Aさん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉と診断された。 診察後、Aさんの両親は「親としてどうしたら良かったのでしょうか、私たちの育て方に問題があったのでしょうか」と外来看護師に話した。このときのAさんの両親への対応として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第110回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
ご両親はAさんの問題行動に対して自責の念を抱いており、精神的に不安定な状態です。この状況で看護師がとるべき最も適切な対応は、ご両親の感情を受け止め、共感し、彼らが抱える罪悪感を軽減することです。選択肢3は、ご両親の育て方に問題はないと明確に伝えることで、彼らの自己非難を和らげ、精神的なサポートを提供する効果があります。これは、精神的苦痛を抱える患者家族への基本的な看護的介入として重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 「Aさんは、育てにくいお子さんでしたね」という発言は、ご両親がすでに抱えている自責の念や自己評価の低さをさらに強めてしまう可能性があり、不適切です。ご両親の苦しみに寄り添うどころか、追い打ちをかけるような発言となります。正しくは:「Aさんの育てにくさについて、お困りのことがあればお話をお聞かせください」など、ご両親の感情を受け止める姿勢を示す。選びやすい理由:子どもが育てにくいと感じる親の気持ちに寄り添っているように聞こえるかもしれませんが、結果として親を責めるニュアンスになりかねません。混同注意:共感しているように聞こえるが、実際には親を否定的に評価している点。
- 2. 「職場の環境が原因だったのですね」という発言は、問題の原因を職場環境に限定し、ご両親の自責の念に対する直接的な答えになっていません。また、Aさんの問題が本当に職場環境のみに起因するか不明な段階で断定的な発言をすることは不適切であり、ご両親の抱える全体的な苦悩に対する配慮が欠けています。正しくは:「Aさんの現在の状況について、ご両親はどのようにお感じになっていますか」など、まずはご両親の認識や感情を聞くことから始める。選びやすい理由:問題の原因を特定しようとする姿勢や、Aさんの苦痛の原因を外部に求めようとする発言であるため、一見すると合理的または問題解決的であるように見えるかもしれません。混同注意:問題解決志向のコミュニケーションと、感情受容・共感のコミュニケーション。
- 3. 正解。ご両親は「私たちの育て方に問題があったのか」と自責の念を抱いています。この発言は、ご両親の育て方に問題はないと明確に否定することで、彼らの罪悪感を軽減し、心理的な安心感を提供します。これは、ご両親の感情を受け止め、共感し、精神的サポートを提供する最も適切な対応です。家族の苦痛を軽減し、ラポールを形成する上で極めて有効な介入です。選びやすい理由:ご両親の不安や自責の念に対して、直接的に否定して安心させようとするため。混同注意:単なる励ましではなく、相手の感情の背景にある思いを理解し、それを肯定的に受け止めること。
- 4. 「もっと早くAさんの問題に気づいていればよかったですね」という発言は、ご両親が抱える自責の念をさらに強め、後悔の感情を煽るものです。すでに苦悩しているご両親に対し、過去の行動を批判するようなニュアンスを与えるため、不適切な対応です。正しくは:「Aさんの問題について、今お気づきになったことや、心配されていることをお聞かせいただけますか」など、現在の感情や状況に焦点を当てる。選びやすい理由:「もっと早く気づいていれば」という親の自己非難の言葉を繰り返すことで、共感しているように見えるかもしれません。混同注意:共感と、相手の自己非難を助長する発言の区別。
国試ポイント
患者・家族への共感的対応と心理的サポートの提供方法。
混同注意
表面的な慰めと、根拠に基づいた心理的支援の区別。単なる同情ではなく、相手の感情を理解し、その感情を言語化して返すことで、相手に寄り添う姿勢を示すことが重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の患者家族の心理状況に対する問題が出た場合は、まず家族がどのような感情(不安、自責、怒り、悲しみなど)を抱いているかを読み取り、その感情を受容し、共感を示す選択肢、および家族の精神的負担を軽減する選択肢が最も適切であると判断する。
関連知識
ラポール形成、傾聴の姿勢、受容と共感の原則、家族看護における支援の段階(情報提供、感情の表出支援、意思決定支援など)。危機的状況にある家族への心理的介入。精神看護における治療的コミュニケーション。