Aさん(88歳、男性)は妻(82歳)と2人で暮らしている。息子2人は独立して生活している。要介護度は5で、エアマットレスを使用している。食事は妻の介助で1日1回ペースト食を食べているがむせることもあり、食事が全くとれない日もある。排泄はオムツを使用し、毎日訪問介護サービスを利用して、オムツ交換と陰部洗浄を受けている。訪問看護は週3回利用している。Aさんは妻が話しかけると返事はするが自発的な会話はない。着替えをするときに上肢を動かすと苦痛表情がある。 2か月後、Aさんは食事を口から食べることができなくなり、かかりつけの医師から家族へ、そろそろ看取りの時期であり、看取りの場所を決めるように説明があった。息子たちから「父が長年住んだ家で最期まで過ごさせてあげたいと母とも話していますが、母が1人でみるのは大変だと思い心配しています」と訪問看護師に話があった。このときの訪問看護師の対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
ご家族は在宅での看取りを希望しているものの、介護への不安を抱えています。訪問看護師は、この不安に対し、在宅での看取りを支えるための具体的な医療・介護サービス(訪問診療、訪問看護、居宅介護支援、介護保険サービスなど)の利用可能性や、緊急時の対応、多職種連携によるサポート体制について詳しく説明することが適切です。これにより、ご家族は安心して在宅での看取りを選択し、準備を進めることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。患者さんのご家族が在宅での看取りを希望しており、介護負担への不安を抱えている状況です。訪問看護師は、在宅での看取りを実現するために利用できる医療・介護サービス(訪問診療、訪問看護、居宅介護支援、ショートステイなど)や、緊急時の対応、経済的な支援など、具体的な支援体制を提示することで、ご家族の不安を軽減し、選択をサポートできます。これは、多職種連携による包括的な支援の調整役としての役割にも合致します。選びやすい理由:ご家族の不安に寄り添い、具体的な解決策やサポートの可能性を示すことが最も適切です。漠然とした不安に対し、具体的な情報提供は安心材料となります。混同注意:他の選択肢のような、一方的な情報提供や、専門外の決定に関わることは不適切です。
- 2. 終末期においては、血圧の低下は自然な経過の一部であり、必ずしも入院が必要とは限りません。このような説明は、ご家族の不安を不必要に煽り、在宅での看取りの希望を阻害する可能性があります。医療的な判断は医師が行い、訪問看護師は状態変化に応じた具体的な対応策や、状況に応じた再検討の可能性を伝えるべきです。正しくは:終末期における身体の変化や、それに対する在宅でのケア方法、そして必要に応じて医療介入が可能なことについて説明する。選びやすい理由:医療従事者として、起こりうる身体の変化を伝えることは重要に見えますが、終末期ケアにおいては、その情報がどのように受け止められ、ご家族の意思決定に影響するかを考慮する必要があります。混同注意:血圧低下は終末期によく見られる症状ですが、それを直ちに入院と結びつけるのは、終末期ケアの原則に反する場合がある。
- 3. 看取りの場所は、患者さんの状態やご家族の状況の変化に応じて、柔軟に変更できるべきです。一度決めたら変更できないと伝えることは、ご家族に不要なプレッシャーを与え、後々の選択肢を奪うことになります。患者さんやご家族の意向を尊重し、状況に応じた再検討の可能性を常に開いておくことが重要です。正しくは:患者さんやご家族の意向の変化、あるいは状態の変化に応じて、看取りの場所は再検討できることを説明する。選びやすい理由:一度決めたことを変更するのは大変だという現実的な視点から、このように伝えたくなるかもしれませんが、終末期ケアにおいては柔軟性が重要です。混同注意:看取りの場所は、あくまで患者さんと家族の意思決定に基づくものであり、状況の変化によって変更される可能性があることを理解する必要がある。
- 4. 治療方針の決定権は、基本的に患者さん本人またはその代理(ご家族)と医師にあります。訪問看護師は、多職種連携の一員として患者さんの状態やご家族の意向を医師に伝えたり、ケアプランの提案を行ったりしますが、最終的な治療方針を医師と共に「決定する」立場ではありません。医師の指示に基づきケアを提供し、患者さんの意思決定を支援することが役割です。正しくは:担当医と連携し、患者さんとご家族の意向を尊重しつつ、共同で適切なケアプランを検討・調整する。選びやすい理由:多職種連携の重要性を考えると、共同で何かを決めるという表現は適切に見えますが、治療方針の最終決定権は医師と患者側にあるという原則を忘れてはなりません。混同注意:訪問看護師はケアプランの立案には深く関わるが、根本的な治療方針の決定は医師の職務範囲である。
国試ポイント
終末期ケアにおける訪問看護師の役割、特に患者家族の意思決定支援と多職種連携、具体的な支援内容の提示能力が問われています。
混同注意
終末期における身体の変化や医療的介入の可能性を伝えることは重要ですが、その伝え方がご家族の意思決定に与える影響を考慮し、不安を不必要に煽らない配慮が必要です。また、専門職としての役割分担を理解しているかどうかも問われます。
次に同じ論点が出たら
ご家族が支援体制の説明を受けた後、具体的なサービス利用について相談を求めてきた場合、どのように情報提供や調整を行うか。
関連知識
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)、多職種連携、介護保険制度、終末期における症状緩和ケア、家族支援。