けるよう指導し、休息時は側臥位を勧める。