Aさん(72歳、男性)は、2か月前に右中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した。本日、病院を退院し、介護老人保健施設に入所した。既往歴:1年前に前立腺癌のため腹腔鏡下前立腺全摘除術。身体所見:左上下肢に軽度のしびれがある。半側空間無視がある。構音障害はない。生活機能:改訂長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉26点、Barthel〈バーセル〉インデックス65点。 入所後3日、Aさんは入浴した。Aさんは自分で脱衣し、体を洗えたが、洗い残した部分を看護師が介助した。入浴後に看護師がAさんに服を手渡すと、Aさんは戸惑った表情で服を丸めたり広げたりしている。Aさんへの更衣援助で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Aさんが服を丸めたり広げたりしている状況から、服をどのように着れば良いか方向性が分からず困惑していると推測されます。このため、看護師が服を着やすい向きに整えて手渡すことが、Aさんがスムーズに着替えを進めるための最も直接的で適切な援助となります。患者の認知機能や理解度に応じた具体的なサポートが求められます。
選択肢ごとの解説
- 1. Aさんは服を丸めたり広げたりして困惑している状態であり、見守るだけでは混乱が解消されず、着替えが進まない可能性があります。具体的な援助が必要です。正しくは:具体的な援助を提供する。選びやすい理由:自立を促す意図はあるが、この状況では困難。混同注意:患者の自立支援と、困惑時の適切な介入のバランス。
- 2. 伸縮性のある衣類は着脱しやすいですが、Aさんが困惑しているのは服の着方自体にあり、素材を変えるだけでは根本的な解決にはなりません。着衣の方向性が分からないことが問題です。正しくは:着衣の方向性を明確にする援助を行う。選びやすい理由:着替えのしやすさに配慮した選択肢に見えるため。混同注意:着衣のしやすさに関する複数の要因(素材、デザイン、着方)。
- 3. 正解。Aさんは服を丸めたり広げたりしており、衣類をどのように着れば良いか分からず困惑している状態と推測されます。衣類を着やすい向き、つまり正しい上下前後が分かるように提示することで、Aさんは着替えに取り組みやすくなります。選びやすい理由:最も直接的かつ具体的な援助であり、患者の混乱の原因に対応している。混同注意:患者の認知機能の低下を考慮した援助の重要性。
- 4. ボタンをマジックテープに変えることは着脱の負担を軽減しますが、現在のAさんの困惑の原因はボタンの操作ではなく、服の向きや着方にあると考えられます。この時点では、より直接的な問題解決が優先されます。正しくは:着衣の方向性を明確にする援助を行う。選びやすい理由:患者のADLを考慮した改良策に見えるため。混同注意:着替えの困難さの原因が、操作性か、認知的なものか。
国試ポイント
認知症高齢者のADL援助における、患者の行動から状況を判断し、適切な援助を選択する能力が問われています。特に、患者の混乱の原因を正確に把握し、それに対応する具体的な介入が重要です。
混同注意
自立支援を意識して見守る選択肢や、着衣のしやすさを向上させるための工夫(素材やボタンの変更)も考えられますが、この状況では患者の「困惑」という具体的な行動から、着衣の方向性への援助が最も優先されます。
次に同じ論点が出たら
Aさんが着替えを始めた後も、途中で戸惑う様子があれば、必要に応じて次の動作を具体的に示唆する声かけや、動作の誘導を行うことが求められます。
関連知識
認知症患者のADL援助では、残存機能の活用を促しつつ、困難な部分には適切な声かけや具体的行動(例:手を添える、向きを整える)でサポートすることが基本です。また、患者のペースを尊重し、焦らせないことも重要です。