Aさん(73歳、女性)は1人で暮らしており、脳梗塞で入院した。Aさんは左半身に麻痺があり、認知機能障害はない。4点杖を使用して歩行が可能となり、住宅改修をして自宅に退院した。退院後は、降圧薬と抗血栓薬が処方され、服薬管理と健康管理の目的で訪問看護を週1回、調理と買い物代行の目的で訪問介護を週1回利用している。Aさんは「昨日、退院して初めて1人で買い物に行ったら転びそうになって、横にいた人に支えてもらったんです」と訪問看護師に話した。 このとき、訪問看護師が転倒予防のために収集する情報として最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下肢の筋力低下は、バランス能力の低下や歩行不安定性、段差を乗り越える能力の低下など、転倒の直接的な原因となるため、転倒予防において最も重要な情報の一つです。訪問看護師は、身体機能の評価を通じて転倒リスクを具体的に把握し、適切な介入計画を立てる必要があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 服用中の薬剤、特に鎮静作用のある薬や降圧薬などは、めまいやふらつき、起立性低血圧を引き起こし、転倒リスクを高める要因となります。しかし、身体機能の直接的な評価と比べると、間接的な情報であり「最も適切」とは言えません。正しくは:薬剤による副作用として、ふらつきやめまいなどの具体的な症状が出ていないか、またそれらが転倒につながるリスクが高いかを評価する情報として収集するべきです。筋力低下などの身体機能情報と合わせて判断します。選びやすい理由:多くの薬剤には副作用があり、特に高齢者では多剤併用による影響が大きいため、転倒との関連性を意識しやすい選択肢です。実際に、薬物療法は重要な転倒リスク要因の一つとされています。混同注意:転倒リスク評価項目の中に薬物療法が含まれることから、重要だと誤解しやすいです。しかし、身体機能の評価が転倒発生のより直接的な原因を特定する上で「最も適切」な情報となります。
- 2. 食事摂取量が不足すると低栄養となり、長期的に見ると筋力低下や全身倦怠感に繋がり、転倒リスクを高める可能性があります。しかし、これは間接的な影響であり、転倒の直接的な原因を評価する情報としては、筋力などの身体機能の評価がより適切です。正しくは:食事摂取状況を把握することは低栄養の早期発見に繋がり、結果として筋力低下を防ぐための介入に役立ちます。ただし、この情報単独ではなく、「低栄養による筋力低下の有無」や「体重変化」と合わせて評価するべきです。選びやすい理由:高齢者の栄養状態の重要性は広く認識されており、低栄養が体力低下に繋がりやすいことから、間接的に転倒リスクに影響すると考えやすいです。混同注意:栄養状態と活動能力や転倒リスクは関連が深いため、転倒予防の重要な情報だと捉えがちです。しかし、「最も適切」な情報という観点では、転倒に直結する身体機能の評価が優先されます。
- 3. 正解。下肢の筋力低下は、バランス能力の低下、歩行の不安定性、段差を乗り越えられないといった直接的な問題を引き起こし、転倒の最も主要な原因となります。そのため、転倒を予防するためには、筋力状態を正確に把握することが極めて重要です。右上下肢と特定しているのは、左右差の評価や全体的な身体能力を確認する上で具体的な指標となるためです。
- 4. 他者との交流頻度は、活動量や意欲、精神状態と関連し、社会活動の活発さを測る指標にはなりますが、転倒の直接的な原因を評価する情報としては適切ではありません。交流が少ないことで活動量が低下し、結果的に筋力低下を招く可能性はありますが、まずは直接的な身体機能の評価が優先されます。正しくは:交流頻度の低下が「閉じこもり」に繋がり、それによって身体活動量が減り、筋力低下やバランス能力の低下を引き起こしていないか、という観点で評価するべきです。選びやすい理由:社会的孤立や活動量の低下が高齢者の健康全般に悪影響を及ぼすという認識から、転倒予防にも間接的に関連すると考えやすいです。混同注意:社会的側面が生活習慣や身体活動に影響を与えることは事実ですが、転倒予防のための「最も適切」な直接的情報ではない点を見誤りやすいです。
国試ポイント
転倒予防のためのアセスメントにおいて、様々なリスク要因(身体機能、薬物、環境、精神状態など)の中から、特に「身体機能」に関する直接的かつ具体的な情報が最も重要であることを理解しているかを問う問題です。多岐にわたる要因の中から、プライオリティの高い情報を選択する判断力が求められます。
混同注意
薬の副作用(起立性低血圧、ふらつき)や栄養状態(低栄養による筋力低下)も転倒リスクに大きく関わるため、これらの情報も重要であると誤解しやすいです。しかし、これらは間接的な要因であり、筋力低下やバランス能力といった「身体機能そのもの」の評価が、転倒発生の直接的な引き金となるため、最も優先されるべき情報となります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、身体機能以外で転倒に「直接的」に関連する情報(例: 転倒の既往、歩行補助具の使用状況、ふらつきの自覚症状)が選択肢に含まれるかを判断軸とします。また、多職種連携(理学療法士、薬剤師など)の視点から、それぞれの専門職が収集すべき情報と看護師が収集すべき情報を区別する問題も考えられます。
関連知識
転倒リスク評価スケール(例: Morse Fall Scale, Hendrich II Fall Risk Model)では、転倒既往、続発性診断、歩行補助具、静脈内治療、歩行、精神状態などが評価項目として挙げられます。身体機能の評価は、筋力(特に下肢)、バランス能力、歩行能力、姿勢反射などが含まれます。環境要因(段差、滑りやすい床、照明など)や薬剤(向精神薬、降圧薬、利尿薬など)も重要な要素です。