採血時に操作を誤ったため溶血し、採血管内の血漿が暗赤色になってしまった。この血漿の電解質濃度を測定したときに、本来の値よりも高くなるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
溶血とは、赤血球が破壊され、その内部に含まれる成分が血漿中に放出される現象を指します。赤血球内にはカリウムイオンが血漿中の約25倍という高濃度で存在しています。そのため、採血時に溶血が起こると、破壊された赤血球から大量のカリウムイオンが血漿中に流れ出し、結果として血漿中のカリウムイオン濃度が異常に高値を示すことになります。これは、臨床検査において重要な偽性高カリウム血症の原因となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 溶血により血漿中の塩化物イオン濃度は大きく変動しません。赤血球内と血漿中の濃度差が小さいため、溶血が直接的な高値の原因とはなりません。正しくは:塩化物イオン濃度は溶血の影響を受けにくい。選びやすい理由:電解質の一種であるため、他の電解質と同様に変動すると誤解するかもしれない。混同注意:主要な陰イオンでありながら、溶血による変動が少ない点。
- 2. 重炭酸イオンは体内の酸塩基平衡に深く関わりますが、溶血によって血漿中の濃度が著しく上昇することはありません。むしろ、溶血により細胞内の代謝産物が放出され、pHが変化することで重炭酸イオンの消費が促進される可能性も考えられますが、直接の高値要因ではありません。正しくは:重炭酸イオン濃度は溶血の影響を直接は受けにくい。選びやすい理由:pH変動に関わるため、溶血による細胞内物質放出が影響すると考えるかもしれない。混同注意:酸塩基平衡との関連性から、溶血による影響を過大評価してしまう可能性。
- 3. 正解。赤血球内にはカリウムイオンが豊富に存在し、その濃度は血漿中の約25倍と高濃度です。溶血が発生すると、赤血球が破壊されて細胞内のカリウムイオンが血漿中へ放出されるため、血漿中のカリウムイオン濃度が著しく上昇します。正しくは:赤血球内に高濃度に存在するカリウムイオンは、溶血によって血漿中に放出され、血漿中のカリウム濃度が上昇する。選びやすい理由:他の電解質も細胞内外に分布するため、カリウムだけが高値を示す理由を理解しきれない場合がある。混同注意:細胞外液の主要な陽イオンであるナトリウムイオンと混同し、カリウムイオンが細胞内液の主要な陽イオンであることを忘れること。
- 4. カルシウムイオンは主に血漿タンパク質と結合して存在しますが、赤血球内にはほとんど含まれていません。そのため、溶血が起こっても血漿中のカルシウムイオン濃度は上昇せず、むしろ凝固因子の活性化によりわずかに低下することもあります。正しくは:カルシウムイオンは赤血球内にほとんど含まれないため、溶血によって血漿濃度は上昇しない。選びやすい理由:骨や筋肉の機能に重要な電解質であるため、他の電解質と同様に変動すると考えるかもしれない。混同注意:タンパク質との結合形態や、赤血球内濃度が低いことを誤解する可能性。
- 5. ナトリウムイオンは細胞外液の主要な陽イオンであり、赤血球内の濃度は血漿よりも低い(約1/10)です。溶血が起こっても、赤血球から放出されるナトリウムイオンは少量であるため、血漿中のナトリウムイオン濃度はほとんど変化しません。むしろ、細胞外への水の移動により相対的に高くなることもありますが、溶血による直接的な高値の原因ではありません。正しくは:ナトリウムイオンは赤血球内の濃度が血漿より低いため、溶血による血漿濃度の上昇は起こりにくい。選びやすい理由:主要な電解質であるため、カリウムイオンと同様に細胞内から放出されると誤解するかもしれない。混同注意:細胞内液と細胞外液の主要な陽イオンの区別(カリウムは細胞内、ナトリウムは細胞外)を混同すること。
国試ポイント
溶血が検査値に与える影響、特に電解質(カリウム)への影響を理解しているか。細胞内外の電解質分布の知識が問われている。
混同注意
ナトリウムイオンとカリウムイオンの細胞内外分布の違い、および溶血が各イオン濃度に与える影響。
次に同じ論点が出たら
溶血検体でのカリウム高値が認められた場合、真の高カリウム血症と区別するため、再採血の必要性を判断する。
関連知識
偽性高カリウム血症の他の原因(採血時の駆血帯の長時間使用、拳を握る動作、抗凝固剤の影響など)、電解質の基準値と異常値が示す疾患。