高齢者施設に入所中のAさん(78歳、女性)は、長期間寝たきり状態で、便秘傾向のため下剤を内服している。下腹部痛と便意を訴えるが3日以上排便がなく、浣腸を行うと短く硬い便塊の後に、多量の軟便が排泄されることが数回続いている。既往歴に、消化管の疾患や痔はない。Aさんの今後の排便に対する看護として最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Aさんの状況は、浣腸によって硬い便塊の後に軟便が排泄されていることから、便秘による便塊が直腸に貯留し、その周りを液状の便が漏れ出している状態(便失禁を伴う宿便)である可能性が高い。便塊が直腸にあると便意を感じても排便できず、腹痛も引き起こすため、直腸診で便塊の有無を直接確認し、状況に応じた適切な排便ケア(摘便など)を検討することが最も重要である。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。Aさんの症状は、便秘と浣腸後の便の性状から、直腸内に宿便が貯留し、その周囲を軟便が漏れ出している状態(溢流性便失禁)が強く疑われる。この場合、直腸内の便塊が排便を妨げ、腹痛の原因となっている可能性があるため、直腸診によって便塊の有無、硬さ、量を確認することが適切なアセスメントであり、その後のケア方針(摘便など)を決定するために不可欠である。選びやすい理由:症状から便塊の存在が強く示唆されるため、直接的な確認が重要であると理解できる。混同注意:一般的な便秘ケア。一般的な便秘ケアは食事や運動、下剤調整が中心だが、本症例ではすでに重度の便秘と便塊の可能性が示唆されており、より直接的な介入のためのアセスメントが求められる点で異なる。
- 2. Aさんは「大量の軟便が数回にわたって排泄される」状況にあるが、これは便秘による宿便の周囲を液状便が漏れ出ている溢流性便失禁の可能性が高い。この状態で止痢薬を処方すると、便塊がさらに貯留し、症状が悪化する危険性がある。根本的な問題は便塊の除去であるため、止痢薬は不適切である。正しくは:医師に止痢薬ではなく、便塊除去の指示や追加の下剤、あるいは摘便の必要性について相談する。選びやすい理由:「軟便が数回にわたって排泄される」という情報から、下痢と誤解し、止痢薬が必要だと考えてしまう。混同注意:真の下痢。真の下痢は腸の炎症や感染などが原因で便が水様化する状態であり、本症例の便秘による溢流性便失禁とは病態が異なる。
- 3. 便秘の予防・改善には、水分摂取が非常に重要である。水分を制限すると便が硬くなり、さらに便秘が悪化する可能性がある。高齢者は脱水になりやすく、適切な水分摂取は便秘のみならず全身状態の維持にも不可欠である。特に長期臥床しているAさんにとって、水分制限は不適切である。正しくは:1日の水分摂取量を増やすよう促す。選びやすい理由:水分摂取量を制限することが、特定の疾患(心不全など)では必要となることがあるため、一概に間違いとは言えないという思い込み。混同注意:心不全や腎不全などで水分制限が必要なケース。Aさんにはそのような病歴の記載がなく、便秘に対する看護ケアとしては水分制限は逆効果である。
- 4. 食物繊維は便量を増やし、便を軟化させる作用があるため、便秘の改善に有効である。食物繊維が少ない食事に変更すると、便の量が減り、さらに便が硬くなることで、便秘が悪化する可能性が高い。特に高齢者の便秘では、積極的に食物繊維を摂取することが推奨される。正しくは:食物繊維が多い食事への変更を提案する。選びやすい理由:「小さく硬い便の塊」が出ていることから、さらに便が硬くなることを避けたいと考え、食物繊維を控えることで便が柔らかくなるという誤解。混同注意:小児の急性胃腸炎など、消化器に負担をかけたくない場合の食事。高齢者の慢性便秘に対しては、食物繊維の摂取が推奨される。
国試ポイント
便秘、特に高齢者の宿便(便失禁を伴う便秘)の病態理解と、それに対する初期のアセスメントおよび看護ケアの原則。
混同注意
便失禁と宿便による便漏れ。便失禁は排便コントロールの障害で便が漏れる状態を指すが、本症例では便秘と硬い便塊の存在が前提であり、その周囲を液状便が通過する「溢流性便失禁」の病態が示唆される。この場合、原因は便塊であるため、便失禁に対するケアではなく便塊除去が優先される。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出た場合、便秘が長期化し、便意があるにもかかわらず排便がなく、液状便が漏れるなどの症状があれば、まず直腸内の便塊の有無を確認するアセスメントが最も優先されると判断する。
関連知識
高齢者の便秘の原因(活動量低下、薬剤、食事量減少など)、宿便による合併症(腸閉塞、せん妄など)、便秘に対する非薬物的・薬物的介入(食事、水分、運動、下剤の種類と作用機序、浣腸、摘便)。直腸診は医師や訓練を受けた看護師が行う。