Aさん(24歳、女性)は大学卒業後、一般企業に就職したが、何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。連絡せずに複数回の遅刻があったことを上司のBさんから強く注意され、うつ状態となったため精神科外来を受診したところ、強迫性障害と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。 選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉の内服を始めてから2か月が経過し、Aさんは外出中に鍵を閉め忘れたかもしれないという考えが強くなり、外出から予定より早く帰宅することがある。Aさんは「鍵を閉め忘れていないかの確認を減らしたい」と看護師に相談した。Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
強迫性障害の治療には、SSRIなどの薬物療法に加え、認知行動療法が有効とされています。認知行動療法では、不安や強迫観念を引き起こす状況(トリガー)と、それに対する行動(強迫行為)を具体的に分析し、それらのパターンを理解することが重要です。このプロセスを「行動分析」と呼びます。Aさんが鍵の閉め忘れが特に気になった状況の直前と直後を振り返ることで、どのような時に強迫観念が生じやすいのか、またその後にどのような強迫行為(早期帰宅など)に繋がっているのかをAさん自身が認識できるようになります。この認識は、曝露反応妨害法などの次の介入へと繋がる重要なステップとなります。
選択肢ごとの解説
- 1. 外出を控えることは、患者の行動範囲を制限し、問題の根本的な解決には繋がりません。むしろ、社会活動の機会を奪い、QOLを低下させる可能性があります。認知行動療法の観点からは、回避行動を促すことになり、症状の悪化につながりかねません。正しくは:鍵の閉め忘れに対する不安を軽減するための具体的な対処法を共に検討し、外出を継続できるよう支援します。選びやすい理由:一見すると不安の原因となる状況を避けることで、一時的に不安を軽減できるように思えるかもしれませんが、根本的な解決にはなりません。混同注意:不安を避けることが治療に繋がるという誤解。
- 2. 他者の付き添いは、患者の自立性を損ない、自己効力感を低下させる可能性があります。また、常に付き添いを得られるとは限らず、根本的な問題解決にはなりません。患者自身が不安に対処する力を養うことが重要です。正しくは:Aさん自身が不安を管理し、行動を調整できるようなスキルを身につける支援を行います。選びやすい理由:誰かに確認してもらうことで、鍵の閉め忘れの不安は一時的に解消されるように見えるかもしれません。混同注意:他者に依存することと、自己解決を促すことの区別。
- 3. 鍵の閉め忘れが気になる「根拠」を追求することは、強迫観念の患者にとって、その観念をさらに強化してしまう可能性があります。強迫性障害の患者は、すでにその根拠や意味を過剰に考えてしまっていることが多く、さらなる思考の深掘りは症状を悪化させる危険があります。治療では、思考の内容よりも、思考にどのように対処するかを学ぶことが重要です。正しくは:鍵の閉め忘れが気になる状況や、その時にどのような感情や行動が伴うかを具体的に振り返るよう促し、対処法を検討します。選びやすい理由:内省を促すことは一見すると有効に思えますが、強迫性障害の文脈では逆効果になることがあります。混同注意:一般的な不安への対処と強迫観念への対処の違い。
- 4. 正解。この対応は、認知行動療法における行動分析に基づいています。患者がどのような状況で不安を感じ、どのような行動をとるのかを具体的に把握することで、問題行動のトリガー(引き金)や維持因子を特定できます。これにより、不安を感じる状況を特定し、その状況下で別の対処行動を試みるための介入計画を立てる手助けとなります。患者自身が状況を客観的に観察し、パターンを認識することは、問題解決への第一歩となります。正しくは:この選択肢は適切であるため修正は不要です。選びやすい理由:他の選択肢も一見すると患者をサポートするように見えますが、強迫性障害の特性を踏まえるとこの選択肢が最も治療的です。混同注意:強迫観念への対処と、一般的な不安や抑うつへの対処を混同すること。
国試ポイント
強迫性障害の基本的な看護介入と認知行動療法の原則に関する理解が問われる問題です。強迫性障害患者への対応では、強迫行為を助長せず、患者が自力で不安に対処する力を養う支援が重要となります。特に、症状を引き起こす状況や行動パターンを客観的に把握し、それに基づいて介入を計画する視点が求められます。
混同注意
強迫観念の『内容』を深掘りすることと、強迫行為が起こる『状況』を分析することの違い。前者は症状を悪化させる可能性があるが、後者は治療的である。
次に同じ論点が出たら
状況の振り返りにより得られた情報に基づいて、不安階層表を作成し、曝露反応妨害法を導入することを検討する。
関連知識
強迫性障害の治療法(薬物療法:SSRI、認知行動療法:曝露反応妨害法など)、認知行動療法の基本原則、不安障害患者への看護、行動分析の概念。