臥床患者の体位変換とボディメカニクスの原則との組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
ボディメカニクスにおいて、仰臥位から側臥位への体位変換は、患者の体を回転させる動きを伴います。この回転運動には、回転軸(支点)から離れた位置に力を加えることで、小さな力で効率的に体を動かすことができるという「トルク(回転力)」の原理が応用されます。例えば、患者の肩や骨盤を支点から離れた位置で操作し、その力を利用して体を回転させることで、看護師の身体的負担を軽減できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。臥床している患者を仰向けから横向きへ動かす際、体幹を回転させる運動が生じます。このとき、体の中心から離れた部分に力を加えることで、小さな力で効率的に回転させることが可能となります。これは、てこの原理の一種であり、回転運動を生み出す「トルク」の原理を応用したものです。
- 2. 仰臥位から長座位への体位変換やその他の移動援助では、摩擦力を「利用する」のではなく、むしろ摩擦を「減らす」ことがボディメカニクスの重要な原則です。摩擦が大きいと、患者さんの皮膚に負担がかかるだけでなく、介護者の腰部への負担も増大します。正しくは:摩擦力を減らすために、患者さんの下にスライディングシートを敷いたり、シーツを滑らせたりする工夫をします。選びやすい理由:患者を動かす際に摩擦力が常に存在するため、何らかの関係があるように見えるかもしれませんが、ボディメカニクスでは摩擦を軽減することが強調されます。混同注意:摩擦力を利用することと、摩擦力を軽減する(排除する)ことを混同しやすいです。
- 3. 水平移動は主に患者さんの重心を移動させる動作であり、摩擦を減らすことが重要です。力のモーメント(トルク)は回転運動に関する概念であり、純粋な水平移動に直接応用するものではありません。水平移動では、患者さんの身体を分割して動かしたり、重心を介護者に近づけたりする原則が適用されます。正しくは:ベッドの片側への水平移動では、重心を近づけ、摩擦を減らし、患者さんの身体を小さな単位に分けて動かすことが重要です。選びやすい理由:「モーメント」という言葉が物理的な原理を指すため、移動に関係があるように思えるかもしれませんが、水平移動と回転運動の原理は異なります。混同注意:回転運動(トルク、力のモーメント)と直線運動(重心移動、摩擦)で適用される物理原理を混同しやすいです。
- 4. ベッドの頭部への水平移動は、主に摩擦を減らし、患者さんの重心を看護師の重心に近づけ、体を分割して動かすなどの原理が適用されます。てこの原理は、重いものを持ち上げたり、支点を利用して力を伝達・増幅させたりする場合に用いられますが、水平移動には直接利用されるものではありません。むしろ、看護においてはてこの原理を利用すると不適切な姿勢になりやすく、腰痛の原因となるため、避けるべきとされています。正しくは:ベッドの頭部への水平移動では、摩擦を減らし、患者さんの体をいくつかの部位に分けて動かすこと、そして介護者の重心を低く安定させることが重要です。選びやすい理由:「てこの原理」も物理的な概念であり、何らかの動作に関わるとは思われるため、正しい選択肢に見えるかもしれません。混同注意:様々な物理的な原理(てこ、トルク、摩擦、重心移動)の適用場面や、利用すべきか避けるべきかの判断を混同しやすいです。てこの原理は「利用しない」が原則です。
国試ポイント
ボディメカニクスの各原則(重心、支持基底面、摩擦、てこ、トルクなど)が、具体的な看護場面(体位変換、移乗、起き上がりなど)でどのように適用されるかを理解しているか、また、それぞれの原理がどのような動き(回転、直線、持ち上げ)と結びつくかを正確に把握しているかが問われます。
混同注意
摩擦力を「減らす」工夫と、摩擦力を「利用する」原理の混同。直線運動(水平移動など)と回転運動(体位変換)で適用される物理原理の混同(例:重心移動とトルク、てこ)。てこの原理は基本的に「利用しない」という原則との混同。
次に同じ論点が出たら
次に同様の問題が出題された場合、まず問題文がどのような「動き」(回転、直線移動、持ち上げなど)を問うているかを確認します。次に、選択肢で提示されている「ボディメカニクスの原則」がその動きに適切に結びついているか、また、「利用する」「軽減する」「避ける」といった動詞が適切に使われているか注意して判断します。
関連知識
ボディメカニクス8原則(重心の安定、支持基底面を広く、重心を低く、対象に近づく、体のねじれをなくす、てこの原理を利用しない、大きな筋肉を使う、摩擦を減らす)。これらの原則が、具体的な体位変換や移動援助においてどのように活用されるかを理解することが重要です。特に、トルク(回転のモーメント)の概念と、摩擦力の軽減方法(スライディングシートなどの活用)は頻出知識です。