Aさん(35歳、女性)は、昨年結婚し、夫(50歳)と2人暮らし。最近2か月で5kgの体重減少、首の違和感と息苦しさ、心悸亢進、不眠のため内科を受診した。触診で甲状腺の腫脹、超音波検査で甲状腺内に数か所の石灰化が認められたため、甲状腺腫瘍の疑いで大学病院に紹介された。嗜好品:飲酒はビール700 ml/日を週5日趣味:ジョギングとヨガ Aさんは、手術後に甲状腺ホルモン製剤、カルシウム製剤、ビタミンD製剤の内服が開始され、手術後1週で退院することになった。Aさんは「退院後の生活で気を付けることを教えてください。私は35歳ですし、夫と年が離れているため、できるだけ早く子どもが欲しいと思っています」と話している。看護師が行うAさんへの1か月後の受診までの生活指導で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Aさんは甲状腺を摘出した可能性があり、その場合は甲状腺ホルモン製剤を内服することで甲状腺機能を正常に保っています。この状態では、海藻類に含まれるヨウ素の摂取を制限する必要はありません。ヨウ素制限は、主に甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)において、甲状腺ホルモンの過剰産生を抑制する目的で行われます。
選択肢ごとの解説
- 1. 甲状腺機能が安定していれば、過度な制限は不要であり、適度な運動は術後の回復や健康維持に推奨されます。過度に運動を制限すると、ADLの低下や精神的ストレスにつながる可能性があります。正しくは:「体調に合わせて無理のない範囲で運動を続けましょう」選びやすい理由:術後であるため安静を強調したい気持ちになるかもしれませんが、回復期では適度な活動が重要です。混同注意:術直後の急性期と、退院後の安定期での運動指導の区別が曖actorである可能性があります。
- 2. 甲状腺機能が安定し、薬剤によるコントロールが良好であれば、一般的に1年間の妊娠制限は必要ありません。妊娠を希望している患者に対しては、甲状腺機能の安定を確認した上で、医師と相談して妊娠計画を進めるよう指導します。無意味な制限は患者の精神的負担を増大させます。正しくは:「甲状腺機能が安定していることを確認するため、妊娠を希望される場合は医師とご相談ください」選びやすい理由:甲状腺疾患や薬物療法が妊娠に影響を与える可能性を考慮し、慎重な指導をしたいと考えるかもしれませんが、具体的な根拠なく長期の制限を設けるのは不適切です。混同注意:甲状腺機能亢進症などで甲状腺を全摘した場合や、放射性ヨウ素療法を受けた場合は一定期間妊娠を控える必要がありますが、本事例ではその情報が示されていません。一般的な甲状腺ホルモン製剤、カルシウム製剤、ビタミンD製剤の内服であれば、安定していれば妊娠可能であることが多いです。
- 3. 正解。甲状腺ホルモン製剤を内服している場合、甲状腺機能は製剤によってコントロールされているため、海藻類に含まれるヨウ素の摂取量を厳しく制限する必要はありません。むしろ、極端なヨウ素制限は栄養バランスを崩す可能性があります。バセドウ病などでの甲状腺機能亢進症の場合にはヨウ素摂取制限が必要な場合がありますが、本事例は術後に甲状腺ホルモン製剤を内服している状況であり、甲状腺機能低下状態への対応と考えられます。選びやすい理由:甲状腺疾患と聞くと反射的にヨウ素制限を連想するかもしれませんが、甲状腺ホルモン製剤を内服している状態ではその限りではありません。混同注意:甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)と甲状腺機能低下症(甲状腺摘出後など)におけるヨウ素摂取制限の有無を混同することがあります。亢進症ではヨウ素制限が推奨されることが多いですが、低下症で甲状腺ホルモン製剤を補充している場合は不要です。
- 4. 手術後であり、複数の薬剤を内服していることから、飲酒が薬剤の代謝や効果に影響を与えたり、肝臓への負担を増やしたりする可能性があります。一般的に、術後や薬物治療中は飲酒を控えるか、医師に相談して量を調整することが推奨されます。安易に「入院前と同じでよい」とするのは不適切です。正しくは:「飲酒については、医師に確認するか、しばらくは控えるようにしましょう」選びやすい理由:具体的な飲酒による禁忌や相互作用が明確でないため、許可しても良いと考えてしまうかもしれませんが、患者の安全を第一に考えるべきです。混同注意:飲酒が特に禁忌とされていない場合でも、術後や薬剤服用中の身体状況を考慮して慎重な判断が必要であるという視点を見落とすことがあります。
国試ポイント
甲状腺摘出後の患者に対する生活指導、特に食事(ヨウ素摂取)と妊娠に関する知識が問われています。甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症(甲状腺摘出後)におけるヨウ素摂取の考え方の違いを理解しているかが重要です。
混同注意
甲状腺疾患全般でヨウ素制限が必要だと誤解している場合、選択肢3を不適切と判断してしまう可能性があります。
次に同じ論点が出たら
患者の個別状況(手術の種類、副甲状腺機能の状態、妊娠希望の緊急度)に応じて、より詳細な指導内容を判断する。
関連知識
甲状腺全摘出術後の患者は、生涯にわたり甲状腺ホルモン製剤の補充が必要となる。甲状腺ホルモン製剤は食前に服用することが推奨される場合が多い。カルシウム製剤やビタミンD製剤は、副甲状腺機能低下症を合併している可能性や、骨代謝の維持のために処方されている。