Aさん(34歳、初産婦)は、夫(37歳、会社員)と2人暮らし。事務の仕事をしている。身長157 cm、非妊時体重54 kg。妊娠24週4日の妊婦健康診査時の体重58 kgで4週前から1.5 kg増加している。血圧128/88 mmHg。尿蛋白(±)、尿糖(-)。浮腫(±)。Hb 10 g/dL、Ht 30 %。子宮底長22.5 cm、腹囲84 cm。胎児推定体重700g。非妊時より白色の腟分泌物は多いが、搔痒感はない。 Aさんは夫に付き添われ、妊娠35週4日に妊婦健康診査を受けた。体重62 kg、血圧126/76 mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。浮腫(±)。子宮底長30 cm、腹囲88cm。Aさんは看護師に「膝の裏の血管が膨らんで、青く浮き出てきました。夕方になると足がだるくなり、夕食の準備のため立っているとつらくなります」と言う。Aさんへの指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4・5番
解説
妊娠後期には、子宮の増大により下大静脈が圧迫され、下肢の静脈還流が悪化することで、下肢静脈瘤や浮腫、だるさといった症状が出やすくなります。また、妊娠に伴うホルモン変化も血管壁の脆弱化に関与します。これらの症状に対する看護師の指導としては、静脈血のうっ滞を改善し、下肢への負担を軽減することが重要です。弾性ストッキングの着用は、下肢に外部から圧力をかけ、静脈還流を促進します。また、就寝時に下肢を挙上することで、重力を利用して静脈血の戻りを助け、症状を緩和することができます。これらは非薬物療法として推奨される一般的な対策です。
選択肢ごとの解説
- 1. 妊娠中の水分制限は脱水や便秘を招く可能性があり、適切ではありません。むしろ十分な水分摂取が推奨されます。正しくは:「水分はこまめに摂取し、脱水に注意しましょう」選びやすい理由:浮腫と混同して、水分摂取を控えるべきだと誤解する可能性がある。混同注意:病的な浮腫(妊娠高血圧症候群など)と、妊娠による生理的変化(静脈瘤の症状)を混同しやすい。
- 2. 妊娠後期の急激な体重減少は、胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性があります。適切な体重管理は重要ですが、この状況で「減らす」という指導は不適切です。正しくは:「妊娠中の適切な体重増加に努めましょう」選びやすい理由:体重が増えることで下肢への負担が増すという認識から、体重減少を促したくなるかもしれない。混同注意:妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病での体重管理と、静脈瘤に対する一般的な指導を混同しやすい。
- 3. ガードルは腹部を締め付けるため、血行を妨げたり、静脈瘤を悪化させる可能性があります。妊娠中は腹部を締め付けない衣類が推奨されます。正しくは:「締め付けの少ないゆったりとした衣類を選びましょう」選びやすい理由:下肢をサポートすることで症状が改善すると考えるが、ガードルは締め付けが強すぎる点で不適切。混同注意:弾性ストッキングとガードルを混同しやすい。弾性ストッキングは下肢の血流改善が目的だが、ガードルは体型補正が主な目的で、妊娠中には適さない。
- 4. 正解。弾性ストッキングは、下肢に段階的な圧力をかけることで静脈血のうっ滞を防ぎ、下肢の浮腫やだるさ、静脈瘤の悪化を軽減する効果があります。妊娠中の下肢静脈瘤の症状緩和に非常に有効な手段です。
- 5. 正解。足を高くして横になることで、重力によって下肢に滞留した静脈血が心臓に戻りやすくなり、下肢の浮腫やだるさ、静脈瘤の症状を緩和できます。特に夜間の症状緩和に有効です。
国試ポイント
妊娠中の生理的変化(下肢静脈瘤、浮腫、だるさ)とその症状緩和のための看護介入(生活指導)が問われています。特に、弾性ストッキングの適切な使用法や、重力を利用した体位の工夫など、基本的なケアの知識が重要です。
混同注意
病的な浮腫(妊娠高血圧症候群など)に対する指導と、妊娠に伴う生理的変化(静脈瘤)に対する指導を混同しないように注意が必要です。また、弾性ストッキングとガードルの違い、水分制限の可否などもよく問われるポイントです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合は、まず患者の症状が何に起因しているか(生理的変化か病的変化か)をアセスメントし、それに応じた適切な生活指導やケアを考えます。特に、下肢の循環改善を促す介入が選択肢にあるかどうかに着目します。
関連知識
妊娠中の下肢静脈瘤の発生メカニズム(子宮増大による下大静脈圧迫、プロゲステロンによる血管壁の弛緩)、弾性ストッキングの正しい選択と着用方法(着用時間、サイズ、着脱のタイミング)、就寝時のポジショニングの具体例(クッションの活用)、長時間立位・座位を避けることの重要性、適度な運動の推奨。