Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。小学校の教員を定年退職後、書道教室に月2回、体操教室に月1回通っている。20年前に高血圧症と診断され、月に1回かかりつけの病院を受診し、内服治療をしている。6か月前から、Aさんは病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れることがあり、かかりつけの医師に相談した。Aさんは認知症専門医を紹介され、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉18点で、軽度のAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断された。 Aさんに出現している認知機能障害はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
近時記憶障害は、新しい情報を記憶したり、最近の出来事を思い出したりする能力の低下を指します。これは認知症で最も早期かつ頻繁に観察される認知機能障害であり、認知機能障害の典型的な表現です。他の選択肢は、認知症に伴う周辺症状や高次脳機能障害の一部ではありますが、最も基本的な認知機能障害としては近時記憶障害が適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 脱抑制は、感情や行動の制御が困難になる状態であり、前頭葉機能障害に関連することが多いです。認知機能障害の一側面ですが、ここでは近時記憶障害の方がより直接的な表現です。正しくは:感情や行動の制御困難選びやすい理由:認知症でみられる行動心理症状(BPSD)の一つであるため、認知機能障害と混同しやすい。混同注意:実行機能障害や社会性認知の障害と混同しやすい。
- 2. 正解。近時記憶障害は、新しい情報を覚えることが難しい、あるいは最近の出来事を思い出せない状態を指し、Alzheimer〈アルツハイマー〉型認知症の初期から目立つ中核症状です。Aさんは病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れたりしており、近時記憶障害が出現していると考えられます。
- 3. 実行機能障害は、計画を立てる、問題を解決する、複数のタスクをこなすといった高次脳機能の低下を指します。認知症で出現しますが、近時記憶障害よりも複雑な認知プロセスに関連します。正しくは:計画立案や問題解決能力の低下選びやすい理由:認知症で広く見られる症状であり、認知機能障害の主要な要素の一つであるため。混同注意:近時記憶障害や注意障害と混同しやすい。
- 4. 物盗られ妄想は、自分の物が盗まれたと信じ込む妄想であり、認知症に伴う精神病症状の一つです。これは認知機能障害そのものではなく、その結果生じやすい精神症状(BPSD)に分類されます。正しくは:自分の物が盗まれたと信じる妄想選びやすい理由:認知症の患者さんによく見られる症状であるため、認知機能障害と誤解されやすい。混同注意:認知機能障害(記憶障害など)そのものと、それによって引き起こされる周辺症状(BPSD)の区別がつきにくい。
国試ポイント
この問題は、認知症における基本的な認知機能障害と、それ以外の精神症状や高次脳機能障害との違いを理解しているかを問うものです。特に、記憶障害が認知症の中核症状であることを把握しているかが重要です。
混同注意
認知機能障害(記憶障害、実行機能障害、失語など)そのものと、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD:妄想、幻覚、脱抑制、徘徊など)との区別。これらは関連が深いですが、直接的に問われている「認知機能障害」とは異なります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず「認知機能障害」が具体的に何を指すのか(記憶、見当識、実行機能、失語、失認、失行など)を明確に理解しているかを確認します。次に、与えられた症状が直接的な認知機能の低下なのか、それとも認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)なのかを区別する視点が重要になります。
関連知識
認知症の診断基準(例:DSM-5、ICD-10)における認知機能障害の定義、認知症の主要な病型(アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症など)で現れる特徴的な認知機能障害。特に、アルツハイマー病における近時記憶障害の初期からの顕著な出現。