キューブラー・ロス, E.による死にゆく人の心理過程のなかで、肺癌と診断された人が、喫煙をやめることで病気をなかったことにできるのではないかと考える段階はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した死の受容過程における「取引」の段階では、患者は病気の進行を遅らせる、あるいは回復を願って、何らかの条件(例:生活習慣の改善、信仰への傾倒)と引き換えに、運命や高次の存在との交渉を試みます。この事例では、「タバコを完全にやめれば、病気が消えるかもしれない」と考えており、これは肺がんという診断と引き換えに自身の行動を変えることで好転を期待する「取引」の典型的な思考パターンです。
選択肢ごとの解説
- 1. 「怒り」の段階では、なぜ自分がこのような病気になったのか、不公平であると感じ、周囲の人々や医療従事者、あるいは運命に対して憤りや不満をぶつける心理状態です。この事例の「もしタバコを完全にやめれば…」という思考は怒りではなく、交渉の意図を含んでいます。正しくは:この事例は「怒り」ではなく「取引」です。怒りの段階であれば「なぜ私がこんな目に遭わなければならないのか!」といった感情表現が見られます。選びやすい理由:診断後の感情の不安定さから、怒りが先行すると考えるかもしれませんが、具体的な発言内容が交渉的であるため、怒りとは異なります。混同注意:否認、抑うつ
- 2. 「受容」の段階では、患者は死が避けられない事実であることを理解し、それを受け入れて心の準備を始める段階です。この事例では、まだ病気が消える可能性にすがっており、死を受け入れている状態ではありません。正しくは:この事例は「受容」ではなく「取引」です。受容の段階であれば「仕方ない、残された時間を大切にしよう」といった諦念と平静が見られます。選びやすい理由:最終段階であるため、どこかの段階でこれに行き着くという知識から、選択肢として考慮されるかもしれません。混同注意:取引、抑うつ
- 3. 正解。「取引」の段階では、患者は死を避けたい、あるいは病気の進行を遅らせたいという願いから、何らかの好条件と引き換えに運命や高次の存在と交渉しようとします。この事例の「もしタバコを完全にやめれば、この病気が消えてくれるかもしれない」という思考は、自身の行動改善を条件として病気の好転を願う交渉であり、取引の典型的な表現です。選びやすい理由:この段階は、患者が希望を捨てきれずに、何らかの行動や約束によって状況を好転させようとする心理が働くため、非常に分かりやすい事例です。混同注意:否認、抑うつ
- 4. 「否認」の段階では、患者は診断された病気の事実そのものを受け入れられず、「そんなはずはない」「誤診だ」と現実を否定する心理状態です。この事例では、診断された病気を認識した上で、その結果を変えようと交渉しているため、否認とは異なります。正しくは:この事例は「否認」ではなく「取引」です。否認の段階であれば「私が肺がんのはずがない、きっと間違いだ」といった反応が見られます。選びやすい理由:初期段階として否認があるため、最初の心理反応として選択しやすいかもしれません。しかし、具体的な発言内容が事実を否定するものではありません。混同注意:取引、怒り
- 5. 「抑うつ」の段階では、患者は病気の進行や喪失感を認識し、深い悲しみ、絶望感、無力感などを感じる心理状態です。この事例は、まだ病気が好転する可能性に期待し、交渉しようとしている段階であり、抑うつ的な絶望感とは異なります。正しくは:この事例は「抑うつ」ではなく「取引」です。抑うつの段階であれば「もう何をやっても無駄だ」「何もする気になれない」といった発言が見られます。選びやすい理由:がん告知後の精神的な落ち込みから、抑うつ状態を連想しやすいかもしれません。しかし、交渉的な思考は抑うつとは異なります。混同注意:取引、受容
国試ポイント
エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した死の受容過程の5段階(否認、怒り、取引、抑うつ、受容)とその特徴的な心理状態を理解し、具体的な事例と結びつけて判断できるようにすることが重要です。
混同注意
「否認」は診断された事実そのものを拒絶する段階であり、この事例のように「もし〜ならば」という条件付きの思考は取引の特徴です。また、「怒り」は不公平さへの感情の爆発であり、この事例の交渉的な思考とは異なります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、「もし〜ならば」という条件付きの交渉的な思考や、病気の進行を食い止めるために何らかの交換条件を提示する発言があったら「取引」の段階であると判断します。
関連知識
キューブラー・ロスのモデルは線形的に進行するとは限らず、段階を行ったり来たりすることや、全ての段階を経験しない患者もいることを理解しておく必要があります。また、死の受容過程は患者だけでなく、家族にも当てはまることがあります。各段階の理解は、医療従事者が患者や家族と適切に関わる上で不可欠な知識です。