Aさん(88歳、男性)は妻(82歳)と2人で暮らしている。息子2人は独立して生活している。要介護度は5で、エアマットレスを使用している。食事は妻の介助で1日1回ペースト食を食べているがむせることもあり、食事が全くとれない日もある。排泄はオムツを使用し、毎日訪問介護サービスを利用して、オムツ交換と陰部洗浄を受けている。訪問看護は週3回利用している。Aさんは妻が話しかけると返事はするが自発的な会話はない。着替えをするときに上肢を動かすと苦痛表情がある。 Aさんは声をかけても返答したり目を開けたりすることもなく、穏やかな表情で眠っていることが多くなった。Aさんの妻は「夫は話しかけても何も答えてくれないので、どうしたらよいか分かりません」と訪問看護師に話した。このときの妻への声かけで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
意識レベルが低下している終末期の患者さんに対しては、五感の中で最後まで残存しやすいとされる触覚や聴覚を用いたコミュニケーションが重要です。特に触れることは、患者さんへの愛情表現であるとともに、家族が患者さんとつながり、心の整理をする上でも大切な行為となります。苦痛を伴わない優しい触れ合いは、患者さんにも安心感を与える可能性があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。意識レベルが低下している場合でも、触覚は比較的最後まで残存すると考えられています。患者さんの皮膚に優しく触れることで、家族が患者さんとコミュニケーションを取り、つながりを感じることを促すことができます。これは家族の悲嘆プロセスにおいても重要です。正しくは:この選択肢は適切であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:直接的な言葉でのコミュニケーションが難しい状況で、非言語的な触れ合いが有効であることを示唆している。混同注意:患者の意識が低下していると、触れても意味がない、と感じてしまう可能性がある。
- 2. 意識レベルが低下していても、苦痛を感じていないとは断言できません。表情や生体反応の変化などから苦痛の有無を注意深く観察し、必要に応じて医療的な介入を検討すべきです。安易な断言は不適切な安心感を与え、適切なケアの機会を奪う可能性があります。正しくは:「Aさんの表情や体の動きをよく観察し、苦痛がないか見ていきましょう」選びやすい理由:家族は患者の苦痛を最も心配するため、安心させたいという気持ちから選んでしまうかもしれない。混同注意:患者が眠っているように見えるため、苦痛を感じていないと思ってしまう可能性がある。
- 3. 意識レベルが低下していても、聴覚は最後まで残存していることが多いとされています。そのため、家族の語りかけや日常の音などは、患者さんにとって安心感を与える可能性があります。過度に静かにすることは、患者さんとのコミュニケーション機会を奪うだけでなく、家族に孤立感を与えることにもつながりかねません。正しくは:「Aさんの聴覚は残っていることが多いので、優しく話しかけたり、好きな音楽を流したりするのも良いでしょう」選びやすい理由:眠っていることが多い状況であるため、休息を最優先すべきだと考えてしまう可能性がある。混同注意:「眠っている」という表現から、静かな環境が最も良いと判断してしまう可能性がある。
- 4. 「頑張りましょう」という言葉は、状況によっては家族にさらなる負担やプレッシャーを与える可能性があります。特に、患者の状態が変化し、これまでのケア方法では対応しきれないと感じている家族に対しては、共感と具体的な支援の提案が求められます。訪問看護師としては、家族の現状の困難を理解し、具体的な解決策やサポートを示すことが重要です。正しくは:「奥様も大変な状況ですね。何か困っていることがあれば、いつでも相談してください。私たちも一緒に考え、サポートします」選びやすい理由:家族を励ます意図で使われがちな言葉だが、適切な支援なしでの「頑張れ」は逆効果になることがある。混同注意:家族を励ます言葉として、一見適切だと感じてしまうことがある。
国試ポイント
終末期の患者への非言語的コミュニケーションの重要性、特に触覚・聴覚の残存、および家族へのエンパワメントと心理的支援について問われています。家族の心情に寄り添い、具体的な行動を促す適切な声かけができるかがポイントです。
混同注意
意識レベルが低下している患者への対応として、聴覚への配慮(静かにする vs 話しかける)や、苦痛の有無の判断、家族への声かけの適切性(励まし vs 寄り添い)など、複数の選択肢で判断に迷う可能性があります。
次に同じ論点が出たら
この問題から派生して、終末期患者への具体的な非薬物的苦痛緩和方法や、家族への心理的支援の具体的な内容、グリーフケアの開始時期などについて問われる可能性があります。
関連知識
終末期の五感の残存に関する知識(聴覚・触覚が最後まで残りやすい)、非言語的コミュニケーションの重要性、家族の悲嘆プロセスとサポート、スピリチュアルケアの基本。