Aさん(21歳、女性、大学生)は半年ほど前から疲れやすさを自覚していた。その後、安静時にも息切れと動悸が出現するようになり、1か月前から所属するテニスサークルを休んでいる。数日前からは手が震えるようになり、学業にも支障が出てきた。頻繁に汗が出ると自覚しており、母親から「首が腫れている」と指摘され受診した。受診時は、身長160 cm、体重44 kgで半年前から6 kg減少している。体温37.5°C、呼吸数22/分、脈拍132/分、血圧152/70 mmHgであった。 2週後の外来受診でAさんは「Basedow〈バセドウ〉病を知るほど怖くなってきた。眼が出ることもあるって。最近、足がつることが多くてテニスもできていない。就職が決まったけど働くことができるのかしら。将来、結婚したり妊娠したりできるのかも心配」と思いを訴えた。看護師の返答で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
バセドウ病は適切な治療により症状が安定すれば、多くの患者が通常の社会生活や運動、妊娠・出産が可能です。Aさんは、テニスができないこと、就職や将来の結婚・妊娠に対する不安を訴えています。このような状況で「症状が安定すれば運動を再開できます」と伝えることは、治療が成功すれば元の生活に戻れるという希望を示し、患者の漠然とした不安を軽減する上で非常に適切です。看護師は、患者の抱える不安に対し、疾患の正しい理解と前向きな見通しを提供することが重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. バセドウ病の治療初期や活動期には安静が必要な場合もありますが、就職や活動の継続に不安を感じている患者に対して、一概に「自宅療養が不可欠」と伝えるのは不適切です。症状の程度や治療状況により異なります。患者の不安に対して、治療計画や回復の見込みを説明し、具体的なアドバイスを与えるべきです。正しくは:症状の程度に応じて、医師と相談しながら活動量を調整していきましょう、と伝える。選びやすい理由:症状が辛そうなので、安静が必要だと考えるかもしれない。混同注意:病状が安定していないと自宅療養が必要なケースがあるため、迷う可能性がある。
- 2. バセドウ病の代表的な合併症の一つに眼症(バセドウ病眼症)があり、眼球突出はその症状の一つです。そのため、「眼球が突出する心配はありません」と断言するのは事実と異なります。患者の不安を否定するのではなく、眼症の可能性、その予防や治療について正確な情報を提供する姿勢が求められます。正しくは:「眼症状が出る可能性はありますが、早期発見と適切な治療で進行を抑えられます」などと説明する。選びやすい理由:患者の不安を和らげようとして、否定的な情報を取り除こうとする。混同注意:眼症が必ずしも全員に発症するわけではないため、発症しないと誤解してしまいがち。
- 3. バセドウ病の女性患者が妊娠・出産することは可能です。治療により病状がコントロールされていれば、安全に妊娠・出産できるケースがほとんどです。時期や治療薬の選択に注意が必要ですが、一律に「避けるべき」と伝えるのは誤りであり、患者の将来設計に対する大きな誤解や不安を与えることになります。正しくは:「病状が安定していれば妊娠・出産は可能です。担当医と相談しながら計画を立てましょう」と伝える。選びやすい理由:甲状腺機能亢進症が妊娠に影響を及ぼすことを知っているため、避けるべきだと判断しそうになる。混同注意:妊娠中の甲状腺ホルモン管理の難しさから、リスクを過大評価してしまう可能性がある。
- 4. 正解。バセドウ病の症状がコントロールされ、甲状腺機能が正常化すれば、多くの患者は通常の生活や運動に戻ることができます。Aさんがテニスを中断していること、就職の不安、将来の結婚・妊娠について語っていることから、生活全般の不安が大きいと推察されます。この返答は、治療がうまくいけば元の生活に戻れるという希望を与え、患者の不安を軽減する上で適切です。具体的な活動再開の目安や注意点について、さらに情報提供を行うことが望ましいでしょう。
国試ポイント
バセドウ病の治療と生活指導、患者の精神的支援に関する知識、特に長期的な見通しとQOLへの配慮が問われています。患者の訴えから不安の根源を捉え、適切な情報提供で安心感を与えるコミュニケーション能力が重要です。
混同注意
各選択肢は患者の不安に寄り添っているように見えますが、医学的根拠に基づかない断定や否定は誤りです。特に、病気の予後や生活への影響に関する誤った情報は、患者にさらなる不安を与える可能性があるため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
この返答に加えて、具体的な治療スケジュールや、どのような状態になれば運動再開の検討が可能か、主治医と相談するタイミングなど、より詳細な情報を提供することで、患者はより具体的な見通しを持つことができるでしょう。また、就職や妊娠の不安についても、病状が安定すれば可能であることや、必要に応じて専門機関への相談を促すことも考えられます。
関連知識
バセドウ病の病態、主な症状(甲状腺機能亢進症状、眼症など)、治療法(薬物療法、アイソトープ療法、手術療法)、治療中の日常生活指導(安静度、食事、運動)、妊娠・出産との関連、精神的なケアの重要性。