Aさん(55歳、男性、会社員)は30年の喫煙歴がある。会社の健康診断で高血圧を指摘されて生活習慣の改善を勧められたが「週末にスポーツジムで運動するようになったけれど、仕事が忙しくてこれ以上生活を変える自信はありません」と述べた。Aさんの自己効力感を高める支援はどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・3番
解説
自己効力感とは、「自分がある状況において、必要な行動を成功裏に遂行できるという確信」を指します。Aさんの自己効力感を高めるためには、現在の努力を肯定的に評価し(選択肢1)、小さな成功体験を積み重ねられるように具体的な目標を共に設定すること(選択肢3)が有効です。これにより、Aさんは「自分にもできる」という自信を持つことができるようになります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。自己効力感を高めるためには、既に実践している行動や努力を認め、肯定的に評価することが重要です。これにより、Aさんは自分の行動が評価されていると感じ、次のステップへ進む意欲につながります。正しくは:Aさんの運動への取り組みを具体的に褒め、その努力が健康維持に役立っていることを伝える。選びやすい理由:すぐに次の行動を促したくなるが、まずは現行の努力を認めることが基本。混同注意:単に「褒める」だけでなく、その行動が持つ意味を伝える必要がある。
- 2. これはAさん自身の行動変容を促す支援ではなく、外部の環境に介入するものであり、自己効力感を直接高める支援ではありません。また、個人の状況に合わせて職場に介入することは、プライバシーや倫理的な問題も考慮する必要があります。正しくは:Aさんがストレス管理の方法を学び、仕事の負担を軽減する工夫を考えるように支援する。選びやすい理由:仕事の忙しさが生活習慣改善の障害となっているため、環境調整が有効に思えるかもしれない。混同注意:環境調整は重要だが、自己効力感の向上とは別の支援となる。
- 3. 正解。達成可能な具体的な目標を共同で設定することで、Aさんは「自分にもできる」という成功体験を積み重ねやすくなり、自己効力感が高まります。小さな成功が自信につながり、より大きな目標への挑戦意欲を育てます。正しくは:Aさんの現在の状況と意向をよく聞き、実現可能な範囲で具体的な行動目標を話し合って決める。選びやすい理由:大きな目標を設定して早期の改善を促したくなるが、挫折の原因となる。混同注意:「一緒に設定する」ことが重要で、看護師が一方的に目標を与えるのではない。
- 4. 「待つ」だけでは、Aさんの自己効力感を高めることには繋がりません。動機付けが低い状態であっても、具体的な支援や対話を通じて、Aさんの内発的な動機を引き出す働きかけが必要です。正しくは:Aさんの現状の困難に寄り添いつつ、生活習慣改善のメリットについて情報提供を行うなど、動機付けを高めるための対話を継続する。選びやすい理由:個人の意思を尊重する姿勢として一見正しいように思える。混同注意:行動変容のステージモデルにおいて、「待つ」だけでなく、ステージに応じた働きかけが必要。
- 5. リスクの説明は、Aさんの病識を高めることには繋がりますが、それだけで自己効力感が向上するとは限りません。むしろ、恐怖や不安を煽るだけで、行動を起こす自信を失わせてしまう可能性もあります。自己効力感は「できる」という感覚であり、リスクの強調とは異なります。正しくは:疾患リスクの説明にとどまらず、そのリスクを軽減するためにAさんができる具体的な行動と、その成功をサポートする姿勢を示す。選びやすい理由:健康教育の一環として、リスク説明は重要であるため、正しい選択肢と誤解しやすい。混同注意:リスク認知の向上と自己効力感の向上は異なる概念である。
国試ポイント
自己効力感の定義と、それを高めるための具体的な支援方法を理解しているかが問われます。特に、既にできていることの評価と、達成可能な目標設定の重要性を把握しておく必要があります。
混同注意
選択肢2(職場への介入)や選択肢5(リスクの説明)は、状況によっては必要な支援であるものの、直接的に自己効力感を高める方法とは異なります。これらと自己効力感向上のための直接的な支援を区別できるかがポイントです。
次に同じ論点が出たら
Aさんが目標を達成できた際に、どのようにその成功を強化し、次の目標設定へと繋げていくか。
関連知識
バンデューラの自己効力理論、ヘルスプロモーション、行動変容ステージモデル、動機づけ面接