Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。小学校の教員を定年退職後、書道教室に月2回、体操教室に月1回通っている。20年前に高血圧症と診断され、月に1回かかりつけの病院を受診し、内服治療をしている。6か月前から、Aさんは病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れることがあり、かかりつけの医師に相談した。Aさんは認知症専門医を紹介され、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉18点で、軽度のAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断された。 診断から2か月後、かかりつけの病院の看護師にAさんは「50年以上住んでいるこの土地で、できるだけ他人の迷惑にならず生活を続けたいと思って貯金もしてきました。私は軽い認知症だと言われたのですが、これからも自分でお金の管理ができるか心配です。どうしたらよいのでしょうか。私が使えるサービスがあれば知りたいです」と話した。Aさんが利用できるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
日常生活自立支援事業は、認知症などで判断能力が不十分な方が、地域で自立した生活を送ることを支援するため、福祉サービスの利用に関する援助や、預貯金の出し入れ、公共料金の支払いなどの金銭管理に関する援助を行う制度です。Aさんは軽度認知症と診断され、今後のお金の管理に不安を感じているため、この事業がAさんのニーズに最も直接的に対応できると考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 生活保護制度は、経済的に困窮し、最低限度の生活を維持できない場合に適用される制度です。Aさんは貯蓄があること、またお金の管理に不安があるものの、直ちに経済的困窮状態にあるわけではないため、この時点での利用対象とはなりません。正しくは:経済的な困窮状態にあり、他の利用し得る資産や能力、扶養義務者の援助では最低限度の生活を維持できない場合に利用が検討されます。選びやすい理由:お金の管理に関する不安から、漠然と経済的支援を求める制度として誤解される可能性があります。混同注意:成年後見制度や日常生活自立支援事業など、金銭管理に関連する他の制度と混同する可能性があります。
- 2. 地域生活支援事業は、障害者総合支援法に基づき、市町村が地域の実情に応じて行う事業で、障害者が地域で自立した生活を送るための支援を目的としています。Aさんの現在の状況(軽度認知症による金銭管理の不安)は、この事業の直接的な対象とは異なります。正しくは:障害者手帳の交付を受けている方などが、地域で生活するための相談支援や移動支援、日中活動の場などを利用する際に活用されます。選びやすい理由:「地域で生活を続けたい」というAさんの希望と、「地域生活支援」という言葉の響きから、関連があるように感じてしまうかもしれません。混同注意:高齢者福祉サービスや介護保険サービスなど、高齢者向けの地域支援サービスと混同しやすいです。
- 3. 後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者(または一定の障害を持つ65歳以上の高齢者)を対象とした医療保険制度であり、医療費の自己負担割合などを定めています。Aさんが心配している金銭管理の支援とは直接関係ありません。正しくは:75歳以上の高齢者が医療サービスを受ける際の費用負担に関する制度です。選びやすい理由:Aさんが高齢であることから、高齢者向けの制度として漠然と選択してしまう可能性があります。混同注意:介護保険制度や国民健康保険など、他の高齢者向け制度や医療関連制度と混同する可能性があります。
- 4. 正解。日常生活自立支援事業は、認知症などで判断能力が不十分な方が、地域で安心して自立した生活を送れるよう、福祉サービスの利用援助や金銭管理の援助などを行う事業です。Aさんの「これからも自分でお金の管理ができるか心配」「使えるサービスを知りたい」という相談内容に合致しており、最も適切なサービスです。混同注意:成年後見制度と混同しやすいですが、成年後見制度が家庭裁判所の審判を要するのに対し、日常生活自立支援事業は契約に基づいて行われる点が異なります。
国試ポイント
高齢者や認知症患者が、判断能力の低下に伴い生じる日常生活上の課題(特に金銭管理)に対して、どのような公的支援サービスが利用できるかを理解しているか問う問題です。各制度の目的と対象を正確に把握している必要があります。
混同注意
成年後見制度(任意後見制度を含む)と混同しやすいですが、日常生活自立支援事業は判断能力の低下が軽度な段階から利用可能で、契約に基づいて支援が行われる点が異なります。成年後見制度は家庭裁判所の審判が必要で、より広範な財産管理や身上監護を行う制度です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、高齢者の金銭管理に関する不安や判断能力の低下が見られるケースで、どの支援制度が最も適切かを判断するためには、まず各制度の対象者、サービス内容、利用開始の条件(例:裁判所の関与の有無)を正確に理解しているかを問われます。特に、判断能力の低下レベルに応じた支援の違いに注目すると良いでしょう。
関連知識
成年後見制度(法定後見・任意後見)、地域包括支援センターの役割、介護保険制度のサービス内容、各種社会福祉制度の目的と対象。