Aさん(23歳、女性)。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院1か月後、手洗い行為は軽減してきた。Aさんはカーテンを閉め切って1人で過ごしていることが多いが、担当看護師や主治医とは治療についての話ができるようになってきた。Aさんは「薬を飲む以外にできることはありますか」と聞いてきた。このときのAさんに最も有効と考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Aさんは治療について対話できるようになり、「薬を飲む以外にできることはありますか」と自発的に質問しており、症状の改善に対して意欲的であることが示されています。強迫性障害の治療において、薬物療法と並んで最も有効性が確立されているのは認知行動療法、特に曝露反応妨害法です。この治療法は、患者が自身の強迫観念や強迫行為に能動的に取り組むことを促し、症状の直接的な軽減を目指します。Aさんの現在の積極的な姿勢は、認知行動療法に取り組む上で非常に有利な条件と考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 催眠療法は、特定の恐怖症や習慣的な行動の緩和に用いられることもありますが、強迫性障害の主要な治療法としては一般的ではなく、認知行動療法と比較して有効性のエビデンスが限定的です。また、Aさんの現在の状態(治療に関する対話が可能になっている)を考慮すると、より直接的なアプローチが適切と考えられます。正しくは:強迫性障害に対する確立された治療法ではありません。選びやすい理由:精神療法の一種であり、不安や特定の行動の改善に役立つイメージがあるため、選択肢として魅力的かもしれません。混同注意:認知行動療法や精神分析療法と混同されやすいですが、作用機序や治療目標が異なります。催眠は意識の変容を促しますが、強迫行為の根本原因や思考パターンに直接介入するものではありません。
- 2. 作業療法は、身体的・精神的な機能障害を持つ人が、日常生活動作や社会生活への参加を回復するための支援を目的とします。強迫性障害の患者さんに対しても、生活の質を高めるために有効な場合がありますが、Aさんが尋ねている「薬を飲む以外にできること」が、直接的に強迫観念や強迫行為を軽減する治療法を指していると考えると、作業療法は症状の根本的な改善を目的とするものではありません。正しくは:生活機能の向上に寄与するが、強迫症状の直接的な改善を目的とするものではありません。選びやすい理由:精神疾患のリハビリテーションの一環として広く用いられるため、有効な介入と誤解されやすいです。混同注意:精神科リハビリテーションの一環として強迫性障害の患者にも適用されることがありますが、強迫観念や強迫行為そのものに介入するものではなく、社会適応能力の向上を目指します。
- 3. 正解。Aさんは「薬を飲む以外にできることはありますか」と尋ねており、これは自らの症状に対して能動的に対処しようとする意欲の表れです。認知行動療法、特に曝露反応妨害法は、強迫性障害に対する最も有効な精神療法として確立されています。患者が強迫観念と向き合い、それによって引き起こされる不安を伴う行動(強迫行為)を行わないように訓練することで、症状の軽減を目指します。Aさんの現在の状態(治療に関する対話が可能)から、この療法に取り組む準備が整っていると考えられます。正しくは:強迫性障害に最も有効な精神療法であり、Aさんの能動的な姿勢に合致します。選びやすい理由:強迫性障害の第一選択の精神療法として知られており、適切な選択です。混同注意:精神分析療法や支持的精神療法と混同されることがありますが、認知行動療法は具体的な行動変容と認知の再構築に焦点を当てる点で異なります。特に強迫性障害では曝露反応妨害法が中心となります。
- 4. 就労移行支援は、精神障害やその他の障害を持つ人が一般企業への就職を目指す際に、就職に必要な知識やスキルを習得するためのサポートを提供するサービスです。これは社会復帰を支援する重要な制度ですが、Aさんが尋ねているのは「薬を飲む以外にできること」という、強迫性障害の症状そのものに対する治療的介入についてと考えられます。Aさんの現在の状況で最も有効なのは、症状の軽減に直接関わる治療法です。正しくは:社会復帰支援であり、強迫症状の直接的な治療ではありません。選びやすい理由:社会復帰を目指す上で重要な要素であり、長期的な視点で見れば患者の生活の質向上に寄与するため、魅力的に見えるかもしれません。混同注意:医療的介入と社会福祉的介入の区別が曖昧な場合に選択されやすいです。就労移行支援はあくまで社会復帰のためのサービスであり、症状を直接改善する治療ではありません。
国試ポイント
強迫性障害の主要な治療法に関する知識と、患者の病状や心理状態に応じた適切な介入を選択する能力が問われています。特に、患者が治療に前向きな姿勢を示している場合の最適なアプローチを理解しているかが重要です。
混同注意
精神疾患に対する様々な介入方法(薬物療法、精神療法、作業療法、社会福祉サービスなど)の適用範囲と目的を正確に理解していないと、選択肢を混同しやすいです。特に、症状の直接的な改善を目指す治療法と、生活機能の向上や社会復帰を支援するサービスとの区別が重要です。
次に同じ論点が出たら
認知行動療法を開始するにあたり、Aさんの具体的な強迫観念と強迫行為の内容を詳しくアセスメントし、治療目標をAさんと共有してラポール形成を進めます。曝露反応妨害法の手順や目標、期待される効果について具体的に説明し、Aさんの理解と同意を得た上で、段階的に治療計画を立てていく必要があります。
関連知識
強迫性障害(OCD)の診断基準(DSM-5)、薬物療法(SSRIなど)、精神療法(認知行動療法、曝露反応妨害法、認知再構成法)、家族療法、集団療法。