Aさん(21歳、女性、大学生)は半年ほど前から疲れやすさを自覚していた。その後、安静時にも息切れと動悸が出現するようになり、1か月前から所属するテニスサークルを休んでいる。数日前からは手が震えるようになり、学業にも支障が出てきた。頻繁に汗が出ると自覚しており、母親から「首が腫れている」と指摘され受診した。受診時は、身長160 cm、体重44 kgで半年前から6 kg減少している。体温37.5°C、呼吸数22/分、脈拍132/分、血圧152/70 mmHgであった。 AさんはBasedow〈バセドウ〉病と診断され抗甲状腺薬での治療が開始された。Aさんには、疾患を正しく理解し、定期受診や内服の自己管理が行えるよう指導が行われた。Aさんは「薬が必要だと分かったけれど、副作用が怖い」と訴えている。早めの受診が必要な副作用(有害事象)はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
抗甲状腺薬の重大な副作用として無顆粒球症があり、その初期症状として突然の発熱が挙げられます。無顆粒球症は免疫機能が低下し、重篤な感染症を引き起こす可能性があるため、早期の発見と対応が極めて重要です。したがって、発熱があった場合は速やかに医療機関を受診する必要があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 口渇は抗甲状腺薬の副作用としては一般的ではなく、また緊急性を要する症状でもありません。他の要因で生じる可能性も高く、薬の副作用として緊急性は低いと考えられます。正しくは:この症状だけで緊急受診は不要で、まずは水分補給など対症療法を試み、改善がなければ次回の受診時に相談する程度で良いでしょう。選びやすい理由:一般的な薬の副作用として口渇を想像する人もいるかもしれませんが、抗甲状腺薬に特異的な重篤な副作用ではありません。混同注意:甲状腺機能亢進症自体の症状として多飲が見られることがありますが、口渇は直接の副作用としては稀です。
- 2. 脱毛は抗甲状腺薬の副作用として報告されることがありますが、緊急性を要する症状ではありません。QOLに関わる問題ですが、即座の受診は不要です。正しくは:脱毛が気になる場合は、次回の定期受診時に医師や薬剤師に相談し、対処法について検討することになります。選びやすい理由:見た目の変化は患者にとって大きなストレスとなるため、早く受診すべきだと考えるかもしれませんが、医学的な緊急性はありません。混同注意:疾患活動性が高い時期にも脱毛が見られることがあり、薬の副作用と鑑別が難しい場合もありますが、いずれにせよ緊急性は低いです。
- 3. 正解。発熱は、抗甲状腺薬の重篤な副作用である無顆粒球症の初期症状である可能性があります。無顆粒球症は感染症に対する抵抗力が著しく低下し、生命を脅かす危険があるため、早期の診断と治療が必要です。正しくは:発熱を認めた場合は、速やかに医療機関を受診し、血液検査(白血球数、好中球数)を行う必要があります。選びやすい理由:一般的な風邪の症状と誤解しやすいですが、抗甲状腺薬を内服している患者においては、無顆粒球症の可能性を常に考慮する必要があります。混同注意:インフルエンザなど他の感染症による発熱との鑑別が必要ですが、まずは薬の副作用を疑い、医療機関を受診することが重要です。
- 4. 皮膚の掻痒感(かゆみ)は抗甲状腺薬の比較的よく見られる副作用の一つですが、通常は軽度であり、緊急性を要する症状ではありません。重度のアレルギー反応を示唆する場合もありますが、発疹や呼吸困難を伴わない単独のかゆみであれば緊急性は低いです。正しくは:軽度のかゆみであれば、まずは様子を見るか、市販薬で対処し、次回の定期受診時に相談します。発疹が広がる、かゆみが非常に強い、呼吸困難を伴うなどの場合は緊急受診を検討します。選びやすい理由:アレルギー反応の一種としてかゆみが挙げられるため、緊急性が高いと考えるかもしれませんが、多くの場合、すぐに命に関わることはありません。混同注意:甲状腺機能亢進症自体でも皮膚症状が見られることがあり、薬の副作用との区別が難しい場合がありますが、単独のかゆみであれば緊急性は低いです。
国試ポイント
抗甲状腺薬(特にチアマゾールやプロピルチオウラシル)の副作用に関する知識が問われています。特に、無顆粒球症や肝機能障害などの重篤な副作用の初期症状を理解し、患者指導に活かせるかどうかが重要です。症状の緊急性を判断する能力も求められます。
混同注意
一般的な風邪の症状と重篤な副作用の初期症状を混同しやすい。特に発熱は、様々な原因で起こるため、薬を内服している患者の訴えに対しては鑑別診断を適切に行うことが肝要です。
次に同じ論点が出たら
発熱以外の副作用(皮膚症状や脱毛など)が報告された場合でも、その程度や他の随伴症状の有無を確認し、緊急性に応じて受診を促すか、次回の定期受診時に相談するよう指導する判断が求められます。
関連知識
バセドウ病の病態、甲状腺機能亢進症の症状、抗甲状腺薬の種類と作用機序、その他の副作用(薬疹、肝機能障害、関節痛など)、副作用出現時の対応、患者への服薬指導の内容。