A君(7歳、男児)は、サッカークラブに所属している。本日、練習中に転倒して右腕を地面についた後、肘周囲に腫れと強い痛みが生じたため、父親と救急外来を受診した。エックス線撮影の結果、右側の上腕骨顆上骨折と診断され、非観血的整復とギプス固定が行われることになった。A君は不安な表情で父親と処置室の前で待っている。 A君は、整復術後の経過観察のため1泊入院することになった。整復術後の合併症の観察方法で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第110回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
A君は右側の上腕骨顆上骨折で、非観血的整復とギプス固定を受けました。上腕骨顆上骨折では、腫脹やギプスによる圧迫から、前腕のコンパートメント症候群(フォルクマン拘縮)や神経障害を起こすおそれがあります。早期発見のためには、患肢の指先の感覚(しびれ・感覚鈍麻)、運動、皮膚の色調や冷感、橈骨動脈の拍動、疼痛の増強を観察します。患部の指先に触れて感覚が鈍くなっていないかを確認するのは適切な観察方法です(公式正答3)。
選択肢ごとの解説
- 1. 上腕骨顆上骨折では、合併症(循環障害や神経障害)の徴候は肩ではなく、患肢の末梢(手指)に現れます。観察すべきは指先の皮膚の色調です。正しくは:皮膚の色調だけでなく、チアノーゼの有無や温度、脈拍の触知、感覚・運動機能を確認する。選びやすい理由:皮膚の色調観察は、基本的な身体所見の一つであり、異常の早期発見に役立つため、正しい行動のように思える。混同注意:広範な合併症観察の初期段階として重要であるものの、それ単体では不十分である点を見落としやすい。
- 2. 整復・ギプス固定後の早期は、腫脹によるコンパートメント症候群や循環障害が起こりやすい時期です。8時間ごとの観察では異常の発見が遅れるおそれがあり、より頻回に観察する必要があります。正しくは:術後早期は短い間隔で、指先の感覚・運動、皮膚の色調、冷感、脈拍、疼痛を観察します。選びやすい理由:定期的な観察は重要であるため、一見正しい行動に見える。混同注意:「時間ごと」という表現は適切に聞こえるが、合併症の急性期には「より頻回な観察」が必要であるという点で誤り。
- 3. 正解。上腕骨顆上骨折の整復・ギプス固定後は、神経障害やコンパートメント症候群の早期発見のため、患肢の指先の感覚鈍麻やしびれの有無を確認します。指先に触れて感覚を確認するのは適切な観察方法です。
- 4. ギプスを装着している場合、ギプス内に直接手を入れて触れるのは衛生上の問題や、ギプスの固定を損なうリスクがあります。冷感の有無は、露出している末梢部分(指先など)を触ったり、両側を比較したり、体温計で皮膚温を測定したりして評価します。正しくは:ギプスが装着されている場合は、露出している指先などの末梢部分の温度を健側と比較して観察する。または、ギプスの窓から確認できる範囲や、ギプスの外側から温度を評価する。選びやすい理由:冷感の有無は循環障害のサインであり、その観察が重要であるため、冷感を評価すること自体は正しい行為であると誤解しやすい。混同注意:観察の重要性と観察方法の適切性を混同しやすい。ギプス内の評価の困難さやリスクを見落としやすい。
国試ポイント
小児の上腕骨顆上骨折の整復・ギプス固定後に起こりうる合併症(コンパートメント症候群、神経・循環障害)と、その観察方法を理解しているかが問われています。
混同注意
合併症の観察は、肩ではなく患肢の末梢(指先)で行います。術後早期は合併症が起こりやすいため、8時間ごとでは間隔が長すぎます。ギプスの中に手を入れると皮膚を傷つけるおそれがあり、行いません。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、まず「どのような合併症が考えられるか」を把握し、次に「その合併症の兆候は何か」を具体的に思い浮かべ、最後に「その兆候をどのように観察するのが最も適切か」という思考プロセスで判断する。
関連知識
末梢神経機能の評価(運動・感覚)、末梢循環の評価(5P's: Pain, Pallor, Pulselessness, Paresthesia, Paralysis)、コンパートメント症候群の症状と対応、ギプス装着時の看護。